悪い顧客体験(CX)がもたらす経済損失は国内で年間7兆6000億円、世界では555兆円に:今日のリサーチ
Qualtrics「2024年消費者トレンドレポート」は悪い顧客体験を提供してしまう組織が深刻な経済損失のリスクを抱えていると指摘しています。
「接客が悪く不快な思いをした」「分からないことがあってサポートセンターに電話したのに問題が解決しなかった」など、顧客として悪い体験をした経験のある人は少なくないはずです。悪い体験の結果、別のブランドに乗り換えたりサービスを解約したりすることもあるでしょう。これは売る側からみれば経済的な損失にほかなりません。
Qualtrics日本法人のクアルトリクスは、社内の調査チームであるQualtrics XM Institute(XMI)によるグローバル調査を、26の国と地域の20業界2万8000人の消費者に対して実施しました。その結果をまとめた「2024年消費者トレンドレポート」では、悪い体験が原因で生じる機会損失を算出しています。これによると、日本の組織は年間520億ドル、1ドル150円換算で7兆6000億円もの機会を失う恐れがあるということです。世界全体では555兆円(3兆7000億ドル)をリスクにさらしており、この数字は前年比約90兆円上昇しています。
顧客体験改善のためにAIをどう活用すべきか
日本の回答者1200人のうち、悪い顧客サービスを受けたと回答した割合は6%。そのうち3分の1以上(39%)のケースでブランドへの支出を停止、または削減したと回答しています。
日本の消費者が良い体験/業種をしている業界を見ると、デパートやスーパーマーケット、動画配信サービスなどに対しては肯定的な声が多く、逆に財物保険会社や携帯電話のキャリア、病院・クリニックなどでは否定的な意見が多くなっています。
悪い体験をした後の行動として「何もしない」と回答した人は55%。これは前年度調査の結果より6ポイント増加しています。これは顧客の不満が売り手により伝わらなくなっていることを意味するもので、顧客離反のリスクが増大していると言えます。クアルトリクスのCXストラテジー シニアディレクターの久崎智子氏は、「企業は、コールセンターの通話記録、チャットのログ、オンラインレビューなど、フィードバックの直接的、間接的なソースの両方に目を向けることで、顧客のニーズや期待をより深く理解できます。こうしたフィードバックの多くは、カスタマーエクスペリエンスの実態をより正確に示したり、従来のアンケート調査だけでは見えてこない問題やインサイトを明らかにしたりできます」と、顧客の声を聞くためのチャネルを増やして包括的に顧客理解を深めることの重要性を強調しています。
顧客サービスにおいて、人を介したやりとり(PCチャット経由で人と対話、電話、直接対応)とデジタル(自動回答とチャット、携帯デバイスやPCを使って自己解決)のどちらが望ましいかを聞くと、医療のアドバイスや請求書の問題解決においては圧倒的に人とのやりとりが好まれ、逆に注文の進捗確認や航空券購入などはデジタルが好まれることが分かりました。自社が提供しているサービスに顧客が何を望むのか見極めて最適なチャネルを選択する必要があると言えます。
顧客サービスにAIを使用することに関して、消費者が最も不安に感じているのは、個人データの悪用(57%)でした。以下、サービス品質の低下(43%)、提供される情報の信憑性(32%)、人とのつながりの欠如(30%)の順に懸念を抱いています。また、大多数の消費者が、デジタル(43%)よりも人が対応するサービスチャネル(57%)を通じてブランドと関わりたいと考えていることから、顧客接点の最前線にいる従業員の仕事のしやすさが重要となります。AIの活用も非対面を実現するためというより、対従業員のサポート目的で活用されるべきなのかもしれません。
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