TikTokが「通販」に本気?! “ECで買う”体験はこう変わる:知っておきたいソーシャルメディア運用TIPS(3/3 ページ)
2025年6月、TikTokが「通販」にような新サービス「TikTok Shop」を日本でも開始します。
企業がいま取り組むべき「4つの準備」
TikTok Shopへの出店を検討する企業にとっては、次の4つの「導入準備」が鍵になります。
1つ目は契約・申請の準備です。TikTok Shopに出店するためには、TikTok Shop Partner(TSP)との契約や、セラーセンターでのアカウント開設・申請が必要です。審査には1〜2週間程度かかりますが、その間に社内での運用体制の整備や、部署間の役割分担を明確にしておくことが重要です。
2つ目はEC基盤とオペレーションの構築です。具体的には、商品データの整備、価格戦略の設計、販促計画の立案、倉庫・物流連携、カスタマーサポートのフロー設計などが含まれます。従来のECと異なり、動画やLIVEで商品の魅力を効果的に伝えることが前提となるため、マーケティング・制作・オペレーション部門が連携しやすい体制づくりが求められます。
3つ目はLIVEコマースの体制づくりです。TikTok Shopにおいて、LIVEコマースは商品理解を促進し購買につなげる重要な手段です。ライバーやKOLとの協業スキームを構築するだけでなく、自社でのLIVE配信を担える体制を整備することも有効です。TSPと連携しながら、LIVE配信の台本設計、機材準備、配信スケジュールの確立など、実行に必要な準備を段階的に進めることが求められます。
4つ目はアカウント運用とクリエイティブ戦略です。TikTokでは「動画で発見される設計」が不可欠であり、アルゴリズムに最適化されたショート動画を定期的に発信することが効果的です。特にローンチ直後の初期フェーズは、競合が少なく目立ちやすいため、影響力のあるクリエイターやライバーとの連携が、早期に認知を獲得する有効な手段となります。
ただし、外部のライバーに依頼する場合、一定の手数料が発生するため、並行して自社でLIVEを行う体制も整えていくのが理想的です。ブランドの世界観や商品の魅力を自社の視点で直接伝えられる点でもメリットがあります。
さらに、ショーケースや「ショップ」タブの最適化も欠かせません。人気商品や注力したいカテゴリを分かりやすく整理し、視覚的に目を引くサムネイルやバナーを設定することで、ユーザーが商品を探しやすくなります。こうした仕組みを初期の段階でしっかり整えておくことが、購買導線の強化につながります。
これらをすべて自社内で完結させるのは難しい場合も多いため、TSP(TikTok Shop Partner)と呼ばれる専門業者や、EC運営支援に実績のあるパートナー企業との連携が現実的な選択肢となります。特に、戦略立案から運用・分析までを一貫して支援してくれるパートナーを選ぶことで、スムーズな立ち上げと成果創出につながります。
まとめ:発見から購買までの「体験設計」が企業の競争力を左右する時代へ
TikTok Shopは、単なる新しい販路ではなく、消費者との出会い方・伝え方・買い方を一体で再設計できるプラットフォームです。そこにあるのは、売り手が押し付ける情報ではなく、ユーザーが「見たい」「知りたい」と思うコンテンツの中に商品が自然に存在し、気付けば購入につながっているという、新しい購買体験のかたちです。
TikTok Shopは、まだ国内では始まったばかりの取り組みです。だからこそ、今から取り組むことで、ユーザーの変化に先回りし、データとノウハウを積み重ねることができます。
今後、動画を起点とした出会いから購買までの体験設計が、TikTok Shopにおける競争力そのものになっていくでしょう。どれだけ正確に商品情報を届けられるかだけではなく、どんな文脈で、どんなストーリーの中で発見されるのか。その設計の巧拙が、成果に直結する時代が訪れるかもしれません。
NOVARCA 執行役員 笹川剛志
ブランドサクセス本部 本部長
大学卒業後、インターネット広告代理店に入社し、中華圏マーケティング領域に携わる。越境EC立ち上げ責任者としてNOVARCAに参画した後、2024年よりブランドサクセス本部長、同年4月より執行役員に就任。
ホットリンク 増岡 宏紀
コンサルティング営業本部 本部長
2016年にホットリンク参画。一年間SaaS営業に従事した後、SNSコンサルタントとしてクライアントを支援。また、プランニング事業やTwitter広告事業、SNSドラマ事業などの新規事業立ち上げに携わる。新規商談等を行うソリューション営業部のマネージャーを経て、現在はコンサルティング営業本部の本部長を務める。
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