「成果が分かりづらい」のにブランディング広告に注力するワケ 楽天市場・コミックシーモアに聞く(2/2 ページ)
5万店舗以上が出店する国内最大級のインターネットショッピングモール「楽天市場」と、月間利用者数が4000万人を超える国内最大級の電子書籍ストア「コミックシーモア」。いずれも“刈り取り”(顧客の獲得)を目的としたダイレクト広告を出稿しているイメージが強いが、実は、昨今はブランディングを目的とした「ブランディング広告」への投資にも力を入れている。
ブランディング広告も、成果を可視化できる
コミックシーモアと楽天市場の両サービスは、なぜ数あるSNSの中でInstagramを出稿メディアに選んだのか。
その理由の一つを「幅広い層のポテンシャルユーザーにリーチできるから」と語るのは、コミックシーモアの坂元氏である。Instagramは単にユーザー数が多いだけでなく、性別・年齢ともに幅広い層をカバーしているし、ダイレクト広告の出稿経験から、Instagramユーザーと電子コミックの相性がいいことは分かっていた。
電子コミックに興味・関心の高いユーザーがいるInstagramで、ダイレクト広告とブランディング広告を掛け合わせれば、広告効果の最大化を図れるのではないかと考えた。
楽天市場の尾崎氏は、広告メディアとしてのInstagramを活用する利点として、「データクリーンルームで精緻な効果測定ができるところ」を挙げた。具体的には、広告効果を正確に測定するために、広告主が保有するデータとMetaの保有するデータを一箇所に集めて分析できる。広告接触の積み重ねによって中長期的な行動変容を促すブランディング広告では、広告単位ではなく人単位で継続的な効果測定を行う必要があるという。
コミックシーモアは、広告の接触者と非接触者のコンバージョンの差分を比較することで、広告がどれだけ成果に貢献したかを測定する手法「コンバージョンリフト」を用いた検証をした。「ブランディング広告は配信期間中だけでなく、掲載終了後にもリフト効果が残存するのではないか」という仮説のもと、コンバージョンリフトの手法をブランディング広告に応用したわけだ。
結果、やはり広告の掲載終了後にもリフトは起こり続けていた。1カ月に及ぶ残存効果も加味すると、約3倍のリフト効果があると判明した。逆にいえば、1カ月でリフトの残存効果がなくなると分かったことから、ブランディング広告を毎月出稿する意義はあると判断した。
「ブランディング広告は短期的に結果が出るものではないからこそ、しっかり時間をかけて効果検証してもらいたい」(坂元氏)
これに対し、尾崎氏は「人単位で精緻な効果測定ができるデータクリーンルームを使えば、ブランディング広告も計測できるようになった。『定量化できないから』という理由でブランド広告への投資に踏み切れなかった人たちにも、おすすめしたい」とした。
この記事を読んだ方に 丸亀製麺の"感動”創造戦略
2025年3月期決算で、売上収益・事業利益・事業利益率ともに過去最高を更新した丸亀製麺。持続的な成長をつくる「感動創造」と「ブランド力向上」の本質に迫ります。本セッションでは、丸亀製麺の同質化しない唯一無二のマーケティング戦略とCX/EX戦略を紐解きながら、データサイエンスと感性を融合させた勝率の高い新しいマーケティングモデルの最前線を説明します。
- 講演「丸亀製麺の"感動”創造戦略 〜CXとEXのスパイラルアップが生み出す内発化〜」
- イベント「ITmedia デジタル戦略EXPO 2025夏」
- 2025年7月9日(水)〜8月6日(水)
- こちらから無料登録してご視聴ください
- 主催:ITmedia ビジネスオンライン
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
資生堂が「デジタル広告」にシフト Instagramにとりわけ注力する理由
資生堂は2023年から2024年にかけて、Instagramへの投資額を前年比58%増と大幅に増やし、明確にデジタルシフトへと舵を切った。それだけでなく、ブランド広告からダイレクト広告へと力点を変えたという。メガネを「たまに買う」ではなく「よく買う」ものに──Zoffは一体何をした?
メガネは購入間隔がとても長い商品だ。Zoffは、LINEを活用したマーケティングを強化し、顧客のLTV向上に成功。メガネを「たまに買う」ではなく「よく買う」ものにすることに成功したという。「それって本当にカスハラ?」 ネスレの“ゲーム風”クレーム研修が面白い
「カスハラはダメ」という認識が広がる一方、企業に寄せられる厳しい意見、商品やサービスに対し怒っている顧客の声は、もちろん話し方や口調にもよるが、必ずしもカスハラとは限らない。ネスレ日本は、そんな課題を感じ、ユニークなクレーム研修を開発した。年間4万件の「声」は、味の素「Cook Do」をどう変えたのか
「クレーム対応に追われてしんどい」といったイメージが根強いコールセンター業務。味の素は、消費者からの意見を活用し、商品開発につなげている。1問1答ではなく、「会話力」を重視する理由は?コンタクトセンターが多忙な「本当の理由」 チャネルが増えても、顧客の不満が減らないワケ
まざまな分野でデジタル化が進み、顧客との接点が多様化する昨今において、顧客体験価値(CX)の向上は、企業にとって重要な経営課題の一つだ。特にコンタクトセンターは、企業と顧客との関係をつなぐ役割として重要性を増している。