「コカ・コーラ パーク」から「Coke ON」へ、日本コカ・コーラがモバイル+自販機で打つ次の一手:山口義宏が聞く「最強ブランドのデジタル戦略」(1/3 ページ)
会員数1300万人の「コカ・コーラ パーク」を2016年12月21日で終了する一方、自販機と連動するアプリ「Coke ON」を軸に展開する日本コカ・コーラの新たなデジタル戦略とは?
会員数1300万人の「コカ・コーラ パーク」を2016年12月21日で終了。一方で、2016年4月にスタートさせた「スマホ自販機」と連動するモバイルアプリ「Coke ON」を軸に新たなデジタル戦略を本格化させている日本コカ・コーラ。2016年11月に日本でサービスを開始したSpotifyとのパートナーシップにより音楽サービス「Coke ON ミュージック」を提供するなど、新たな体験価値を模索しつつ、Coke ON自体のテレビCMを展開するなど、その本気ぶりが伝わってくる。
世界最高峰のブランドの1つであるコカ・コーラの日本法人だからこそ実現できる戦略の眼目とは何か。日本コカ・コーラ マーケティング本部IMC iマーケティング統括部長 豊浦洋祐氏に、ブランド戦略コンサルタントの山口義宏氏が聞いた。
「Coke ON」誕生の背景
山口 豊浦さんは日本コカ・コーラのマーケティングコミュニケーションのうちデジタルに関わる分野を全てマネジメントされていらっしゃるのですが、私が想像する限り、恐らく日本のあらゆる企業のデジタルマーケティング責任者の中でも最も潤沢に予算を持つ方の1人だと思います(笑)。その一方で、外部からはその先進性を、社内からは成果を厳しい目で見られる立場であると思います。そんな豊浦さんが担う現在の課題とはどういうものか、まず聞かせてください。
豊浦 2016年のコカ・コーラは、おかげさまでとても業績が良く、競合メーカーとの相対的な市場シェアも上がったのですが、全てが順調というわけではなく、販売チャネルの中では自動販売機チャネルの立て直しが会社として大きな課題になっていました。無人で運営する自販機は収益率が高く、一方でお客さまにとっても、身近にあってすぐ商品が買える便利な存在ですが、近年はコンビニエンスストアなど他のチャネルが拡大し、優位性を失っていました。そこで、以前は例えば缶コーヒーの「ジョージア」に「ガンダム」のおまけを付けて購買意欲を刺激するなど、さまざまな施策を打ちました。ただ、そうしたもので一過性の効果を期待するだけでなく、もっとチャネルの新陳代謝を抜本的に上げる施策が必要と考えました。
山口 それが、4月にローンチしたCoke ON(関連記事「日本コカ・コーラが新デジタルマーケティング戦略『Coke ON』を発表」)につながってくるのですね。全国の自販機チャネルを使ってモバイルアプリでメーカーが自らスタンププログラムを運営するというのは、発想自体は昔からあるスタンプカードのデジタル版であり、非常にシンプルに見えます。ただ、高い市場シェアを持つ自社の自販機がなければ絵に描いた餅で、多くのメーカー企業が実現できずにいるものです。これは、どのような考えで実施されたのですか。
豊浦 以前に幾つかのオフィス限定で、カード型のスタンプ式ロイヤリティープログラムを試験導入していました。これは、あらかじめユーザーにICチップ入りカードを配布しておいて、飲料の購買時にそれを自販機付属のカードリーダーにかざすとポイントがたまるというものでしたが、リピート購入の促進に高い効果が見られました。そこで、これをオープンロケーションに拡大していけないかと検討していました。ただ、カード型のままでこれを全国展開するのは無理がある。ICチップ入りのカードは1枚数百円のコストが掛かりますし。
山口 そこで、代案としてスマホアプリを使ったわけですね。カード型の場合、そもそもどうやってカードを配布するのか、配布したカードを携帯してもらえるのかという問題もありますが、これだけスマートフォンが普及した現在の日本であれば、それも解決できると。とはいえ、全国の自販機をスマホ対応にするのも、かなりの額の投資となりますよね。
豊浦 ビーコンやBluetoothに対応するなどの大掛かりな改修は必要でしたが、技術的にも予算的にも何とか可能ではあったので、そこで勝負してみようということになりました。自販機の台数がこれだけ多数ある国は他にありませんから、全世界のコカ・コーラの中でも、日本市場でしかできないユニークな施策といえると思います。
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