企業が無視すべき「役に立たない」お客さまの声 3つのパターン(2/2 ページ)
顧客の声(VoC)を分析し、商品開発や企業活動に反映させる動きが強まっています。企業はどのような「顧客の声」を生かすべきなのでしょうか。本記事では、「役に立つ声」「役に立たない声」、それぞれの特徴を紹介します。
役に立つ声 2つの特徴
それでは、「役に立つ声」についても見ていきましょう。
(1)耳の痛い声
役に立たない声として挙げた罵詈雑言などは溜めておく必要のない声ですが、中には「厳しい内容をちりばめながら、実は貴重なご意見をくださっている」場合もあります。
顧客は怒りの中にあり、言葉は感情的になってしまっているものの、その内容は、「耳の痛い」ものでありながら、実は企業として聞くべきものであった、というケースです。
例えば、「商品を購入するときに年齢も伝えている。それなのに、自分よりもかなり上の年齢に向けた商品を提案してくるというのは不愉快だ」といったような声がそれに当たります。
このような声は、捨てずに蓄積していくべきです。
AIは「罵詈雑言交じりの顧客の声」から「罵詈雑言だけを取り除き、役に立つ部分だけを蓄積する」といった取捨選択ができます。感情的な顧客に相対しても、冷静に「役に立つ部分」だけを抽出し、溜めておくことができるのです。
(2)リアルでは上がりにくい声
顧客とAIの会話の中では、リアルの店員との会話では話題に上がらないような「リアルでは上がりにくい声」が届くことがあります。
そしてその声が、実際の商品開発に生きる場合もあります。
オーダーメイドのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO」の協力を得て行った実証実験を紹介します。
FABRIC TOKYOでは、大広WEDOが提供しているシステムをもとに開発したAI「コーダイくん」に、LINEのトークルーム上で、FABRIC TOKYOの店舗スタッフとして4カ月間働いてもらいました。
ある顧客のコーダイくんへの質問に以下のようなものがありました(全て同じ方)。
「背の低い人におすすめのコーディネートは?」
「背が低い人のチノパンコーディネートについて教えて」
「背の低い人におすすめの冬用アウターは?」
こちらの顧客の真意は分かりませんが、背が低いという点を意識していることはよく伝わります。もしかしたら背の低いことを気にしており、自分に合う洋服探しにいつも苦慮しているのではないでしょうか?
そして想像してみてほしいのですが、リアルの店頭では顧客はこのようなはっきりとした聞き方をあまりしないのではないでしょうか? リアルの店員に対してなら何となく濁してしまう質問も、AIの店員だったら気にせずはっきり聞けてしまうことがあると思いませんか? AIだからこそコミュニケーションの垣根なく、「顧客の本音」を聞き出すことができるのです。
この「顧客の本音」を発見することで、「背の低い人用コーディネート」をマーケティングの切り口として商品開発やプロモーションに生かすことができるのです。
ちなみに、この顧客の質問に対するコーダイくんの回答は以下のようなものでした。
身長に自信を持っていただけるよう、スリムフィットのスーツやパンツをおすすめします。また、モノトーンや縦ストライプのコーディネートは、身長を高く見せる効果がありますので、ぜひお試しください。
コーダイくんも、顧客の本音、しっかり察しています。
無責任で、合理的ではない声に「売れるものをつくる」ヒントが隠れている
「売れるものをつくる」という目的のもとに議論を始めると、どうしても「売れなそうなものを提案したくない」という意識が働きますから、自然と「提案の分母」は小さくなります。
しかし顧客は、「売れるものをつくる」という目的の外にいる、ある意味無責任な存在ですから、遊び心や本音で合理的でない声をどんどん届けてくれます。
「こんなこと、会議の場で言ったら恥ずかしいな」と思うような提案が、雑談の中で次々に生まれるのです。
そのような声に、人間がその都度対応するとなるとコミュニケーションの垣根が上がりますが、AIならば顧客も企業も、お互い気軽にやりとりできます。結果、有益な声も届きやすくなるのです。
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