第4回 ソーシャルメディアはマーケティングの“ブラックボックス”を可視化した――基礎化粧品「RICE FORCE」のFacebookページに学ぶ:【連載】高広伯彦が聞くソーシャルメディアとマーケティングの今後(1/2 ページ)
ソーシャルメディアの普及によって、広告主である企業がデータを持ち、リアルタイムの分析ツールも簡単に手に入るようになった。基礎化粧品「RICE FORCE」のFacebookページからソーシャルメディアマーケティング運用の基礎を学ぶ。スケダチの高広伯彦氏がアイムのゼネラルマネージャー 山下省三氏に聞いた。
前回の要約
香川県に本社を構えるアイムが化粧品ブランド「RICE FORCE」のFacebookページを開設したのは2010年。日本語版と海外版の2つを運営しており、ファン数はそれぞれ約6万人と約25万人だ。電話やはがきで培った“通販リテラシー”がFacebookページの運営に生かされている。
相手が興味を持っている状態で商談が始められる
高広伯彦氏/1996年、博報堂入社。出版営業局を経てインタラクティブ局で、メディア開発、インタラクティブマーケティング領域の業務に従事。iメディア局ではコンテンツ開発やビジネス開発を行う。2004年に電通に転職し、「牛乳に相談だ。」キャンペーンなどを手がける。その後、Googleに入社。AdWordsの日本におけるマーケティングや、YouTubeの広告ビジネスの日本導入などを手がける。2009年に独立し、コミュニケーションプラニングを専門に手がける「株式会社スケダチ」の代表として企業のコミュニケーションを企画する。2012年8月には日本初のインバウンドマーケティングエージェンシー「株式会社マーケティングエンジン」を設立した。著書に「次世代コミュニケーションプランニング」など。
高広 ソーシャルメディア、特にFacebookページを運用することによるメリットをどのように考えていますか。
山下 日本版で6万人、海外版で25万人のファンがいると、すでに相手が興味を持っている状態で商談が始められるというメリットがあります。特に海外企業との商談では、「Facebookでこれだけファンの方がいるんです」といえば100%驚きます。「こんなに支持されているのか」と思ってもらえる。まさにマーケティングツールであり、PRツールです。
高広 なるほど。一部には、(Facebookを活用したマーケティング)はBtoCには強いが、BtoBには弱いのでは、という議論があります。しかし、実際にはファンが集まっているからこそ、商談がスムーズに進んだりすることもあるわけですね。
山下 弊社は香川県に本社があるということもあり、メディア露出については非常に弱かったんですね。それが、ソーシャルメディアマーケティングをテーマに2010年頃から露出回数が増えました。
高広 Webサイトしか用意していない場合、極端にいえば、「キレイなサイトですね」とかそういう評価しかされないかもしれません。ファン数が明示されていて、つまり、お客さまからの支持数が可視化されているというのが、ソーシャルメディアを活用したマーケティングの強さなのでしょう。
アイム マルチメディア部 兼 海外事業部 ゼネラルマネージャー山下省三氏/2004年に株式会社シムリー(現 イマージュ)に入社、2005年に事業部から子会社化した株式会社アイムに転籍し、Webサイトの運営、Webマーケティングを担当。2008年から海外事業を兼任し、2011年には国内/海外のマーケティング全般を担当。株式会社イマージュの新規事業立ち上げも兼任する。
山下 ファン個人が特定できますからね。そこから年齢なりさまざまな属性データが取れるわけで、そんなマーケティングツールは今までありませんでした。
広告代理店との関係も変わりました。テレビよりインターネット領域に力を入れようということになって、ある時、広告代理店からWebを使ったプロモーションを提案してもらいました。弊社の場合、Facebookページが目立っているので、これを活用しようという話になるんです。しかし、“投稿内容がコレで、どうしてアレだけ「いいね!」が付くのか”、は私たちのノウハウですので、ノウハウをお伝えしなければ、話がそれ以上発展しにくい状況です。
高広 「いいね!」数、あるいはエンゲージメントの数値変化にはピンと来るものですか?
山下 (ピンと)来ますね。「投稿内容によってどのぐらいの効果が得られるか」を僕たちが自力で測れるというのはすごく武器になっていると思います。
高広 広告というのは、(主に企業が)出会いたいお客さまと間接的に出会う場だと考えられますが、Facebookをはじめとしたソーシャルメディアの台頭によって、企業がお客さまと直接コミュニケーションできる環境が整備されてきました。また、企業側でお客さまのデータを持つことができるようにもなっています。
山下 結局、自分たちでできるという話ですよね。もちろん、広告代理店にもお手伝いいただきたいところがたくさんありますが、従来と違うのは、マーケティングに利用できる情報を弊社側が持っているということで、その強みは大きいことを実感しています。
高広 日本のマーケティングの歴史でいうと、マーケティングというのは、1970年代ぐらいに日本の広告代理店がアメリカから輸入した概念といわれています。マーケティングのフレームワークとか、消費者リサーチというのも、広告代理店自身が武器として持っていて、それが彼らの強さだったわけです。ソーシャルメディアの普及によって、広告主である企業がデータを持ち、リアルタイムの分析ツールも簡単に手に入るようになりました。
山下 マーケティングの変化という意味では、そこがいちばんのポイントかもしれませんね。広告代理店主導のマーケティングはブラックボックスの部分が大きかったので。
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