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Webサイト改善で売り上げアップを請け負う「グロースハッカー」という仕事「Growth Hacker Awards 2017」レポート(1/2 ページ)

Webサイトの改善提案で製品やサービスの売り上げ増に貢献する役割を担う「グロースハッカー」。2016年に最も貢献したグロースハッカーを表彰する「Growth Hacker Awards 2017」の模様をレポートする。

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 デジタルテクノロジーの進展は、新しいビジネスを創出するだけではなく、新しい職種も生み出してきた。古くはWebマスター、最近ではデータサイエンティスト、そして、「グロースハッカー」もその1つだ。

 Webマーケティングの文脈においてグロースハッカーとは一般的に、Webサイトを通じて提供されるさまざまな製品やサービスの「成長(グロース)」をドライブする役割を担う人たちのことを指す。「ハック」とは、製品やサービスがより多くの人たちに受け入れられるような仕組みや仕掛けをWebサイトに組み込むことだ。

 ECサイトや企業のWebサイトの継続的な改善を実現し、収益向上を支援するKaizen Platformは2017年3月14日、東京・恵比寿で「Growth Hacker Awards 2017」を開催した。

グロースハッカーとは何者か

 Kaizen Platformには現在、約5600人ものグロースハッカーが登録している。彼らは同社の顧客企業のさまざまなオファーの中から自分にあった案件を選び、グロースハッカーとしてデザイン案を投稿しているのだ。

 優秀なグロースハッカーの手に掛かれば、Webサイトには多大なマーケティングコストを掛けずとも多くの人が集まるようになる。単純にアクセスが増加するだけではなく、リピート率やコンバージョン率の向上も期待できる。

 同アワードはさまざまな業種のWebサイト改善で事業に大きく貢献したグロースハッカーの活躍を表彰する場というわけだ。


Kaizen PlatformのCo-founder&CEO須藤憲司氏

 同社のCo-founder&CEOの須藤憲司氏は、グロースハッカーの貢献により、これまでに250社以上のWebサイトが改善を実現していると述べる。実際、ユーザーインタフェース(UI)改善によりページビュー(PV)で8億、売り上げにして1億円以上の経済効果が認められたWebサイトは23事例もあるという。

 同社のグロースハッカーたちのプロフィールはさまざまだ。子育て中の主婦もいれば、地方在住のフリーランサーもいる。企業に属しつつ兼業で登録している人も、もちろんいる。須藤氏は、「時間や場所を問わない働き方、新しい職業の1つとして、グロースハッカーを知っていただきたい」と述べる。

トップグロースハッカーのWeb改善テクニックを学ぶ

 各賞の表彰式が行われた後は、「ここでしか聞けないトップグロースハッカーのテクニック――グロースハッカーによる改善事例解説」と題したパネルディスカッションが行われ、自動車バイク部門受賞者の岡村 しんし氏、求人部門賞の北古賀 紀行氏、不動産部門賞・スマートフォン賞の淵上喜弘氏、オープンオファー賞の宝寿原 実加氏が登場した。

 岡村氏の事例は、IDOMが運営する中古車買い取りサービス「ガリバー」のWebサイト改善だ。同社が抱えていた課題は、車を売りたいと考えているサイト来訪者をいかにして査定申し込みページへと誘導するか。

 岡村氏がまず心掛けたのは査定ページまでの「スムーズな導線の確立」だったという。従来のサイトデザインでは右側に査定の申し込みフォームがあり、左側に車を「乗り換える」のか「売る」のかを選ぶボタンが2つあった。つまりファーストビューに導線が3つあったのだ。そこで、2つのボタンをページの下に移動させることで、ファーストビューでは申し込みフォームだけが見える形にした。そして、2つのボタンという導線をなくした代わりに、他のページで良く読まれていた「ガリバーが選ばれ続ける4つの理由」というコンテンツを配置した。こうした工夫により、査定申し込みページへの遷移率は従来比378%向上したという。


ファーストビューに導線が複数あると、サイト来訪者は「次にどこに行くべきか」迷ってしまう。それを改善したのが一番右のデザインだ《クリックで拡大》

 続いて、求人部門賞を受賞した北古賀 紀行氏の事例は、スタッフサービスエンジニアリングが運営する技術者向け派遣求人サイトの応募フォームを改善したものだ。従来はサイト来訪者の入力フォームが「ドンとあるだけ」(北古賀氏)で、入力をためらうような雰囲気があったため、若い女性の写真をメインビジュアルに、デザインを一新した。その結果、登録の完了率は従来比157%になった。


モデルに若い女性を採用しその写真を大きく使うことで改善効果を高めた《クリックで拡大》

 不動産部門賞・スマートフォン賞の淵上喜弘氏は、大東建託の賃貸物件を検索するスマートフォンサイトの改善事例を紹介した。同サイトは来訪者の多くが検索エンジンからの流入で、情報を何となく見て離脱してしまうという課題があった。

 そうした明確な目的のない来訪者にインパクトを与えるため、淵上氏は不動産物件の写真など視覚に訴える情報を重視したという。不動産を探している人の多くは、取りあえず物件の外観を見て、気に入ったらその後に重要となる家賃やアクセスなどの情報を確認する。「物件はいくつも並んで表示されるので、やはり、写真が大きい方が心に刺さる」と考えた淵上氏は、物件の外観を確認できる程度まで写真を大きくした。その結果、物件詳細ページへの遷移率は171%になった。

 オープンオファー賞を受賞した宝寿原 実加氏の事例は、NTTレゾナントが運営する「goo自動車&バイク」のスマートフォンサイトの改善だった。宝寿原氏が気になったのは「ファーストビューの1番目立つところに電話ボタンがあったこと」だった。

 スマホでWebサイトを見るのは、電車で移動している最中や寝る前の布団の中などのシーンが多い。つまり、問い合わせをしたくても電話できない。また、中古車や中古バイクを購入するときのユーザー行動を考えても「まず電話」という緊急性はない。取りあえず在庫はあるのか、見積もりはどうしようと考えるのが自然であり、そうした行動を想定して改善に臨んだという。そこで、電話のボタンを見積もりおよび在庫確認のボタンに置き換えたところ、コンバージョン率は168%に上がったという。


右側のデザインでは電話ボタンの代わりに見積もりと在庫確認のボタンになっている《クリックで拡大》

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