AIに奪われる仕事、奪われない仕事:SEOタイムズ編集部が初心者向けにわかりやすく解説
今後はコンテンツ制作の領域でも生成AI活用が進むのは間違いありません。それでも全てがAIに置き換えられるわけではありません。AIと共存しながら人でしかできない仕事をするために、今何を準備しておくべきでしょうか。
昨今、AI技術が大きく進歩したことに伴い、AIによって人の仕事がなくなるという話が現実味を帯びてきたと感じる人もいるのではないでしょうか。
数か月前にはできないと思われていたことがAIの力であっさり実現できるようになったということは珍しくなく、AIの発展スピードに危機感を覚える人がいるとしても不思議ではありません。
そこで本記事では、AI技術の発展によってなくなる可能性がある仕事、なくなる可能性が低い仕事について解説します。
AIによって奪われるのはどんな仕事?
結論から言うと、AIによってなくなる仕事は確かにあります。しかし多くの場合、完全になくなるというわけではなく、今まで人がやってきた仕事がAIによって置き換わるだけです。その分、人は別の仕事にリソースを割けるようになるため、業務効率化や業務改善につながることが少なくありません。
世間でAIによって仕事がなくなると言われているのは、以下の理由からです。
- AIの技術発展スピードが早いから
- 人よりも処理能力が優れているから
仕事がなくなることに不安になる人もいますが、AIと共存することで現在の仕事を効率化できると考えれば、前向きになれるのではないでしょうか。
AIの現在をざっくりおさらいする
AIと向き合うためには、最新のAI技術の動向をしっかりと把握しておくことが大切です。まずは現状をおさらいしてみましょう。
世界のAI普及率の割合
AIの技術発展に伴い、AI技術にリソースを割く企業も増えてきました。2022年にIBMが発表した「世界のAI導入状況 2022 年(IBM Global AI Adoption Index 2022)」(外部リンク)によると、企業のAI導入率は35%まで上昇しているとのことです。
実際、日本でも多くのシーンでAIが活用されており、身近なものだと電話応対や駅の案内などが挙げられます。日常生活の中でも気が付かないだけで、国内外問わずAIを活用したサービスは増えています。
国内の企業のAI導入・普及率
国内の企業でも、AIを積極的に導入している企業はあります。しかし、総務省「情報通信白書(令和5年版)」によると、世界のAI普及率に比べて国内のAI普及率は低めです。ICT市場に限った話でいうとAIの導入状況はわずか13.5%です。市場規模は拡大している半面、AIが普及していないことが分かります。
国内の企業ではソフトバンクグループがOpenAIに対して投資を検討するなど、技術発展に前向きな姿勢で取り組んでいます。もちろん、GMOインターネットグループでも積極的にAIを活用しています。
AIによってなくなる可能性がある仕事の例
繰り返しになりますが、AIによって仕事が完全になくなってしまうというわけではありません。それでも、現在の業務をAIに置き換えることで、大幅にリソースを削減できる仕事はあります。具体的には以下のようなものが考えられます。
- 一般事務職
- 銀行員
- 会計監査
- コールセンター業務
- スーパーやコンビニの店員
これらの仕事がAIを使うことでどのように変わるのか、イメージを紹介するので、参考にしてください。
1. 一般事務職
AIに置き換わる可能性が最も高いのではないかと言われているのが、一般事務職です。データ入力や書類の作成、伝票の処理や整理のようなルーティンワークは多くがAIでも代用可能な作業であり、実際に既にAIに任せている企業も少なくありません。ただし、一般事務にも人的リソースが必要な業務はあります。例えば備品の受注と発注の管理、来客対応、郵便物の発送や仕分け、書類のファイリングなどです。
これらの業務は当分の間AIに置き換えはできそうにないため、一般事務職がなくなることはなさそうです。それでも、単純作業を積極的にAIに置き換えることで業務改善につながります。結果、労働環境が改善することも大いにありそうです。
2. 銀行員
銀行員の仕事も、将来的に多くの部分がAIに置き換わるのではないかと言われています。AIが人に代わってできるのは、社内の書類作成や照会対応、一部の審査業務、数字の確認作業などです。
時事ドットコムニュースの2023年6月7日付の記事「3メガ銀、生成AI活用に本腰 みずほは今月開始、生産性向上へ」によると、メガバンク3社(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループ)では実際にChatGPTを業務に導入し始めています。この記事によるとみずほフィナンシャルグループは今後、システム開発やコールセンター業務など、現時点で多くの人的リソースが必要とされている業務をAIで自動化することも視野に入れているようです。
3. 会計監査
会計監査は、公認会計士による監査が主な業務です。財務諸表を確認して、間違いがないかチェックします。大きな責任が伴うため必ず人の介在が必要になる仕事ですが、AIに任せることで人的リソースが削減できる可能性の高い作業も多くあります。例えばデータの分析や財務諸表のチェックは、AIで置き換え可能です。しかし、取引先へのヒアリングや内部統制の評価、監査結果の評価のような業務は、現状ではAIへの置き換えができません。
将来的にAIの技術が発展しても、ヒアリングには人的リソースが必要です。現状よりも業務が限定的になるとはいえ、全ての仕事がAIで置き換えができるわけではないと考えられます。
4. コールセンター業務
コールセンターといえば労働集約型の職場の典型であり、多くの人的リソースが必要とされてきましたが、その分現在、AIへの置き換えが進んでいます。実際、保険会社など多くの企業が問い合わせ電話への応対に音声認識AIと自動応答AIを使用しています。
しかし、今のところAIが代替できる業務は簡単な受け答え程度で、クレーム対応やテレアポ、問い合わせへの具体的な回答(例:サービスの使い方、ユーザーの悩みの解消など)などの業務には、人的リソースが必要です。そのため、コールセンター業務も100%がAIで代用できるわけではありません。
5. スーパー/コンビニ店員
近年、スーパーやコンビニでAIの導入が検討されています。海外では、AIを導入した無人コンビニが導入されており、注目を集めています。しかし、完全にAIに任せられるかというと、そうではありません。レジ打ちや商品の在庫管理、発注管理などはAIが代替できますが、棚卸しや品出し、接客ような業務は人的リソースが必要です。
全てをAIに置き換えることは難しいですが、一部作業をAIに任せることでヒューマンエラーを防げます(例:発注管理・レジ打ちなど)。コンビニやスーパーも同様に、AIと共存していくことが大切です。
AIが発達してもなくならない仕事の例
AIに置き換わるといわれている仕事の多くは、単純作業です。クリエイティビティーが求められる仕事は、AIによって完全に置き換えることは困難でしょう。例えば以下のような仕事は、将来的にAIが発達してもなくならないと思われます。
- 特化型ライター
- イラストレーター
- ITエンジニア
- コンサルタント
これらの仕事もなくなるという見方をする人はいるでしょう。そうならないと考えるのは以下の理由からです。
特化型ライターの仕事がなくならない理由
文章生成AIの台頭により、ライターの仕事がなくなるといわれています。確かに、企業や商品などの単純な紹介や説明文などのライティングは文章生成AIによる置き換えが進むでしょう。しかし、文章生成AIにも限界があり、一次情報が重要なメディアでは現実的には使用が難しいのです。
これは、文章生成AIの「Google Bard」に、あえてでたらめなSEO施策の有効性を聞いてみた結果です。この領域に知見のある人なら「そのような施策は存在しません」と回答するところですが、生成AIは確率的にもっともらしい回答を探すように設計されているので「本当のようなうそ」を創作してしまいがちです。
この問題点は、他の質問でも起きる可能性があります。AIに書かせた記事を100%信用してファクトチェックなしでメディアに掲載すると、適切な情報をユーザーに提供できない恐れがあります。
専門知識を持ってうそをうそと見抜ける特化型ライターは、将来的にAIが発達しても仕事がなくなることはないでしょう。ライターの場合は、軽いリサーチや構成案作成のサポートなどに文章生成AIを使用すると便利です。
イラストレーターの仕事がなくならない理由
画像生成AIの登場により、イラストレーターの仕事がなくなるともいわれています。確かに、SNSのアイコン作成やサイト内のフリー画像作成などに、画像生成AIのイラストを使っている人は増えているようです。
しかし、画像生成AIが登場したところで、イラストレーターのクリエイティビティーの価値は変わりません。少なくとも現状の画像生成AIにはイラストレーターほど細かい仕事はできないと思われます。
こちらはAIを使ってイラストを自動生成する「Holara」というサービスを利用して作成したイラストです。画像生成AIではこのようなイラストを、プロンプトで指示するだけで作成してくれます。しかし、このイラストには以下のような違和感があります。
- 光の入り具合が不自然
- 背景の文字が不自然
- タバコが浮いている
- タバコの火が残る位置が逆
AIが描いたイラストを個人で使用する分には問題ありませんが、商用利用できるレベルかというと、なかなか難しいでしょう。
ITエンジニアの仕事がなくならない理由
ChatGPTを使用すると、軽いプログラミングが可能です。指示のやり方次第では、簡単なゲームの作成やアプリの作成ができます。
こちらは「スネーク」というゲームを作成するためのコードをChatGPTに書いてもらった結果です。実際にPython環境でコードを入力したところ、希望通りのゲームができました。
しかし、現状の生成AIにできるのはあくまでもこのような簡易的なコーディング、あるいはコーディングの際にエラーが発生したときに解消方法を教えてくれる程度です。複雑なコードの作成や、技術開発にはまだ使用できません。ITエンジニアはライターやイラストレーターと同様、まだ必要な仕事と言えます。また、そもそもITエンジニアはAIを作る側にもなれる点を忘れてはいけません。
コンサルタントの仕事がなくならない理由
文章生成AIがコンサルタントのような役割を果たすことはあり得ます。ただし、完全にコンサルタントと同じ提供価値を期待するのは、現実的ではありません。
今回、「SEOでサイトが上位に上がらない人」になりきり、文章生成AIにコンサルを依頼してみました。
こちらが、その結果です。瞬時に理路整然とした感じのアドバイスを受けられましたが、内容を見ると、いずれもちょっと調べれば出てくることばかり。テクニカルなアドバイスはなく、詳しいヒアリングもしてくれません。
やはり現時点でコンサルタント業務は対人のビジネスであり、人の介在が必要です。コンサルタントをサポートをする意味では文章生成AIは大いに活用できますが、人の仕事を完全に代行することはほぼ不可能といえるでしょう。
AIに仕事を奪われないために今やるべきこと
もちろん、将来的には現在の想像をはるかに超えるほどAIが発達し、今回「なくならない」と書いた仕事がなくなる可能性もあるでしょう。
たとえそうなったとしても人が生き残るためには、固有のスキルをしっかり身に着けて、AIと共存しつつ、AIに負けないような価値を発揮する道を選ぶことが重要です。
固有のスキルを身に着ける
AIに仕事を奪われないためには、AIに代替できない固有のスキルを身に付けることが大切です。今よりもスキルアップすることは大前提ですが、クリエイティブな仕事をしている人は「最新情報を収集すること」と「仕事量を増やして実践で腕を磨く」という2つのことを強く意識しましょう。
AIを活用して共存する
AIにかかわらず、技術発展により仕事を奪われる危険性は常に付きまとうものです。しかし、それを恐れるだけでなく必要に応じて積極的に使いこなすことで、むしろ仕事の質を高めるための強力な武器とすることもできます。
例えば、コンテンツSEO目的のライティングをする際には、キーワードのリサーチに始まって構成の作成、ライティングといったプロセスをたどることになりますが、リサーチ作業をAIで実施したり、ライティングの二重表現や冗長表現のチェックを依頼したりすることで、作業効率が大きくアップします。ただし、全てをAIでやろうとすると必ず失敗します。キーワードのボリュームや記事の信ぴょう性など不確実なことがまだまだあるからです。
ライティング以外にもクリエイティブの仕事でAIを使えるシーンは多くあります。AIを恐れず、AIと共存する道を選ぶことが大切です。
AIに置き換えられるといわれる仕事は、多く存在します。しかし、現時点ではいずれの仕事も、少なくとも完全に失われることはないでしょう。
むしろ今までの仕事の中でAIにできることはAIに任せることで、作業効率をアップして、別の業務に人的リソースを割けるようになります。
不安やリスクもあると思いますが、スキルアップをしてAIを活用しながら生きていくことで、今後の生活がより豊かになることでしょう。
執筆者紹介
谷川祐一
たにがわ・ゆういち GMOソリューションパートナー メディア運営チーム リーダー。SEOに特化したサイト制作に従事。さまざまな経験を経て編集責任者(リーダー)としてSEO初心者向けオウンドメディア「SEOタイムズ」とSNS運用代行サービスの立ち上げをおこなう。ランチェスター戦略をベースとしたSEO戦略の策定を得意としている。
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