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ネスプレッソ幹部に聞く「マーケティングとサステナビリティーは両立可能か?」Marketing Dive

Marketing DiveはNespresso USAでマーケティング担当バイスプレジデント兼サステナビリティー責任者を務めるジェシカ・パデューラ氏にインタビューを行った。

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Marketing Dive

 Marketing Diveは、Advertising Week New Yorkの期間中にNespresso USA(ネスプレッソUSA)のニューヨーク本社で同社マーケティング担当バイスプレジデント兼サステナビリティ責任者のジェシカ・パデューラ氏にインタビューを行い、2024年におけるロイヤルティー育成とサステナビリティーの複雑な状況について掘り下げた。

本稿は「マーケティング責任者が『サステナビリティー』担当を兼任 ネスプレッソの真意は?」の続きです。

マーケティングとサステナビリティーの担当を兼務して学んだこと


ジェシカ・パデューラ氏

 以下のインタビューは、内容を明確かつ簡潔に伝えるため、編集を施している。

――Advertising Weekで登壇されたパネルディスカッションの内容について教えてください。特にFemale Quotientと議論していたことについて。

パデューラ テーマは、Nespressoにとっては身近で大切な、顧客に愛されるブランドの構築についてでした。私はSamsungとSnapchatと共にパネルに登壇しました。Nespresso、そしてコーヒーというカテゴリーのユニークなところは、日常的に消費される存在でありながら他の多くの消費財カテゴリーとは異なるところです、スマートフォンの立ち位置に近いのかもしれません。

 もう一つのFemale Quotientの方ですが、こちらで重要なのは彼らがエンパワーメントと公平性に重点を置いていることです。これは、私たちがパーパス志向のブランドとして、単にビジネスのケーススタディーとしてでなく、特に強調したい点です。消費者は(そのことを)いつも知っているわけではないので、なかなか伝わりにくいストーリーですが。

――ロイヤルティーを維持するために以前より重要視していることは何ですか。

パデューラ 私がNespressoで働き初めて約9年になりますが、大きく変わりました。昨日のパネルディスカッションでも話題に上がったことの一つですが、NespressoはD2Cのブランドとして、コモディティーである商品を扱いながらもラグジュアリーブランドのようなハイタッチなやり方でビジネスを行ってきました。この5年から10年で、デジタル、CRM、そして高度なパーソナライゼーションによってもたらされたケイパビリティーが、ラグジュアリーな期待に応え続けています。

 D2Cブランドなので、私たちは消費者が何を購入しているか、時にはBluetooth接続された機器を持っている場合に何を消費しているかといったことまで、豊富なデータを持っているという利点があります。そのため、私たちは消費者をデータベースの数字としてではなく、実際の人間として話し始めることができます。私たちはこれまで、サードパーティーの小売業者を通じて販売したことはほとんどなく、消費者との間に仲介者が存在することがありませんでした。常にワンツーワン(の関係)を持っており、それが私たちのビジネスアプローチを根本的に変えています。

――今年のClimate Weekの印象はどうですか。数年前と比べて、マーケティングにおけるサステナビリティーの話題が大きく変わりましたが。

パデューラ 面白いことに、Climate WeekとAdweekのBrandweekでDEIとESG、そしてそれがマーケティング戦略とどのように統合されるかについて、全く同じ会話が交わされました。私の役割は非常にユニークで、ブランドにおけるマーケティングとサステナビリティーの両方をリードしています。サステナビリティーはここ5年ばかりのトレンドなどではなく、30年の積み重ねの結果です。私たちは自社内だけでなく私たちよりも優れたやり方を知っているたくさんの非営利パートナーやNGOと協力しています。私たちは農家ではありませんが、農場を支援し、土地を守り、未来にわたってコーヒーを生産・販売できるようにしなければなりません。これらの活動は密接に結びついており、単なる慈善活動ではありません。

 DEIやESGに対する(反発が増えている)トレンドについて、驚きはありません。パンデミック後、多くのブランドがこれらの分野に注力しましたが、実際それが企業の根本に基づいたものでないこともありました。もし本物のストーリーを伝えることができれば、消費者はその価値観に共感するでしょう。

 (サステナビリティーが)トップレベルのキャンペーンである必要はありません。(消費者は)企業がその通りに行動しているかどうかを見ています。だからこそ、この2つの点をつなぐ私の役割は厄介なのだと思います。

―― 昨年、サステナビリティーとマーケティングの責任者を兼務することになりましたが、仕事の中でどのような変化を感じましたか。

パデューラ 私は「Nespressoで学んだ全てが、サステナビリティーに関するものだ」と言うことができます。私たちはB Corp認定企業ですが、それはB Corpになることを目指したわけではなく、30年間の行動がその結果として認められたのです。

 サステナビリティーは長い間、ビジネスとして「世界に対して少しでも悪影響を減らす」というものでした。排出量を削減し、悪影響を少なくする。しかしマーケティングは、そこから「少しでも良い影響を増やす」というストーリーを伝えることができます。また、サステナビリティーのリーダーたちは必ずしもマーケティングの専門家ではありません。Climate Weekで参加したセッションでは、非常に複雑で技術的な話題が多く、理解するのが難しいこともありました。私はしばしば「ちょっと待って、説明してほしい」とお願いすることがありますが、これはまさに消費者が感じることに似ています。よほどニッチな層でない限り、その奥深さを理解しているとは限らないのです。

 マーケターとして、私は自分に挑戦し続ける必要があります。ある程度キャリアを積むと「このやり方は分かっている。新しいテクノロジーに追いつくだけで十分だ」と感じがちです。しかし、サステナビリティーの分野では、地道に学び直し、それをマーケティングのスキルに適用して、複雑なトピックを分かりやすく消化できる形にする必要があります。

――「立ち止まって、再考する必要がある」と感じた具体例はありますか。

パデューラ 例えば、排出量のものさしである「スコープ1、2、3」について、消費者がこうしたことを理解してくれることを期待しているのは、ある意味おかしなことです。Allbirdsのようなブランドは、そのCO2排出量を靴の内側に表示していますが、それは彼らが単に信用を得ようとしているのではなく、消費者に教育を提供しようとしているからです。

 私の役割はカプセルやマシンのライフサイクルに関しても大きく関わっています。米国のリサイクル業者がどのように収益を上げるのかを学ぶ必要がありました。私たちはリサイクル業者を動機づけて、カプセルをリサイクルシステムに取り込んでもらう必要があるからです。ニューヨーク市ではそれが可能ですが、それはニューヨーク市環境局(DSNY)とサードパーティーのリサイクル業者の共同投資のおかげです。アルミニウムやコーヒーかすが彼らのビジネスモデルにどのように適合し得るかを理解するためには、彼らがどのように利益を得ているのか、そして彼らにとってどのような素材がより価値があるのかを理解することが不可欠でした。恥ずかしい話ですが、私はかつてリサイクルを公共サービスのようなものだと考えていました。ガラス、プラスチック、金属がどのようにリサイクルされ、どのように混合されるのか、それがどのようなものになるのか、そして廃棄物のビジネスサイドについて、私はマーケターとしての学びを越えて、本当に技術的な(情報)をたくさん学びました。

――Climate Weekに向けたキャンペーンでは、アルミニウムの要素とブランドの歴史が強調されていました。新しい役割によって、パッケージングや製品デザインといった社内のチームとの仕事の仕方に変化はありましたか。

パデューラ 新しいコミュニケーションラインができたというほどの変化はありませんが、リファービッシュ(再生)マシンプログラムの「Relove」(外部リンク/英語)のような好例は生まれました。私たちは常に、次に登場するエキサイティングな革新的マシンに注目していますが、販売担当者や商業チームが常に考えることは「消費者が新しいマシンを購入したら、古いマシンはどうなるのか」です。私の役割は、そうした点と点を結びつけてくれました。 私は(消費者に)新しいマシンを売り、アップグレードさせたいと思うかもしれませんが、彼らの現在のマシンの寿命が尽きることについても考えなければならない。私たちは顧客に奉仕しているか、この消費主義の世界で、地球のために尽くしているのかと考えなければならないのです。

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