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マーケター不足、解決なるか 「顧客対話」を一変するAIエージェントの威力Salesforce「Connections 2025」レポート(1/2 ページ)

今年、マーケターが最も注目しているのは「AIエージェント」の話題だろう。深刻なリソース不足でキャンペーン業務を信仰できないと悩む企業が多い中、AIエージェントはマーケターの“相棒”になれるのか。米Salesforceがシカゴで開催した「Connections 2025」の内容をレポートする。

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 マーケティング領域における「AIエージェント」の活用が注目を集めている。

 近い将来、自律型AIエージェントが全てのタッチポイントでパーソナライズされた顧客体験をつなぎ、実行する世界が実現すると言われている。生成AIからエージェンティックAIへ、わずか1年で、コンテンツ生成のAIから自律的に行動するAIにユースケースの焦点が移った。マーケターにとって、AIは業務を支援するものから、共に業務を実行する、あるいは代わりに業務を実行してくれる存在に変わろうとしている。

 6月11日から12日にかけ、米Salesforceはシカゴでマーケター向けの年次イベント「Connections 2025」を開催した。今回のイベントでは「Become an Agentic Marketing」をテーマに掲げ、マーケターとAIエージェントが協働する将来像が示された。

 初日と2日目の基調講演の両方に登壇したスティーブ・ハモンド氏(EVP and GM of Marketing Cloud)は、この変化に対応するべく、セールスフォースは製品アーキテクチャーを見直し、「2兆件の(一方通行な)メッセージを2兆件の対話に変換する」と強調した。


スティーブ・ハモンド氏(EVP and GM of Marketing Cloud, Salesforce)

マーケターの永遠の課題 「リソース不足」をAIエージェントでどう解決するか

 「2兆件」とは、メール、Webサイト、ソーシャルメディアなどのタッチポイントを通して、Salesforce環境から1年間に配信するメッセージの件数の平均に相当する。

 この転換が必要になる理由は、一方通行のメッセージ配信では、顧客との関係が発展しないためだ。最も分かりやすい例が、送信専用のアドレスから送るメールである。メール開封のハードルは高い。中のリンクをクリックしてもらうハードルはもっと高い。MA(Marketing Automation)製品を利用しての自動配信のため、返信されても個別の対応ができずに困るだけだが、返信できない設定はその後の関係構築の機会を減らしていることは確かだ。


「Connections 2025」

 これまでのデジタルマーケティングの常識を見直し、対話型のやりとりを可能にするとして期待されている存在がAIエージェントである。もっとも、人間のマーケターに信頼できる「同僚」だと思ってもらうだけのスキルの有無が、AIエージェントにあるかが問われる。


図1:マーケティングテクノロジーの第3の波「エージェンティック」(出典:Salesforce)

 そこでSalesforceは、高度なセキュリティとガバナンスを備えた顧客データ基盤「Data Cloud」、複雑なタスクを自律的に処理するAIエージェント「Agentforce」を、MA製品を中核とする関連製品群と統合し、次世代Marketing Cloudとして提供することにした。それが2025年7月から一般提供を開始するMarketing Cloud Nextである。

 Marketing Cloudの製品アーキテクチャーを刷新したのは、「企業が製品を導入する時の煩雑な統合作業や移行を最小限に抑えるため」と、ハモンド氏は説明する。

 マーケティングに限らず、業務で使うツールをその都度選ぶのは面倒に感じるものだ。意識したくもないだろう。この統合を実施したことで、マーケターにとっての使いやすさが向上しただけでなく、カスタマージャーニーの後ろのセールス、コマース、カスタマーサポートとも、顧客体験の全体像を共有できるようになった。

 つまり、認知や興味関心の獲得だけでなく、検討、購入、その先のファン化までの購買プロセス全体をAIエージェントが支えるフルファネル型の「Agentic Marketing」の仕組みが整ったことになる。

 具体的には、顧客との対話の流れにAIエージェントが参加できるようになり、メールやSMSのように、返信を前提としていなかったチャネルからの対話が可能になった。


図2:Marketing Cloud Next(出典:Salesforce)

 MA製品を導入し、以前よりも多くのデジタルキャンペーンを展開できるようになったと見えて、実際には多くのマーケティング組織が、リソースの制約で思うように活動できていない。しかし、AIエージェントを組織内に配置できれば、話は変わってくる。

 AIエージェントには、原始的なチャットボットにない3つの能力がある。第一に、自然文の意味を解釈し、適切なデータを参照できること。第二に、達成するべき目標を複数のタスクに分解し、実行計画を作れること。第三がその計画を自律的に実行できることだ。この特徴が顧客との対話を可能にする。組織の観点でも、人的リソースの制約を気にすることなく、数多くのキャンペーンを同時に展開できるようになる。

 組織へのメリットだけではない。AIエージェントには、反復的で苦痛を感じるタスクから解放し、クリエイティブで楽しいタスクに専念できる、マーケター個人にとってのメリットもある。「2兆件のメッセージを2兆件の対話に変換する」という目標は、決して不可能ではないが、乗り越えなくてはならない壁がある。

 人間とAIエージェントの対話を成立させるには、顧客一人一人が置かれている状況を理解し、最適な情報を提供できることが前提になる。顧客体験の質が、他社との差別化の源泉になる昨今、全ての顧客に一律に同じメッセージを送るのではなく、個別の状況に則した内容のメッセージを送るパーソナライゼーションの重要性は増すばかりだ。しかし、マーケティングキャンペーンにおけるパーソナライゼーションの実践は、決して容易なことではない。

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