第2回 “さわれるデジタル”の到来:【連載】IOT(Internet of Things)時代のブランドエクスペリエンス(5/5 ページ)
企業は“どういったブランドエクスペリエンス”を提供すべきなのでしょうか? ブランドエクスペリエンスを提供する手段として、より直感的にブランドの価値が伝わる「さわれるデジタル」ともいうべき手法が登場してきています。今回はそんな「さわれるデジタル」をご紹介します。
ブランドエクスペリエンスとしての活用事例
次はプロトタイプではなく、実際のブランドエクスペリエンスとしてhaptics やクロスモーダルが活用されている事例を取り上げます。まずは資生堂の「触覚」を可視化したウィンドーディスプレー「Shiseido 'KANSEI' Design Lab」です。
これは肌に触れる際の指の力加減や動きをリアルタイムに測定できるセンサー「Haplog」を「Haplog Machine」に装着、HAKU/ボール/パフにかかる触圧の値に応じてモニターに表示されるデザインが変化するウインドウディスプレーです。下記のような資生堂の触動作センサーの研究が元になっている活動です。人が肌に触れる繊細な感覚といったある種のバイタルデータとhaptics な体験を組み合わせたブランドエクスペリエンスの好事例です。
また、クロスモーダルの領域でも面白い事例があります。エバラの「お口の中の遊園地」です。
これは野菜の浅漬けを食べた際に、口の中に別の刺激を与えることによって違った感覚を呼び起こすクロスモーダルなブランドエクスペリエンスです。お口の中の遊園地」タイトルそのまま、野菜の浅漬けを食べることで口の中をジェットコースターが走ったり、花火が上がったりといったエンターテイメントになっています。食べるという日常の行為や味覚をクロスモーダルを活用して新しいエンターテイメントにまで昇華させているという素晴らしい事例です。これは慶応義塾大学の筧研究所で開発されたTagCandyの技術をベースとしているようです。
「さわれるデジタル」でつくるブランドエクスペリエンスの未来
このように「さわれるデジタル」の登場により、より直感的でフィジカルなブランドエクスペリエンスの提供が可能になってきました。特にクロスモーダルは、複数の感覚の組合せで新しい知覚をもたらすものなので、視覚情報を提供する既存のメディア(TV、新聞、雑誌、交通)に視覚以外の感覚を提供するデバイスを組合せることで、クロスモーダルなブランドエクスペリエンスを作っていくことが可能になっていきます。
こういった「さわれるデジタル」のブランドエクスペリエンスの価値というのは、より記憶に残る、新しい「ブランドの体験記憶」を生み出すものだという点です。そのことにより、企業と生活者のつながりもより強固でより長いものになっていくはずです。また、こういった他にない新しい体験は生活者にとってはシェアしたい体験であり、それにより、この体験は広く生活者に共有される可能性を秘めているのだと思います。
次回は基礎技術領域のラスト、データサイエンス領域のお話をしたいと思います。
寄稿者プロフィール
神谷憲司 株式会社スパイスボックス 執行役員 クリエイティブディレクター/テクノロジスト。プロトタイピングラボWHITE代表。ソーシャルメディアを活用したプロモーションプランニング、コミュニケーション開発を得意としながら、最近はスパイスボックス社内にプロトタイピングラボWHITEを立ち上げ、テクノロジーを起点とした新しい広告体験の開発や製品・サービス開発に取り組んでいる。文化庁メディア芸術祭グランプリ、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル銅賞など、国内外の広告賞受賞歴も多数。
連載バックナンバーはこちら⇒【連載】IOT(Internet of Things)時代のブランドエクスペリエンス
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