第6回 プロセスの視点 〜お客さまの心を動かすコミュニケーションデザインのためのフレームワーク〜:【連載】コミュニケーションデザインのための戦略フレームワーク(1/2 ページ)
今回お話しするマーケティングコミュニケーション活動におけるプロセスの視点では、お客さまの心を動かすコミュニケーションデザインのケーパビリティを高めるためのフレームワークやコミュニケーションデザインの進め方、そして進める上でのポイントやコツを紹介します。
成熟した国内市場では、新商品や新サービスの利点や競合他社との差異を、お客さまに理解してもらうことが以前より難しくなっています。
お客さまの心や生活に勝手に割り込んでいくような一方的なコミュニケーションは嫌われてしまいます。一方的に企業視点の情報でコミュニケーションを図るのではなく、お客さまに役立つ、喜ばれる、お客さま視点からコミュニケーションを図っていくことが必要です。コミュニケーションの中核にあるのは、あくまで「お客さま視点」なのです。
また、近年はSNSが相次いで登場しました。こうしたツールによって、企業はお客さまとのコミュニケーションにおいても多様な手段が活用できるようになりました。
しかも、お客さま自らもこうしたメディアを活用して積極的に情報を発信したり、お客さま同士のつながりを通じて頻繁に情報共有が行われるようになってきました。お客さまはもはや、ブログやソーシャルメディアでつながっている友人や知人へ影響を及ぼすメディアでもあります。
一方、使い方やタイミングを誤ると相手に悪印象を与えるリスクも高まってきています。
このような背景を踏まえ、コミュニケーションの取り方が従来とは様変わりしています。「伝えたはずのことが実は相手に伝わっていなかった」「伝えた相手の心に響いておらず、期待どおりに行動してもらえなかった」といったコミュニケーションロスが頻発してしまいます。お客さまの心を動かすこと、そのために工夫することが、円滑なマーケティングコミュニケーション活動の進行に欠かせません。
マーケティングコミュニケーション活動におけるプロセスの視点の2つのケーパビリティのうち、前回は「内部業務プロセス」について解説しました。今回はもう1つのケーパビリティ「コミュニケーションデザイン」に関し、そのケーパビリティを高めるためのフレームワークや、進める上でのポイントやコツを紹介します。
なぜ、コミュニケーションデザインが必要なのか
昨今、コミュニケーションデザインという言葉が頻繁に使われるようになりました。その背景には、お客さまとの接点が多様化し、複雑化したこと、また、これまで情報の受け手だったお客さまがブログやSNSなどを通じて情報の発信者となり、その発信した情報が他のお客さまの行動に大きな影響力を持つようになったことが影響しています。そのため、全体としてバランスが取れたコミュニケーション戦略ストーリーを描いていくことが、一段と重要性を増しているのです。
このことは、他の業界を眺めてみれば、特に変わった出来事ではなく、本来の姿なのではないでしょうか。
家を建てる際には、設計図が作られます。設計図がベースになって計画に沿った家ができあがります。
また、映画やドラマ作りも同様です。脚本は、映画やドラマのベースを左右するとても重要ないわば設計図です。俳優がどんな場面でどのような演技をするか、監督がどんな演出をするか、カメラマンがどんな撮影をするか、照明技師がどんな照明を当てるか、映画やドラマ作りに関係するスタッフはこの脚本という設計図を元に、1つの作品を創り上げているのです。
お客さまとの良好な関係を築くためのマーケティングコミュニケーションも同様に、コミュニケーションデザイン(設計図)が必要で、そのコミュニケーション戦略シナリオ(脚本)に沿って活動を行なっていくことで成果を高めることができるのです。
コミュニケーションデザインのためのフレームワーク
では実際にどのようにコミュニケーションデザインを進めていけばよいのでしょうか。お客さまとのコミュニケーション活動を考えるにあたっては、どのようなことを意識し、どのようにアプローチしていけばよいのでしょうか。
コミュニケーションの構図(フレームワーク)を捉える
まず、コミュニケーションデザインを進めていく上で、お客さまとの接点を描くことが重要です。お客さまと直接または間接的にコミュニケーションを図る場面(接点)を俯瞰的に捉えるのです。
例えば、前回(第5回 プロセスの視点 〜内部業務プロセスの「見える化」と「評価」のためのフレームワーク〜)は、展示会を通じた新規顧客の開拓(アクイジション)活動のビジネスプロセスを描きました。その1つのアクティビティ「来場予定者の開拓」のコミュニケーションを図る場面を考えてみましょう。
「来場予定者の開拓」を図る場面としては、まず直接自社がお客さまと接点を持ち、展示会への来場を呼びかけることが考えられます。例えば、自社で管理しているハウスリストを活用した来場の呼びかけ、自社メディア(Webサイトなど)での展示会の告知などです。また、営業マンが直接お客さまに呼びかけを行なうこともあるでしょう。
さらには、自社以外のお客さまとの接点を活用した間接的なコミュニケーションも考えられます。
展示会の主催者が保持しているハウスリストや展示会主催者のWebサイトを通じて、自社ブースへの来場を呼びかけることが考えられます。さらには、イベントサイトを運営しているような外部組織のメディアを活用した呼びかけを考えることもできます。
ここで重要なことは、費用対効果のバランスを保ちながら、「来場予定者の開拓」のためのお客さまとの接点を、俯瞰的に考え、描くこと、そして、それぞれのお客さまとの接点での成果(自社ブースへの来場者数)を最大化することです。それに加えて、それぞれの接点の効果/評価を行なうことも重要です。さらには、コミュニケーションの構成がしっかりしていれば、関係者間で正確に情報を伝えることも、仕事の段取りを効率的に進めることも可能になります。
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