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ターゲティングだけじゃない、位置情報があるから見える「刺さるメッセージ」の作り方【連載】初めてのロケーションベースキャンペーン 後編(1/2 ページ)

位置情報系を使った広告配信が増える中で「どれがいいの?」「何が違うの?」と迷うマーケターは少なくありません。この連載では位置情報を活用する意義から具体的なサービス選択のポイントまで解説します。

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 モバイルシフトが叫ばれる現在、広告配信に位置情報の活用が注目される理由は何か、具体的にどのようなプロセスで位置情報が使われているのか。前回「モバイル広告に「位置情報」がなくてはならない理由 」では、その概要とプロセスの前工程、料理でいえば下ごしらえの部分まで述べました。今回は肝心の料理の部分について説明します。具体的にはデータからターゲットを抽出してセグメントを生成し、配信するまでと、そのレポーティングについてです。

 まずは前回のおさらいから。位置情報系広告を構成する要素は大きく分けて以下のようになります。

  • インプット(量/質)
  • データの意味付け
  • データ抽出とセグメント生成
  • 配信
  • レポーティング

 では早速、位置情報活用の中核部分であるデータ抽出とセグメント生成の話から始めます。

データの抽出・セグメント生成

 位置情報と建物情報がひも付いたら、その膨大な情報の中から配信対象とするターゲットを抽出する作業が必要になります。「今、○○にいる」人をターゲティングして配信する場合は、基本的には対象地域・店舗を指定するだけです。この作業は料理でいえば、さっくり野菜を切って盛り付けるサラダのようなイメージでしょうか。サービスによって差があるとすれば、指定ポイントからの距離です。最小半径10メートルから指定できるものもあれば、半径1キロという場合もあります。また、円状ではなく建物の形で対象範囲を指定するPolygon指定が可能なサービスもあります。

建物の形に合わせたPolygonで対象地域を指定

半径Xの円で対象地域を指定

 「過去、○○にいた」というターゲティングの場合は、抽出条件はより複雑になり得ます。「場所」と「対象とする期間」に始まり、どのくらいの時間滞在していたのか、時間帯はいつ頃か、期間内の訪問頻度や拠点間を移動した速度はどのくらいかなど、細かく洗い出そうとすればきりがありません。

 抽出したいターゲットがどのような行動をするかということに考えを巡らせ、抽出条件を指定するという作業は、イマジネーションが必要です。これは、位置情報を活用したソリューションの醍醐味でもあり、難しさでもあります。スクラッチからこのようなオーディエンスセグメントを生成するのは大変なので、あらかじめ定義済みのセグメントとして用意されている場合も多くあります。

例1:ビジネストラベラー 

  • 平日に月2回以上空港を訪問
  • 2拠点間を時速200キロ以上で移動
  • 平日1日5時間以上、週3回以上空港にいる人は従業員として除外

例2:エレクトロニクスバイヤー

  • 家電量販店に半年以内に複数回訪れている人

 各サービスの利用検討時にはどのくらいの粒度でセグメントが作れるのか、抽出ロジックはどのくらいカスタマイズ対応が可能なのかといった確認が必要です。ただし、あまり細かく絞り過ぎると全くインプレッションが出ないことがあるので、セグメントの細かさとリーチ数のどちらを優先するのかは決めておく必要があります。

 インプットとなるデバイス数が多ければ多いほどリーチは確保しやすくなりますが、現在の日本ではまだ細かなセグメントの絞り込みに耐えるほど広告配信の対象となるデバイス数が多くないので、今後の進化に期待したいところです。

 実際、日本ではまだリーチボリュームが不十分なことから、むしろカスタマイズ性をそぎ落として位置情報系広告をチラシや交通広告の補完・代替手段として利用することも少なくありません。

 具体的には、郵便番号に対応した配信セグメントや、路線沿線のエリアに対応した配信セグメントです。エクスペリアンジャパンが提供する消費者セグメンテーションデータ「Experian Mosaic Japan(Mosaic)」という、国勢調査のデータから地域をグループ別けしたデータセットを配信セグメントとして利用することもできます。チラシや交通広告の場合数値化しにくかった反応率が取れる点が、併用メリットです。

配信

 どれだけ精緻にターゲティングができるようになったとしても、タイミングとメッセージを誤ると全て水の泡になってしまいます。配信面や、配信枠、配信クリエイティブをターゲティング設計と同様に大切に考える必要があります。

 いくら「ちょうど今○○にいる人」を的確にターゲティングできたとしても、配信した広告をその場にいる間に見てもらえるとは限りません。

 また、商材とシチュエーションの相性もあります。例えば、「Instagram」用の写真加工系アプリの場合、「今カフェにいる人」をターゲティングしたキャンペーンと「今ジムにいる人」をターゲティングしたキャンペーンでは、クリック率に大きな開きがありました。カフェではゆったりとした時間を過ごし、広告をクリックする余裕もありますが、ジムでの滞在目的はエクササイズであり、広告をクリックしている場合ではないであろうと推測できます。

 また、先に例に挙げた「エレクトロニクスバイヤー」というオーディエンス、すなわち家電量販店に良く訪れる人たちに対して配信した広告では、インプレションのうち、ユーティリティ系アプリ、すなわちキャッシュクリアやバッテリー最適化アプリのクリック率が群を抜いて高いことが分かりました。エレクトロニクスバイヤーはITリテラシーが高く、スマホのパフォーマンス最適化のためにユーティリティアプリを好んで入れる傾向があるといえそうです。

 このように、単にターゲットを設定するのではなく、受け手の実際の行動を想像しながらチューニングを掛けていくことでパフォーマンスの向上が期待できます。

 なお、モバイルへの広告配信の場合、320×50という小さいサイズのバナーを無視することはできません。これを除外しようとすると、配信ボリュームが減ってしまうからです。とはいえ、限られたサイズの中で十分な情報を伝えることは難しいでしょう。そこで、位置情報を活用した広告ならではのアプローチとしては、

  • ストアロケーター(近くの店舗や、近くの店舗への距離を表示)
  • 地名を入れてじぶんごと化してもらいやすくする(○○駅をご利用のあなた)
  • 天気連動

などを表示するのが効果的です。


ストアロケーター

天気連動

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