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元フェイスブックジャパン代表の「次の一手」はなぜクラフトビールのD2Cなのか「MOON-X」が始動(1/2 ページ)

フェイスブックジャパン代表取締役を退任し、日本のモノ作りを体現するブランド群を作ろうと起業した長谷川 晋氏。サブスクリプションモデルでクラフトビールを販売するという意外な展開に至った真意とは。

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 「ブランドとテクノロジーの力で日本のモノづくりの翼になる」

 2019年1月24日、元フェイスブックジャパン代表取締役の長谷川 晋氏は新会社MOON-Xの共同創業者兼CEOとして初めて臨んだプレス発表会の冒頭で、新たなビジネスへの思いを語った。

 フェイスブックジャパンを去る約半年前の2019年3月、長谷川氏は「今のポジションは私にとって最高の環境でした。有意義で明確なミッションを持った会社でダイナミックな役割を任せてもらえた」と語り、次のステージとして起業を目指すことを示唆していた。

 長谷川氏はフェイスブックジャパンと楽天でインターネットビジネスに深く携わったが、それ以前にはP&Gで10年間、「パンパース」「ジレット」「SK-II」など、さまざまなブランドのマーケティングやマネジメントを経験している。そこで身に付いたのが「本当に良い製品、良いブランドは人々の生活を豊かにする」という信念だ。

 これまでのキャリアの集大成として「ブランドとテクノロジーで日本の経済に貢献したい」と考えた長谷川氏が注目したのが、日本のモノづくりだ。

 日本には全国津々浦々、モノづくりに長けた企業がたくさん存在する。一方で、そうした企業に限って発信力が弱いことが多い。そこで「良いモノを日本中、さらに世界中に羽ばたかせる」ためのブランド群を築こうとMOON-Xを創業するに至った。その第1弾となったのがこの日発表されたクラフトビールブランドの「CRAFT X」だ。


MOON-Xのブランド第1弾となった「CRAFT X」

で、なぜクラフトビールなのか

 CRAFT Xはホップの香り豊かなIPA(India Pale Ale)の中でも新しい「クリスタルIPA」というスタイルで、苦味が少なく飲みやすいのが特徴のビールだ。醸造は文政6年(1823年)創業の木内酒造(茨城県那珂市)が担う。

 元フェイスブックジャパン代表取締役がなぜクラフトビールの世界に参入するのか。長谷川氏は3つの理由を挙げた。

 1つ目は自らの体験だ。一時期健康上の理由もありビールを飲まなくなっていたこともある長谷川氏だが、数年前に出張先でたまたま口にしたIPAのおいしさに衝撃を受けた。聞いてみると米国ではクラフトビールが大人気。実際、スーパーマーケットの棚にはさまざまな種類のクラフトビールが並んでいて「ビールにキラキラしたものを感じた」という。

 理由の2つ目は人の縁だ。特にビール評論家の藤原ヒロユキ氏と、今回のパートナーとなる木内酒造代表取締役社長の木内洋一氏に出会ったことが大きい。

 3つ目は市場性。矢野経済研究所の調べによると、2009年から2016年までに日本のクラフトビール市場は2倍に成長している。しかし、2017年のビール全体に占めるクラフトビールの割合は出荷ベースでたった0.9%にすぎない。米国ではこれが13%であることを踏まえれば「伸びしろしかない」というわけだ。

 CRAFT Xの「X」は「Next」を意味する。FacebookやInstagramをコミュニケーションのインフラとして日本に定着させた長谷川氏の「次の一手」への期待は高い。Moon-Xは創業3カ月でベンチャーキャピタルのJAFCOと個人投資家から10億円強の資金調達を完了している。


タッグを組む木内酒造代表取締役社長の木内洋一氏(左)と。木内氏は「ITとクラフトビールのコンビネーションが面白いと思った。ビール以外のジャンルでのクラフトバージョンにも取り組んでいきたい」と語る

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