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第2回 AIDMAの「I」(Interest:関心)を大きくするため――日清のソーシャルメディアマーケティング【連載】高広伯彦が聞くソーシャルメディアとマーケティングの今後(1/2 ページ)

ソーシャルメディアマーケティングにおいて非常に重要なテーマである「エンゲージメント」をどう考えるか。日清食品のマーケティング部 三宅隆介氏は「興味を持ってもらうこと」と定義する。つまり、AIDMAの「I」(Interest:関心)だ。

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ユーザーの評価が価値を変える


高広伯彦氏/1996年、博報堂入社。出版営業局を経てインタラクティブ局で、メディア開発、インタラクティブマーケティング領域の業務に従事。iメディア局ではコンテンツ開発やビジネス開発を行う。2004年に電通に転職し、「牛乳に相談だ。」キャンペーンなどを手がける。その後、Googleに入社。AdWordsの日本におけるマーケティングや、YouTubeの広告ビジネスの日本導入などを手がける。2009年に独立し、コミュニケーションプラニングを専門に手がける「株式会社スケダチ」の代表として企業のコミュニケーションを企画する。2012年8月には日本初のインバウンドマーケティングエージェンシー「株式会社マーケティングエンジン」を設立した。著書に「次世代コミュニケーションプランニング」など。

高広伯彦氏(以下、高広) 「第1回 「『チキンラーメン ひよこちゃん』Facebookページの24万ファン数は多いか、少ないか」で、日清食品では社内各部署から集められたソーシャルメディアプロジェクトチームが、ソーシャルメディア上の戦略や方針を決められているというお話がありました。そこで質問ですが、そもそもチームの中で「ソーシャルメディア」をどう定義付けていますか?

三宅隆介氏(以下、三宅) 難しいですが、あえて定義付けるなら、消費者と直接交流する場と位置付けていますね。

高広 つまり、ソーシャルメディアは「お客さまと直接触れあえる場所」、マスメディアは(第三者の持ち物である「広告枠」を買うという意味で)「間接的にお客さまと触れあう場」ということですね。よく、「ソーシャルメディアとマスメディア」のように二項対立で話されることがありますが、三宅さんはソーシャルメディアとマスメディアをどのように分類し、定義付けていますか?

三宅 ソーシャルメディアの中でも、FacebookとTwitter、LINEではそれぞれ違いますよね。なので、マス4媒体とソーシャルメディアとをざっくり区切ってしまうのは乱暴かもしれません。

 その上で、あえて言うなら、目線の高さの違いかもしれませんね。マスメディアは上空から地上に向けて情報を降り注ぐイメージですが、ソーシャルメディアの目線は地上にあり、同じ高さで消費者に話しかけるイメージです。でも、例えば、LINEのスタンプは上から降り注ぐイメージに近いかもしれません。ひよこちゃんスタンプを空から配布して、幅広いお客さまに使っていただくという感じです。

高広 確かにLINEはそんな感じがしますね。少しマスメディア的な要素が加わり出したというか。では、Facebookについてはどのように考えられていますか?


日清食品株式会社 マーケティング部 第3グループ 主任 三宅隆介氏/2001年入社、営業を経て宣伝部に6年間在籍し、担当ブランドのコミュニケーションプランニング/Webプロモーションなどに携わる。2011年3月からマーケティング部3Gで「チキンラーメン」「日清麺職人」などの商品開発やマーケティングを担当。

三宅 私にとってFacebookは「ひよこちゃん」が消費者の方に歩いていって、直接語りかけるイメージです。距離感はソーシャルメディアの中でも近い方ですね。Facebookの一番面白いところは、評価がさらけ出されているところです。ファン数などの評価軸は、Twitterやほかのメディアにもありますが、Facebookがすごいのは一記事あたりに「いいね!」数やシェア数が可視化されていることです。企業からすると、自分たちの記事がどう評価されているか分かるし、読者から見れば、たくさんの「いいね!」という価値が付着した状態で記事が届くわけで、これは画期的なことだと思います。

高広 面白い話ですね。今の話で「メディアエンゲージメント」という言葉を思い出しました。これは、まったく同じ内容の広告でも、雑誌Aに出した場合と雑誌Bに出した場合では、(広告の)効果が全然違ってくるという考え方です。A誌とB誌では、読者がそれぞれの雑誌に感じている“価値(のようなもの)”が違うため、その価値(のようなもの)が掲載された広告の効果に影響すると考えられているのです。この「メディアエンゲージメント」は媒体全体の価値を測るための考え方ですが、そのままソーシャルメディアに当てはめるわけにはいきません。というのも、ソーシャルメディアというのは、細分化されたコンテンツの集積であり、それぞれのコンテンツはユーザーの評価が付加されることで価値が変わるという性質を持っているからです。つまり、ソーシャルメディアの場合は、“たくさんのユーザーが評価した後の記事”と、“評価されていない(状態の)記事”では、同じ内容の記事でも価値が変わってしまうのです。

 ユーザーの評価は、これから先のマーケティングを考えるうえで、今まで以上に重要な要素だと思います。テレビCMのように、15秒の中に企業が自分たちのメッセージを詰め込み、雑音が入らないようにするのではなく、自分たちのメッセージに合わせて、お客さまのメッセージや「いいね!」を加えて、「企業側のメッセージ+お客さまの評価」というパッケージとして伝えていく、それを企画する作業が重要になるということだと思います。

三宅 そうですね。Facebookではお客さまのハートマークがいっぱい付いた状態でコンテンツが届けられるので、本来インスタントラーメンにあまり興味がない人にも、こんないっぱい「いいね!」が付いているカップ麺ってどんな味がするんだろうと思っていただける可能性があります。

高広 それはすごく価値があると思うし、利用しない手はないと思いますね。

三宅 シェアをしていただくお客さまの気持ちになって考えるのが重要だと思っています。うちの記事をシェアしていただくときに、「こんな面白い記事をシェアしたんだね。すごいね」と周囲の人に思ってもらえるために努力をしています。つまらない記事や有益でない記事をシェアをすると、シェアする人のセンスが問われてしまうと思いますので。

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