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ヤフー友澤大輔氏インタビュー、「Yahoo! JAPANが変わることで、日本のデジタル広告市場は進化できる」(後篇) ヤフーがネット広告について考えていること

ヤフー マーケティングイノベーション室 室長 友澤大輔氏へのインタビューの後篇。「Yahoo! Japanのすべてを使ってネット広告の効果検証をする」「アドテク先進国の米国を反面教師をすればいい」などの発言の真意とは。

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ExchangeWire

圧倒的「数」を持つYahoo! JAPANのすべてを使い尽くす意味

ExchangeWire Japan 大山忍(以下大山) Yahoo! JAPANが広告主の立場でチャレンジをするという中で、他社の媒体の広告を買うといった可能性もあるんでしょうか?


ヤフー マーケティングイノベーション室 室長 友澤大輔氏

ヤフー友澤大輔氏(以下友澤) Yahoo! JAPANの広告を徹底的に使い尽くすというのが最優先です。今、Yahoo! JAPANを、最も自由自在に使える立場にあるのは、我々だと思うんです。まずは我々が、Yahoo! JAPANの枠を徹底的に使いこなし、リスクやコストを担保した上で、お客さまに対して「こういう価値が提供できます」と示すのが第一の意義です。もちろん、Yahoo! JAPANだけではできないこともたくさんあると思います。他の媒体と連携することで、まったく新しいものが出てくる可能性があるのであれば、それもありだろうと思います。あまり、その部分にはこだわっていないんですよ。

 例えばテレビと組むというのであれば、ちょっと状況が違ってきますが、オンラインの分野では、まずYahoo! JAPANにあるものをすべて使いこなせないと、他社と組んでもあまり意味がないだろうとは思っています。RTBやDSPといったアドテクノロジーが注目を集めていますが、テクノロジー主体の視点ではなく、「目的に合わせたターゲティング」や「対象に応じたクリエイティブの変更」という視点は、デジタル広告の本質です。Yahoo! JAPANには、そうした本質を実現するための技術は、すでにあるんですね。さらにリーチ率は87%以上に達しています。つまり、Yahoo! JAPANの中に存在するさまざまなドメインを横断して見ることは、アドネットワーク全体を見ることと、ほぼ変わらないでしょう。だからこそ「Yahoo! JAPANでできることを、すべて徹底的にやり尽くす」ことに、意味があるんです。

大山 提携したCriteoやBrightTagといった企業が持っているアドテクノロジーについても、お客様へサービスとして提供する前にこの組織で全て検証をしていくのでしょうか。

友澤 Yahoo! JAPANとしては、実証と提供を同時進行で進めていきます。Criteoのようにすでに安定したサービスについては、そのまま提供を開始します。BrightTagなどは、難しいところもあるので我々の方で検証を先に進めます。さまざまなテクノロジーをどう使っていくべきかについて、我々が実践をするだけではなく、その結果を事例としてためていき、きちんと発信していきたいと考えています。やはり、経験として使い尽くしていないと「評論家」になってしまいますからね。実際にいろいろと試した上で、「これはやりすぎ」「これはマスト」といったノウハウを体験談として語れるような状況を早く作っていきたいです。

大山 検証において、特に注力していきたい分野などはありますか。

友澤 MediaMindとの提携に関連して、リッチアドの可能性はきちんと見極めていきたいですね。デジタル広告の売上は、「量」「質」「単価」から構成されています。「量」については、Yahoo! JAPANは圧倒的に強いですよね。「質」はクリエイティブやターゲティングといった要素に分かれますが、ターゲティングについては「行動ターゲティング」があります。しかしながら「クリエイティブ」については、さまざまなユーザーに受け入れられるために、リテラシーの低い方を基準としてやってきたというのが、正直なところだと思います。

 先日のアドテックでは、あるお客さまから「リテラシーの低いところに合わせた結果、Yahoo! JAPANは、メディアとしての進化が遅れてしまったのではないか」との指摘も受けたりもしたのですが、では、Yahoo! JAPANがその枠を壊したときに、一体どうなるのかという部分に積極的にチャレンジしていきたいと思っています。

米国を反面教師にできる日本にはチャンスがある

大山 先ほど、広告市場については、デジタルの比率が海外と日本で大きく違うという話がありました。友澤さんの目から見て、その違いを生んでいる要因は何だと思いますか。

友澤 デジタル広告市場には、「広告主」「アドテクノロジープロバイダー」「媒体社」「エージェンシー」など、さまざまなプレイヤーがいます。日本でのアドテックの集客状況をみてみると、広告主の参加も増えて、徐々に盛り上がりを見せてきているようです。米国で言えば、ちょうど3〜4年前のような、ようやくアーリーマジョリティ的な人が関心を向け始めた状態ではないかと。その段階にある広告主への啓蒙は、これから重要になってくると思います。こう言うと、米国は非常に先進的に聞こえるのですが、個人的には「テクノロジー」が進みすぎて、大きな壁に当たっているようにも感じているのです。

 ある人が米国のアドテックで発言した「もうメディアなんてこの世にはなくて、すべてはデリバリーだ」という言葉が象徴的なのですが、プレイヤーがテクノロジーを盲信し、媒体がパフォーマンスを追求しすぎたあまり「送客装置」になり果ててしまったという現実があるのです。これは、メディアにとっても、それにかかわるプレイヤーにとっても、あまりハッピーな状況ではないと思います。日本はようやくデジタル広告の市場が立ち上がってきた段階です。米国での現在の行き詰まりを反面教師として、それと同じ轍をふまないように進んでいく必要があると思います。

大山 むしろ、後進である日本には、市場が良い方向へ進むチャンスがあるということでしょうか。

友澤 そうだと思います。特に「ブランディング」分野では、MediaMindとの提携以降、大きな反応をもらっています。そのあたりを盛り上げていくことを考えたいですね。その際は、現状、広告主がデジタル分野の「クリエイティブ」にお金を出したがらないという傾向も変えていく必要があると思います。今まで、クリエイターの足かせになっていた容量の制限や、媒体のレギュレーションを変えていくことで、彼らが自分たちのクリエイティブをデジタルの分野に生かしていくことを「面白い」と思える環境を作ることが重要です。そうすることで、クリエイティブの質を高め、ブランディングにも生かせるようなデジタル広告の活用の仕方を、日本から盛り上げていける可能性もあると思います。

 デジタル広告に大きな潮目が来ている中で、今私がいる「Yahoo! JAPAN」には大きな責任が課せられていると感じています。Yahoo! JAPANが変わらなければ、業界は変わらないという思いは、我々の中にも強くあります。今、幸いなことに「爆速」というキャッチフレーズの下で、社内全体もチャレンジングな雰囲気になっており、会社全体が見ている方向性も1つに定まっているように感じます。その空気の中で、我々も可能な限りオープンに、さまざまな実験をやっていきたいと思っています。ぜひ、一緒に失敗する覚悟があるチャレンジングな広告主の方とも、コラボレーションさせていただきたいですね。

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