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ファッションテック参入のルグラン 泉 浩人氏に聞く データを価値に変える方法とは?気象ビッグデータ×機械学習で毎日のコーデを提案(3/3 ページ)

気象ビッグデータを分析し、その日の天気や気温の変化に合わせたコーディネートを提案するWebサイト「TNQL」を立ち上げたルグラン。「ファッションテック」に取り組む理由を聞いた。

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女性特有のファッションの悩みを解決するために

 TNQLの特徴は、単に気象データに合わせたコーディネートをランダムに提案してくれるだけではない。

 せっかく提案してもらっても、自分のワードローブにないアイテムばかりでは参考にならない。そこで、ルグランが得意とするビッグデータ分析やAIの技術を生かし、ユーザーの好みを学習していくことで、1人1人にパーソナライズしたコーディネートを提案するようにしているのだ。

 同時に、データ分析と並ぶルグランの得意分野であるUXデザインのノウハウを用いて、簡単かつ直感的に使えて、繰り返しアクセスしたくなる楽しいサービスにしようとこだわった。そのためにまず、ターゲットになる20〜40代の女性を集めてワークショップを行い、朝起きてから家を出るまでの行動を書き出してもらうなど、フラストレーションを感じるポイントを洗い出した。その上で必要な機能を策定し、導線設計を行った。

 現状、TNQLのコーディネートは体感温度を基に用意された720パターンのイラストの中から選定される。体感温度は1日の気温差や気温、風速、湿度を独自のアルゴリズムによって導き出す。選ばれたイラストには「午後は天気が回復 暖かく薄着でも大丈夫」といった一言アドバイスが添えられる。

 このイラストはInstagramで人気のファッションイラストレーター40人の中からオーディションで選ばれた6人の手によって描かれたもの。天気のロジックを説明をした上で、それぞれに割り振ったシチュエーションに合わせて、イラストを描いてもらったという。


《クリックで拡大》

 ちなみに、TNQLのエンジニアはトロント在住の女性であり、サイトデザインもLA在住の女性だ。アルゴリズム開発などで協力したハレックス在籍の気象予報士も女性ばかり。そして、これがUXデザインや機能開発においても1つの重要な鍵になっている。

 「男性には理解しがたい心理ですが、女性は同じ人に会うときに、前と同じ服にならないように気を使うと言うんです。でも毎日のコーディネートをいちいち覚えているのは大変です。そこで『コーデログ』という機能を付けて、自撮りした実際のコーディネート写真を登録できるようにしようということになりました。自撮りするのが面倒な人は、5つのイラストの中から気に入ったコーディネートを1日に1つ残すこともできます」(泉氏)

 まさに女性による女性のためのサービス。気象データという意外と使い道の難しいデータにファッションの課題解決という方向性を与え、さらに徹底したユーザー目線でコンテンツを組み立てているのだ。

 「多くの人に毎日使ってもらうことで、データはどんどん蓄積されます。そして、ユーザーの好みをより深く知ることができるようになる。いずれは画像解析機能を追加して、リアルなファッションの分析にも役立てていきたいし、データからトレンドを生み出せるサービスにしていきたいですね」(泉氏)

 データが新たなデータを生み、そのアセット(資産)がさらなる別の価値につながる。「データはあるけどビジネスに生かす方法が分からない」と悩む多くの企業にとって、TNQLの発想力やサービス開発のプロセスは、示唆に富んだものとなるだろう。

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