Salesforce.comの20年と「カスタマーサクセス」への熱い思いをマーク・ベニオフ氏が語った:日本における投資はさらに拡大(2/2 ページ)
元祖SaaS企業として躍進するSalesforce.comが守り続けるコアバリューとは何か。会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏も登壇した創業20周年スペシャルイベントから、成功のヒントとなる言葉を紹介する。
顧客も従業員も家族
4つのコアバリューの下で事業を営むSalesforceが、創業以来掲げているもう1つの重点テーマが、社会貢献だ。
同社では製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を社会貢献活動に費やす「1:1:1モデル」を実践している。日本においてもこれまでに14万時間を社会貢献に費やし1250を超える非営利団体に製品を提供し、金銭面でも2億5000万円の助成金を提供してきた。
今後は、School Ready(公教育支援)、Tech Ready(STEM教育)、Workforce Ready(キャリア教育)を含む「Future Ready」プログラムを通じて、子どもの教育や若者のキャリア支援に一層注力する。
マーク・ベニオフ氏は「Salesforceはただの会社ではない。われわれはオハナ(Ohana)であり、同じ価値でつながっている」と力説する。
この「オハナ」こそ、同社の企業文化の根幹にあるコンセプトだ。オハナはベニオフ氏が愛するハワイの言葉で「家族」を意味する。Salesforceにとってのオハナには、従業員だけでなく顧客やパートナー、地域社会までもが含まれる。同じ価値観を共有する者同士が一丸となって、お互いがお互いに対して責任を持つ関係を広げようというのだ。
日本企業の模範となる
親日家として知られるベニオフ氏は、初めて海外事業所を作った日本を重要な戦略拠点と考えている。Salesforce Tower Tokyoの開設は日本の国内事業における大きなコミットメントを象徴するものだ。
外資系企業でありながら、セールスフォースは地方創生や働き方改革など日本政府の取り組みにも協力し、日本国内での投資も積極的に行ってきた。従業員が生き生きと働ける環境を作り他の日本企業の模範となりたいと努力し、2019年にはGreat Place to Work Institute Japanの「働きがいのある会社ランキング」で1位を獲得している(関連記事)
「素晴らしい可能性を持ったこの日本において、われわれの新しいチャプターが始まる。これまで以上に努力して、カスタマーサクセス、イノベーション、そして地域社会への還元に力を注ぎたい」と語るベニオフ氏が、成長を持続するために心掛けていることがある。それが「Shoshin(初心)」だ。
「初心者の心にはたくさんの可能性があるが、卓越したと思い込んでいるものには限られた可能性しかない(In the beginner's mind there are many possibilities, in the expert's mind there are few)」。これは米国で禅を広めた僧侶として有名な鈴木俊隆老師の言葉だ。
ベニオフ氏は来日すると京都・龍安寺を訪れる。龍安寺は白砂に15個の石を配した石庭で有名だ。15個の石はどの角度から見ても1度には14個しか見ることができない。15個の石が見えるようになるためには、自分の内なる心と対話する必要があるとベニオフ氏は語る。龍安寺で初心に立ち返り、ひらめきを体験して想像力を発揮することの大切さを思い出しているのだ。
徹頭徹尾「カスタマーサクセス」づくし
「われわれの使命はお客さまの成功を促すことだ。企業がどうしたら成長し、イノベーションを起こせるのかを考え、洞察力や新しい発想、ビジョンを与えている。お客さまの心を開き、どんな初心を秘めていなくてはいけないのかを示し、15の石が見える状況を作り出すのだ」と、ベニオフ氏は自社が担う役割を龍安寺のエピソードに重ねて説明する。
日本に2つのデータセンターを設け、企業のデジタル変革を下支えしてきたセールスフォースは、今では日本郵政やキヤノンマーケティング、NTTコミュニケーションズ、明治安田生命、SOMPOホールディングスといった大手企業にとってもなくてはならない存在だ。
最後にベニオフ氏は従業員に向けて「Salesforceは100%カスタマーサクセスに注力している。お客さまがいるから、Salesforceは世界でも競争の激しいCRMの領域でナンバーワンの座にいられる。カスタマーサクセスをわれわれ以上に重視している会社はない。Salesforceの特別なエネルギーをぜひお客さまに提供してほしい。そうすることでわれわれはお客さまと、オハナとして一丸となることができる。新しい元号が発表され、皇居が見える場所で私たちは新しい時代のビジネスを開始する。令和という平和で調和の取れた新しい時代を、私たちのビジネスを通して実現する。初心を忘れず、さらに努力を重ねることで、私たちは大きなチャンスを得ることができるはずだ」と述べ、講演を締めくくった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ビジネス購入者向けコマースプラットフォームの新製品:セールスフォース・ドットコムが「Salesforce B2B Commerce」を提供開始
セールスフォース・ドットコムは、ビジネス購入者向けコマースプラットフォームの新製品「Salesforce B2B Commerce」を提供開始すると発表した。 - 「テクノグラフィック」で読み解くMarTechの現在:マーケティングオートメーション導入状況 米国では「HubSpot」、日本では「Salesforce Pardot」が強い
他社はどのツールを導入しているのか。営業インテリジェンスデータサービス「Datanyze」のデータから今月は「マーケティングオートメーション」の導入状況を探る。 - Salesforce Marketing Cloudをさらに強化:Salesforce.comがDatoramaを買収へ
Salesforce.comはクラウド型分析プラットフォームを提供するDatoramaを買収することについて、最終合意に至ったと発表した。 - 「Salesforce IoT Explorer」が目指すもの:セールスフォース・ドットコムの挑戦、IoTの価値を「顧客体験価値」へ変える
セールスフォース・ドットコムが国内で本格的に提供を開始した「Salesforce IoT Explorer」。IoTデータとCRMの連携でビジネスにもたらされる価値とは何か。