サブスクサービスの「成功」と「失敗」の分かれ目:サブスクサービス成功の必須条件【前編】(1/2 ページ)
サブスクサービスを展開する企業が増えているが、日本ではプロダクト販売モデルからの脱却ができず、顧客の獲得・維持に苦戦している例が大半を占める。何が成功企業と苦戦する企業を隔てるのか。成功させるために最低限必要なことは何か。2回に分けて解説する。
COVID-19でさまざまな業種が大きなダメージを受ける中、ほぼ影響を受けず、それどころか新規顧客獲得を伸ばしているのがサブスクリプション(以下、サブスク)型のビジネスだ。サブスクは約10年前に米国で台頭して以来、業種を問わずグローバルで拡大を続けている。サブスクの契約・請求管理のプラットフォームを提供するZuoraが半期ごとに調査している「サブスクリプション・エコノミー・インデックス(SEI)」によると、サブスクビジネスは右肩上がりの成長を遂げており、COVID-19後もさらに成長が加速すると予測されている(関連記事:「成功するサブスクリプションビジネスに必要な5つの条件とは?」)。日本でも、2018年頃よりサブスク化の流れが加速しており、サブスクに取り組む企業は年々増加傾向にある。
一方、ここ数年で展開されたサービスには、思うようにユーザーの獲得・維持ができず、短期間で撤退に至ったものも少なくはない。では、サブスクサービスに成功する企業と失敗する企業の分かれ目はどこにあるのだろうか。今回は、サブスクサービスがうまくいかない理由を掘り下げ、サービス改善のカギは何かを説明する。
サブスクサービスにおける「成功」と「失敗」
そもそもサブスクサービスにおける「成功」と「失敗」とは、どのようなことを指すのだろうか。次に挙げる事例を考えてみる。
同種の2つのサブスクサービス「A」と「B」があり、サービス立ち上げ当初の申し込み件数が、サービスAは100件/月、サービスBは10件/月であった。しかし数年後、サービスAは顧客獲得のペースを維持できず、申し込みから数カ月後に解約顧客が続出してしまったため、収益が右肩下がりになってしまった。一方、サービスBは立ち上げこそ申し込み者は少ないものの、当初より顧客獲得ペースを向上させる活動を推進し、また、既存顧客を維持してアップセル/クロスセルにつなげることができたため、収益が右肩上がりになった。
従来の売り切り型サービスの場合であれば成否は初動で決まる。故に、開始当初はサービスAが成功しているように見えたかもしれない。しかし、サブスクサービスは継続的な収益の積み重なりにより将来の収益が決まるため、サービス立ち上げ時点での成功/失敗の見極めが非常に難しい。では、サービスAはなぜ失敗してしまったのか。原因を考察してみよう。
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