「コンテンツのメディア離れ」が進む中で日本企業がこれからすべきこと――PwC調査:今日のリサーチ(1/2 ページ)
「パーソナライズされる世界」でエンターテインメントとメディアの未来はどうなるのでしょうか。PwCのグローバルレポート「Global Entertainment & Media Outlook 2019-2023」の示唆を紹介します。
PwCではエンターテインメント・メディア業界に関連する14のセグメント(注)を対象に、今後5年間の消費者支出と広告収入に関する動向を世界53の国と地域について毎年調査しています。その調査結果をまとめたグローバルレポートが「Global Entertainment & Media Outlook 2019-2023」です。同レポートのポイントと日本におけるトレンドについて、PwC Japanグループが2019年9月17日に開催したメディア向けセミナーで、担当者が解説しました。
注:書籍、B2B、映画、データ消費、インターネットアクセス、インターネット広告、音楽・ラジオ・ポッドキャスト、新聞・雑誌、OTTビデオ、屋外広告、従来のテレビやホームビデオ、テレビ広告、ビデオゲーム・eスポーツ、バーチャルリアリティー。
世界で加速する「コードカッティング」のトレンド
レポートでは2023年までの今後5年間に、世界のエンターテインメント・メディア業界は年平均成長率(CAGR)4.3%で成長すると予測しています。市場規模は2018年の2.1兆米ドルから2023年には2.6兆米ドルへと拡大する見込みです。
個別のセグメントで見ると成長率に大きな差があることが分かります。最も成長著しいセグメントはバーチャルリアリティー(VR)。ただし、普及率はまだ低く成長率も予想を下回っているとのこと。一方で2位のOTTビデオとの差は大幅に縮小しています。OTTとは「オーバーザトップ」の略で、ここでは「Netflix」や「Amazonプライム・ビデオ」といった、デバイスにとらわれず視聴可能なインターネット経由の動画配信サービスを指します。
世界のOTT業界の収益は2018年に382億米ドルに達し、2023年までにほぼ倍増する見通しです。PwCでエンターテインメントとメディア業界担当のグローバルリーダーを務めるエネル・ヴァン・エデン氏は「OTTビデオの市場は今まさに戦争前夜の状態」であり、AppleやDisneyなど有力なプレーヤーが参入したことで、今後もますます伸びていくと見ています。
一方で、従来のテレビやホームビデオは史上初めてマイナス成長の見通しで「コードカッティング」つまりケーブルテレビを解約してネット視聴に切り替えるトレンドが鮮明になっているようです。グローバル消費者調査で動画コンテンツの利用頻度を聞くと「1日に1回は消費する」と答える人は全体の3分の1を超えており、Z世代と呼ばれる若年層に限ればこの数字は50%以上になるということです。
エデン氏は「人々は受動的にコンテンツを消費したいと思う一方で自分で自分のメディアパッケージを作るようになっている。5Gネットワークの到来でモバイル化はますます進む。メディア企業と広告主は消費者の行動を理解し、その周りにビジネスを構築することが求められる。消費者はID番号でなく個人として存在したい。敏速に変化に対応し消費者を喜ばせなければならない」とまとめています。
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