メルカリのライブコマース、法人利用における3つのメリット:国内ライブコマース市場最前線(1/2 ページ)
中国に続くように、日本もライブコマースプラットフォームが次々と登場し、順調にユーザー数を伸ばしている。C2Cのイメージが強い市場だが、法人こそ活用すべきだとメルカリチャンネル法人担当の石川氏は話す。
Web制作会社のLockUPなどが主催するライブコマース委員会が、「ライブコマースショウ2018」を開催した。本稿では、「メルカリチャンネル」で法人開放などを担当するメルカリ事業開発部 石川 佑氏の講演内容を紹介する。
ライブコマース市場が日本でも拡大
中国で急成長を遂げるライブコマース市場。アプリベンダー提供社数は200を超え、1年で50億円を売り上げるインフルエンサーも誕生した。2017年のユーザー規模は約3億5000万人に拡大している(中国インターネット情報センター調べ)。その市場規模は50億ドルに達するという試算もある。
日本でも2017年からライブコマース関連サービスが続々登場しており、各社とも2018年は本格的に市場拡大を狙っている。
先行する中国では個人が活躍するプラットフォームとしての印象が強いライブコマースだが、企業もまた、活用方法を模索している。例えばC2Cのフリマアプリを展開するメルカリは、試験的にライブコマースプラットフォーム「メルカリチャンネル」で法人向けのライブコマースサービスを開始している。
企業がライブコマースを活用するメリットとは何か。メルカリ事業開発部でメルカリチャンネルの法人開放を担当する石川氏は、メリットは3つあると語る。
「メリットの1つ目はコスト効率。スマホ1台あれば配信開始できるので、従来の販売方法より効率が良い」(石川氏)。
同氏はネット通販専門のアパレルメーカーである夢展望がメルカリチャンネルでライブ配信を実施した事例を紹介した。
ネット通販を運営するに当たっては通常、商品ページ用の写真や原稿を準備しなければいけない。しかし、ライブコマースであれば、商品さえあれば事前準備は必要ない。夢展望の例では、1時間当たりの販売金額が、従来の販売方法とライブコマースではほとんど変わらなかった。事前準備がいらない分、通常のネット通販よりコスト効率は良いといえる。
石川氏が2つ目のメリットとして挙げたのは、従業員の士気向上だ。「店頭で働くスタッフの方々にとって、自分たちの配信が不特定多数のユーザーに見られるという状況は大きなモチベーションにつなががる」(石川氏)
これは、当初メルカリ側では想定していなかった効果だという。一般的に、業務が増えると現場は嫌がるものだが、ライブコマースは従業員が進んで参加したくなるという特異な性質を持っているようだ。
テストマーケティングのプラットフォームとしての可能性
3つ目のメリットは、購入者の販売前のインサイトが分かる点だという。「インタラクティブにコミュニケーションできるライブコマースであれば、ユーザーの意見をリアルタイムで知ることができる。ユーザーが何を欲しているのか、逆になぜこの商品を欲しくないのかを直接聞ける」(石川氏)
この特徴を活用した事例として石川氏は、ライザップグループのテストマーケティングの例を取り上げた。
ライザップグループは、日本未発売の新商品を最初に発売するチャネルとして、メルカリチャンネルを選択した。本格的なプロモーションを開始する前に、ライブコマースを通じて、どう訴求すればユーザーに受け入れられやすいのかを調査するためだ。
実際にライブ配信を行った結果、当初想定していたアピールポイントはユーザーにはほとんど響かないことが分かった。もちろん、それ自体は残念なことではあるが、訴求力のない施策でそのまま走り続けるのではなく、立ち止まって改善する機会を得られた意義は大きい。
新商品のプロモーションは、得てして社内や広告代理店の企画ありきで進みがちだが、本来はユーザーの声を聞き、ユーザーニーズを基に企画するのが理想だ。しかし実際には、従来のテストマーケティングは費用も時間もそれなりの規模で投資しなければいけないため、継続的に実施できる企業は少ない。その点、新たなテストマーケティング手法としても、ライブコマースは大きな可能性を持っている。
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