Xは? TikTokは? Metaは? トランプ氏勝利で笑うソーシャル、泣くソーシャル:Social Media Today
4年ぶり2度目のトランプ政権が実現することで、主要ソーシャルメディア各社はどのような影響を受けるのか。
ドナルド・トランプ氏が再びホワイトハウスに戻ることが決まった。これがソーシャルメディア規制にどのような変化を生じさせ、主要なソーシャルプラットフォームがどのような影響を受けるかが注目される。
ソーシャルメディアはトランプ氏の台頭において大きな役割を果たしてきた。トランプ氏は自らのファンとつながるために独自のソーシャルメディアアプリまで立ち上げた。そして今、イーロン・マスク氏が彼の側にいることで、それはまた、政権にとってより大きな意味を持つ要素となるだろう。
本稿ではトランプ氏の選挙運動中の発言から、各主要プラットフォームで何が起こるかを考えてみたい。
トランプ大統領 vs. Meta
トランプ氏とMeta(旧Facebook)との関係は複雑だ。トランプ氏は過去の選挙キャンペーンで数百万ドルをFacebook広告に投入した一方で、近年は同プラットフォームに対し、自身の発信が制限されていると批判を繰り返してきた。
実際、トランプ氏は選挙活動中、MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏に対して2024年の選挙への介入を控えるように警告し、「介入した場合は終身刑に処す」とまで発言している。
Metaはこうした対立を回避するため、政治コンテンツから距離を置こうとしてきた。しかし、トランプ氏のザッカーバーグ氏に対する不満が続く中で、同社にとって次の4年間が厳しいものになる可能性もある。
一方で、トランプ氏は米国のイノベーション、特にAI(人工知能)分野を推進したい意向も示しており、規制緩和の可能性がある。トランプ氏は、バイデン大統領のAI規制に関する大統領令を「イノベーションを阻害している」として撤廃する意向を表明している。これが実現すれば、MetaのAI分野での事業拡大に恩恵をもたらす可能性がある。
また、イーロン・マスクが政府の新たな効率性見直しを主導することになっており、ハイテク企業にとって障害となるものが少なくなることも期待できる。こうした背景から、トランプ氏がザッカーバーグ氏個人を嫌っているとしても、政権交代はMetaの今後のプロジェクトに恩恵をもたらす可能性がある。
トランプ大統領 vs. X
トランプ氏の2期目による恩恵を最も大きく受ける可能性があるのは、かつてTwitterとして知られたXだ。オーナーのイーロン・マスク氏はXを通じて重要なメッセージを増幅させ、自身の投稿、インタビュー、ライブ出演でキャンペーンに勢いをつけるなど、トランプ陣営の宣伝に重要な役割を果たした。
トランプ氏は勝利演説で、マスク氏を「超天才」と呼び、共和党の新たなスターであると称賛した。現在、両者の関係は良好だ。だが、両者とも衝突しやすい性格であり、いずれ関係が悪化する可能性もある。
しかし、マスク氏とXは当面の間、共和党支持層からの注目と支援を集めるとみられる。多くの票がトランプ氏に流れた今回の選挙結果から、Xに対する見方を改める広告主が増える可能性もある。これだけ多くの支持を得ているのだから、Xは一般大衆には、独立機関の評価が示唆するような誤報の巣窟とは見られていないのだろう。
そのこと自体が問題とも言えそうだが、もしかしたらトランプ政権下では、Xはより実行可能で価値のある広告プラットフォームとなり、現在の収益難を覆すかもしれない。
だが、マスク氏にとっての真のメリットとは、政治的な影響力と、世論を動かすツールとしてXを使うことだろう。トランプ氏の勝利は、マスク氏自身の集票力を証明することとなった。マスク氏はこれを世界中の他の選挙でも積極的に活用するだろう。そして、ビジネス上の利益のための手段として、そのような取引を政党に持ちかける可能性もある。
そのため、たとえXがトランプの勝利の結果としてより直接的な収益を得ることはなくても、代替的な支援手段を見つける可能性は高い。マスク氏は自分の政治的影響力を維持するために、プラットフォームを自己資金で支えることさえ検討するかもしれない。
投票前はXの見通しは暗いと思われたが、今やマスク氏の前には多くの道が開けているかもしれない。トランプ氏運営の「Truth Social」と合併して保守系メガアプリを形成することも選択肢の一つだが、今のところその可能性は低いだろう。
唯一の潜在的な問題は、マスク氏がさまざまな企業を経営しながら政府に奉仕することができるかどうかだ。自身のビジネスと利害が衝突するさまざまな要素から身を引く必要があるかもしれないし、あるいは政府の役職に就く間はCEO職を辞任する必要があるかもしれない。
いずれにせよ、マスク氏のアプローチが大きく変わるとは思えないが、考慮すべき要素ではある。
トランプ大統領 vs. TikTok
COVID-19の拡散に対する中国への処罰拡大の一環として2020年にTikTokの禁止を提案していたトランプ氏だが、現在はこのアプリの支持に転じ、米国での禁止措置から救うと約束している。
しかし、これは容易ではない。バイデン大統領は既にTikTokの売却に署名しており、2025年にはTikTokは米国から撤退することになっているからだ。トランプ氏がこの決定を覆す手段は限られているが、大統領令を発令することで無効化する可能性もある。
つまり、技術的にはTikTokを救うことはできるのだが、議会の決定を覆すことが引き起こす広範な影響も考慮する必要がある。しかし、現時点でトランプ氏はTikTokを米国に残すと明言している。
これは、TikTokにとっては朗報といえるだろう。もっとも、TikTokは引き続き規制上の課題を抱えており、トランプ氏が全面的な制約を防ぎきれるかは不透明である。
この先の展開がどうなるかは分からない。だが、少なくともトランプ政権2期目の初期段階において、TikTokは追い風を受ける可能性がある。
トランプ大統領 vs. Snapchat
他のアプリに関して言えば、トランプ氏は過去にSnapchatについていくつかの発言をしている。運営会社SnapのCEOであるエバン・シュピーゲル氏に「過激派」のレッテルを貼り、政治的コンテンツを検閲する同社の取り組みを批判したこともある。一方で、2024年の選挙キャンペーンにはSnapchat広告を利用している。
そのため、Snapchatがトランプ政権の特定のターゲットになる可能性は低いと考えられる。むしろ、テック企業全般に対する規制緩和が進む場合、Snapchatにも恩恵が及ぶ可能性がある。
しかし、Snapのハードウェア生産の大半は中国を拠点としており、トランプ氏の自国重視政策が関税問題として影響する可能性はある。
トランプ大統領 vs. LinkedIn
LinkedInについてトランプ氏の具体的な発言はない。だが、バイデン政権のAI規制に関する大統領令を撤回することで、LinkedInの親会社でありOpenAIに巨額の投資を行っているMicrosoftにも恩恵がある可能性はある。
LinkedInもまたAIを可能な限りあらゆる要素に活用しているため、トランプ氏がAI開発へのアプローチを明言したことによる恩恵の拡大は、このアプリにも影響を与えるだろう。ただし、トランプ氏はMicrosoftのAIツールが保守的あるいは政治的な発言に対して制限を設けていることを批判しており、その点に関して不満を抱いている可能性はある。
また、ウィスコンシン州におけるMicrosoftのAIデータセンタープロジェクト(総額33億ドル)も影響を受ける可能性がある。このプロジェクトについて、バイデン氏はトランプ氏を批判する材料として利用した経緯がある。トランプ氏はかつてこの場所を台湾のテクノロジー企業Foxconnの米国拠点として指定していたが、この計画は最終的に頓挫した。バイデン氏は、この例を挙げ、自身が「トランプ氏が失敗した場所で物事を成し遂げる」人物であるとアピールしていた。
現時点でトランプ氏がこのプロジェクトの方向性を変えることはできないと思われるが、この件でMicrosoftに対して何らかのわだかまりを抱いている可能性はある。
以上、トランプ氏の選挙運動中の発言から、ソーシャルメディア企業に直接的に影響しそうな事柄についてまとめた。しかし、状況はいつ変わるか分からない。トランプ氏は常軌を逸した行動をとることで有名だし、前回政権を担当した際には公約の半分以上を実行に移すことができなかった。
だから、これらのことも結局は実現しないのかもしれない、しかし、少なくとも現時点における、ソーシャルメディア関連の問題に対する次期大統領の立ち位置はこうだということだ。
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