第4回 Trading Deskの基礎――成立の背景からビジネスモデル、今後の展開予想まで:【連載】これで分かる! アドテクノロジー入門(1/2 ページ)
アドテクノロジーの進化により、さまざまなプレイヤーが出現してきています。DSP(DemandSidePlatform)やSSP(SupplySidePlatform)もそうですが、それらを運用する業態/組織であるTrading Deskが日本国内でも立ち上がりつつあります。今回はTrading Desk成立の背景から、ビジネスモデルの考察、プレイヤーの動きなどを解説します。
Trading DeskとはRTB取引の広告を運用する業態、システム、あるいは組織のこと
Trading Deskというのは、一般的には金融業界でよく使われる言葉ですが、アドテク界隈では広告を運用(Trading)する業態や組織を指します。リーマンショックによって金融市場からあふれたシステムエンジニアが金融工学のRTB(RealTimeBidding)の考え方をそのまま活用して開発したのがDSPです。その流れで、DSPの運用を行う組織をTrading Deskと呼ぶようになりました。あるいは、運用組織だけではなく、運用を行うシステムそのものであったり、DSP運用を支える何かしらのシステムを指す場合もあります。いずれにしても共通点は「RTB取引」です。
米国ではすでに乱立
米国ではすでに多くのプレイヤーが存在しています。またそれらは大きく2つに分化しています。
1つはWPPなどの大手広告会社が自社の運用組織として保有しているもの(Xaxis、Adnetik、Mediabrands Audience Platform、Varick Media Management、Accuen、Audience on Demandなど)です。もう1つは独立系で自社のプラットフォームを持つもの(Accordant Media、The Trade Deskなど)です。
2011年までは独立系のTrading Deskの中でも自社のプラットフォームを持たない企業がありましたが、徐々に自社プラットフォームを中心とした運用に切り替わっています。そのため、すでにカオスと言われている米国アドテク市場ですが、独立系Trading DeskとDSP事業者の境目がさらに曖昧になったといえるでしょう。
日本では3分化
日本国内ではTrading Deskは主に3分化しているといえるでしょう。米国と同様、広告代理店向けに運用サービスを提供しているTrading Desk(DAC、CCI、イーグルアイなど)、システムとしてのサービスを提供しているTrading Desk(Fringe81など)、そして、米国ではあまり聞かない形として営業組織と運用組織を併せ持つ広告主向けのTrading Desk(スパイア、オプトなど)が存在しています。
Trading Deskのサービス内容は大きく3種類
日本国内に注目して各Trading Deskのサービス内容を解説していきます。
広告代理店向けTrading Desk(エージェンシートレーディングデスク)
主にメディアレップがこのポジショニングでサービスを展開しています。それゆえ、単にDSPや第三者配信アドサーバを提供し、運用を行うだけではなく、自社の買い切り枠やメディアとの独自交渉によって、広告主の予算を最大限に活用したパフォーマンス追求を行っている場合がよくあります。広告主にとっては、月々の予算の目途をつけやすいことや、思いがけなく良質な媒体に安く出稿できる可能性がある点がメリットといえるでしょう。
ただし、RTB広告の運用者、全体のコミュニケーション戦略を立てるプランナー、バナークリエイティブなどを制作するクリエイターが別々の会社にいる点は、場合によってクライアントに不利益を生じさせることもあります。
システムとしてのTrading Desk
このポジショニングでビジネスを行う企業は少ないのですが、例えば、Fringe81などはここに該当します。自社で第三者配信アドサーバを持ち、広告主や広告代理店にサービスを提供しています。日本国内では広告主や広告代理店でも対応が遅れているアトリビューションマネジメントと運用型ディスプレイの統合管理に積極的に取り組み、大手広告主を中心に取引を拡大しています。システム提供者といっても、同時に、広告代理店に近い機能を併せ持ち、DSPの運用やアドネットワークの買い付け、クリエイティブの制作業務も行います。
広告主向けTrading Desk
当社スパイアもここに属していますが、営業組織と運用組織を併せ持つTrading Deskです。広告代理店に極めて近い機能を持っていますが、取引の大半がRTBを活用した広告運用です。また、Tradingだけではなく、広告主サイト内の改善に対する独自ソリューションを保有している企業もあります。
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