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Qualtricsが日本市場に1億ドル投資 エクスペリエンス管理(XM)のための生成AI活用で何が変わる?CEOが語る

Qualtricsが今後5年間で日本に1億ドル以上を投資すると発表。この投資により、企業のカスタマーエクスペリエンスおよび従業員エクスペリエンス向上を支援する。

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 Qualtricsの日本法人であるクアルトリクスは、2024年7月24日に記者向けの発表会を開催、同日に実施した年次イベント「クアルトリクスカンファレンス」のために来日したQualtrics CEOのジグ・セラフィン氏が、生成AIソリューションを活用したエクスペリエンス管理(XM)事業戦略について語った。

LIXIL、ヤマハ発動機、パナソニック 有力企業が重視するXMとは?

 Qualtricsが提供するXMプラットフォームとは、企業や組織が顧客、従業員、製品、ブランドに関する体験を管理・最適化するための包括的なツールだ。製品カテゴリーは3つに分かれ、CX領域で「XM for Customer Experience」、EX領で「XM for Employee Experience」、ブランドエクスペリエンス(BX)と製品エクスペリエンス(PX)の領域で「XM for Strategy & Research」を提供している。

 企業が重要な競争力を培うためにXMはますます重要になってきており、とりわけカスタマーエクスペリエンス(CX)は企業のボトムライン(売り上げ)に大きく影響する(関連記事:「悪い顧客体験(CX)がもたらす経済損失は国内で年間7兆6000億円、世界では555兆円に」)。

 エクスペリエンス改善という課題に重要な役割を担うと期待されるのがAI技術だ。2024年6月に発表した「Qualtrics AI」は、Qualtricsが持つ人間の感情についての世界最大級のデータベースを基に学習したXM特化型の独自AIだ。アンケート調査やソーシャルメディアの口コミ、コールセンターや店舗に寄せられた顧客の声、その他さまざまなデータを基にして、AIが顧客や従業員の体験向上に何が大切なのか理解し、意味のあるアクションを取れるようにする。

 「何十億ものカスタマーインサイトあるいは従業員インサイトを学習したAIは当社ならではの非常にユニークなもの。このQualtrics AIを各種のXMプラットフォームに組み込むことで、さまざまなフィードバックを取得し、リアルタイムで分析して、顧客や従業員と情緒的なつながりを、規模の大きい形で持つことができるようになる」とセラフィン氏は語る。

 Qualtricsがとりわけ注力するのが日本市場だ。日本においては 2018 年にオフィスを開設して以来、LIXIL、ヤマハ発動機、BMWジャパン、パナソニック アプライアンスなどに採用されており、エクスペリエンス管理に特にフォーカスしたQualtricsの専任チームが100人体制でこれらの企業のサポートに当たっている。

 Qualtricsは日本において今後5年間で1億ドル以上の投資を行う。これは2027年までに世界規模で5億ドルをAIイノベーションに投資するという同社のコミットメントに追加して行うものだ。セラフィン氏は「世界クラスのAIを日本語で活用できるようにし、専門家を増員する。それによってお客さまやパートナーに対して、素晴らしいCXあるいはEXを作り上げていけるようにする」と宣言した。

 日本語での自然言語解析やコールセンターでの通話内容をテキスト化して感情分析する機能など、AI実装は既に国内でも一部提供が始まっている。もちろん、XMが浸透していくためには製品が良いだけでは不十分だ。クアルトリクス カントリーマネージャーの熊代悟氏は、サポート部隊の増強やパートナーシップ強化などの取り組みについて言及した。

2024年秋に「Qualtrics Assist」と「会話型フィードバック」を提供予定

 製品に実装された具体的な機能については、クアルトリクス XMストラテジー シニアディレクターの久崎智子氏が説明した。

 XMに求められる役割として久崎氏は「体験という目に見えないものを可視化することに加え、売り上げやウェルビーイングの向上など具体的な成果に結び付くこと」と説明する。しかし、マーケティング、コールセンター、店舗、人事など、各部門がKPIのため、もしくは提供しているサービスを良くするためにXMを実践しようとしても、それぞれが持っているデータに基づくだけでは限界がある。いわゆるデータのサイロ化の問題だ。

 Qualtrics製品に全てのデータを取り込むことで体験に横串をし、他部署との連携がしやすくなってくると久崎氏は言う。例えば人事戦略と一緒にコールセンターのEXを上げていくことができれば、離職率が下がって顧客に対応する知見がたまっていく。そうすれば結果的により良いサービスを提供することができ、結果として売り上げも上がるという具合だ。

 XMに最適化されたQualtrics AIは文章やサーベイ(調査)から出てきたデータを全て理解し、文脈を把握する。ユーザー企業のCRMシステムや人事システムとの連携も簡単にできるので、Qualtrics AIの提案を使い慣れたツールの中に組み込むこともできる。部門の垣根を越えて膨大なデータが蓄積されると、プライバシーやセキュリティーの確保が問題になるが、この点についても、最上級のコンプライアンス、ガバナンス、セキュリティ対策を施していると久崎氏は強調する。

 いろいろな部署が同じデータを扱えるようになるということは、知識レベルの異なる人がアクセスしてくることを意味する。Qualtrics AIは組織内のあらゆる人々に使いやすい形でインサイトを出し分ける。これを実現する生成AIによる対話型のアシスタント「Qualtrics Assist」は日本国内では2024年秋に「XM for Customer Experience」「XM for Employee Experience」「XM for Strategy & Research」に実装される予定だ。

 もう一つ、特にCX領域での活用が期待される新機能が「会話型フィードバック」だ。顧客に対してサービス提供後にアンケートを送るとき「●●の体験はどうでしたか?」という質問に対して「良かった」「悪かった」とだけ回答されても十分な顧客理解につながらない。そこで、顧客の入力に対して動的に適応するインテリジェントなフォローアップ質問により、何がどう良かった/悪かったかを深掘りして尋ねることができるようになる。また、自然で気配りが感じられるAI主導のアプローチを採用することで、解決率と顧客満足度の向上にも寄与するという。


左から久崎氏、セラフィン氏、熊代氏

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