ベールを脱いだAdobeの「ヘッドレスサービス戦略」とは?:Adobe Experience Cloud事業責任者が語る(1/2 ページ)
Adobeがデジタルトランスフォーメーション(DX)支援の中核製品と位置付けるAdobe Experience Cloudは、企業にどんな価値を提供するのか。事業責任者へのグループ取材で明らかになった今後の戦略を解説する。
アドビは、2020年7月22日、米Adobeでデジタルエクスペリエンス事業責任者を務めるアニール・チャクラヴァーシー氏の記者向けオンラインミーティングを開催した。本稿ではここで得られた「Adobe Experience Cloud」に関する最新情報とAdobeの今後の戦略について解説する。
3層アーキテクチャで可能になったサービス指向の機能提供
Adobe入社以前のチャクラヴァーシー氏は、データマネジメント製品ベンダーの老舗InformaticaのCEOとして、ビジネスモデルと組織の変革をリードした実績がある。現在はAdobe Experience Cloudのビジネス戦略、製品マネジメント、エンジニアリング及びマーケティングをリードする。
チャクラヴァーシー氏は2020年3月にオンラインで行われたAdobeの年次カンファレンス「Adobe Summit 2020」に登壇した際、今後のAdobe Experience Cloudの製品の方向性を左右する重要な発表を行っている(関連記事)。以下、簡単におさらいしておきたい。
Adobeが提唱するCXM(Customer Experience Management:顧客体験管理)をサポートするAdobe Experience Cloudの傘下には「Adobe Analytics」「Adobe Target」「Adobe Experience Manager」「Adobe Campaign」「Marketo Engage」など個別のアプリケーションが並ぶ、これらは日本でも利用企業が多い。これまで各製品はAdobe Experience Platform上で動く構造であったが、2020年はプラットフォームとアプリケーションの間に「サービス」レイヤーが挟まる3層構造に変わった。
アプリケーションレイヤーの各製品は、それぞれが単体でもベストインクラスのCXM機能を提供しているが、今後の製品戦略では「『サービス』としてマイクロサービス型のアーキテクチャで機能を提供していく」とチャクラヴァーシー氏は明かした。
マイクロサービスとは、個別に開発した小さなサービスをAPIで組み合わせ、一つのサービスとして提供するものである。こうすることで、Adobeのアプリケーション機能同士を組み合わせ、Adobe Experience Platform上で稼働する「アプリケーションサービス」として顧客に提供できるようになる。さらに、他社のアプリケーションと連携させての拡張も可能になる。
Adobe Summitでは、顧客データプロファイルの管理を簡素化する「Real-Time Customer Data Platform(CDP)」、オムニチャネルでの顧客インサイトをリアルタイムに提供する「Customer Journey Analytics」、チャネル横断型の顧客インタラクションを自動化する「Journey Orchestration」という3つのアプリケーションサービスが紹介されたが、この3つのアプリケーションサービスは。日本でも2020年7月29日に提供を開始している。
これからの機能強化の方向性としては、アプリメーションサービスがさらに充実していくことになりそうだ。加えて、インテリジェントサービスも同様の戦略での拡充を計画している。AI(人工知能)と機械学習のフレームワークである「Adobe Sensei」で開発してきた機能をアプリケーションサービスと連携させ、サービスとして顧客に提供するのだ。
チャクラヴァーシー氏はアプリケーションから分離したサービスとして提供するという意味で、この戦略を「ヘッドレスサービス」と呼んだ。今までのAdobe Experience Cloudはクラウドアプリケーションとして提供されていたものの、「アプリケーションスイート」に近かった。マイクロサービス型アーキテクチャにシフトすることで、今後はより柔軟にかつ迅速に顧客が求めるCXM機能を提供していくことになる。
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