広告運用の自動化、現場が消耗しているのになぜ進まない?:本気で考える広告運用の自動化(1/2 ページ)
広告運用の自動化が注目を集めている。生産性向上や働き方改革の観点から期待も大きいが、その効果を不安視する声もまだまだ大きい。現在の論点とこれからの方向性を専門家が解説する。
この10年ほど、次々と新しいメディアが表れ、広告手法も広告に関わる人の数も、すさまじいスピードで変化しています。その一方でずっと変わらず残り続けている、いやむしろ今の方がより深刻化している課題が 、広告運用のオペレーションにまつわる負荷です。
さまざまな媒体別に入札を管理し、キーワードの選定にバナーの出稿調整、さらに社内外へのレポーティングなど、日々のオペレーション業務に忙殺されている運用担当者は少なくないはずです。
願いは1つ。複雑化する運用業務をもっと簡単にしたい――そうした声に応えようと、今注目されているのが、「広告運用の自動化」です。
テクノロジーと働き方改革が求める広告運用の自動化
まず前提として、日本における運用型広告の運用品質は非常に高いと考えています。広告運用の世界ではこれまで、セグメントを非常に細かく分割し、ターゲットユーザーに対して的確なクリエイティブを展開するという形を実現してきました。データベースを持っているサービスのリスティング広告などでは数百万キーワードを出稿管理し、それに対してクリエイティブを細かく出し分けるといったことも、ごく普通に行われています。
ただ、この飽くなき成果追求の姿勢が昨今、ネガティブなものとして語られることが増えてきていると感じています。広告運用担当者の複雑かつ膨大な作業量は働き方改革のコンテクストにおいて望ましくないもの、改善されるべきものと見られているのです。
さらに、テクノロジーの側面からも、運用型広告は進化を迫られています。広告におけるAI技術の活用で、たくさんのデータを集めて機械(ここではGoogle AdwordsやFacebookなどの広告プラットフォーム)に取り込み、最適なターゲットに対して最適なボリュームで自動的に広告を配信できるようにしようというのです。
なぜ自動化ツールは信用できないのか
こうして現在、広告運用の自動化をうたったツールが続々と登場しています。この流れは正しいと思いますし、そもそも広告サービスを提供しているプラットフォーム自身もまた、最適化を追求するものです。デジタル広告の特徴を最大限活用することは、ROI(投資対効果)の観点からも非常に大事です。そして、この形が実現できれば、広告効果向上と運用効率化を一石二鳥で実現できるのです。
こうして見ると広告運用の自動化が一気に進みそうな気もしますが、実際にはそうなってはいません。私たちはここに、現在の自動化ブームと広告運用の現場の実態にズレが生じていると感じています。
現在の自動化の流れは、少し言葉を変えると「データ主導型の自動化」ということになります。自動化の効果を最大化するためには、たくさんのサンプルデータを収集する必要があります。またデータを蓄積し、学習するまでの期間、予算やクリエイティブなどの配信環境に大きな変化を起こさないというのも重要な条件となっています。
しかし、実際の運用業務では、全体のマーケティング施策の変更に伴う対応が日々求められるので、大きな変化が起こらない環境を構築することは非常に困難です。またせっかくデータを集めたとしても、再度大きな変化が起これば学習データも水の泡になります。
予算が大きく変動するとそれを学習するまでツールが正しく動かないとか、季節やイベントなどによるイレギュラーな成果の変化に柔軟に対応できないというのでは、とても熟練した運用担当者の業務を代行することはできません。
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