「ビールが注げる蛇口」×インフルエンサー、かまぼこの老舗「鈴廣」の狙い:イベント×ソーシャルメディア(1/2 ページ)
小田原・箱根エリアで人気のクラフトビール「箱根ビール」20周年を記念して、販売元であるかまぼこブランドの「鈴廣」が「イベント×ソーシャルメディア」施策を展開した。老舗とインフルエンサーの意外な親和性とは?
2017年12月3日、東急田園都市線の二子玉川駅前広場に、突如「ビールが注げる蛇口」が出現した。仕掛けたのはかまぼこのブランド「鈴廣」を展開する小田原鈴廣。同社が地元の神奈川県小田原市を中心に販売するクラフトビール「箱根ビール」の20周年を記念して、そのおいしさを広く知ってもらおうと実施した販促イベントの一環だ。
同イベントでは、マイグラスを持参すれば蛇口から出るビールが無料で注ぎ放題。「箱根ピルス」「小田原エール」「風祭スタウト」の3種類から好きな銘柄1種類を選ぶことができ、しかも、おつまみとして鈴廣のかまぼこがふるまわれるというから、ビール好きにはたまらない。「ねとらぼ」など、エンターテインメント系メディアを中心にプロモーションを仕掛けたことも功を奏し、師走の風が肌寒い日曜日の午前から、会場にはビール好きの男女で長蛇の列ができた。
なぜインフルエンサーマーケティングに取り組むのか
創業152年の老舗である鈴廣は、これまでにも認知獲得のため、さまざまなイベントを実施してきたが、インフルエンサー施策に取り組むのは今回が初めてだという。
鈴廣グループのマーケティングを統括する鈴廣蒲鉾本店の鈴木智博さんは、今回の企画への思いを次のように語る。
「箱根ビールのおいしさを、まだ飲んだことがない人にも知っていただきたいと考えました。SNSという新しいコミュニケーションのチャネルを通じて、多くの人に興味を持っていただき、ぜひ小田原、箱根までの飲みに来ていただきたいです」
蛇口から無料でビールが注ぎ放題というのは、ビール好きにとってもちろん大きな魅力だ。しかも、絵になる。いわゆる「インスタ映え」や「コト消費」が話題になる今日においては、蛇口をひねる瞬間をスマホで撮ってSNSで拡散したくなるのが人情というものだ。そして、親しい誰かが楽しげにビールを注いでいる写真や動画がニュースフィードに流れてくれば、受け取る側も「いいね!」「何これ飲みたい」とリアクションを取らざるを得ない。
今回の企画では、博報堂グループでデジタルコミュニケーション支援事業を営むスパイスボックスの協力を得て、モデルなど計5人のインフルエンサーをアサインした。オファーの基準は箱根ビールのターゲットにマッチした層である「美や食にこだわりがあり、上質な暮らし方を追求している人」「ビールが好きで好きでたまらない人」など。ビール好きが集うコミュニティーにもイベントへの参加を呼び掛けたという。
「(鈴廣本店がある小田原の)風祭によく行くので、箱根ビールはめっちゃ飲んでるし、かまぼこもめっちゃ食べてます」。そう語るのは、今回インフルエンサーとして招かれた神尾美沙さんと石田一帆さんだ。雑誌の読モ(読者モデル)としても活躍する2人は、クラフトビールが大好きな友達同士で、今回のイベントも、声を掛けられて、2つ返事でOKした。
ビ―ルが好き過ぎてビアソムリエの資格まで取ってしまったという神尾さんは、蛇口からビール注ぎ放題について「一言で言うと最高」と興奮気味に語る、。石田さんも「お金を払ってでも来たいイベント」と、満足したようだった。「欲を言えば、丸テーブルだけでなく、きれいに写真が撮影できるようなセットを用意してもらえると、なお良かったも」(神尾さん)、「蛇口からビールを出すところは、写真よりむしろ動画向きなのかも。私もInstagram Storiesで投稿しました」(石田さん)といった率直な感想には、仕事を超えた共感がにじむ。
インフルエンサーマーケティングというステークホルダーを介したコミュニケーションには、とかく「ステマ(ステルスマーケティング)」「やらせ」といった疑念が付きまとう。だが、フォロワーから前もってビール好きとしてしっかりと認知されている人たちの情報発信であれば、話は違ってくる。「PRって書いてあっても、見ている人は、私たちが本当に好きで投稿しているって分かっていると思うし、実際好きだから投稿しやすいです」(神尾さん)
企業からのオファーであっても、「やらされている」という意識はない。フォロワーに伝わるのは宣伝文句ではなく熱量だ。一口にインフルエンサーといっても、誰に声を掛けるかで、その温度はかなり違ってくる。
今回の施策では、インフルエンサーのInstagram投稿で約2000件のいいね!を獲得するなど、期待通りの成果を挙げられたようだ。
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