第2回 PR会社は魔法使いではない!:【連載】マーケターのための正しいPR会社選び
企業の担当者は、PR会社がメディアでの報道を魔法のように増やしてくれる存在ではないことを肝に銘じて、早い段階から相談をしたり、社内への説明や調整役として動かなければならない。
「PR会社と契約しているけど、何もしてくれない」という不満の声をよく耳にする。どうしたらPR会社に望んだ役割を果たしてもらえるのか? PR会社がその力を最大限発揮するために、企業の担当者に求められる役割とは?
小売チェーンB社の場合
PR会社と月額40万円でリテイナー契約している飲食チェーンB社は、自社店舗の露出を増やすため、毎週1本以上のプレスリリース配信を目標にしている。PR会社には、ドラフトの作成やメディアリストの管理、配信作業をお願いしていて、それらの業務は着実にやってくれてはいるものの、掲載獲得のためのフォローやメディアコンタクトのセッティングなどは、B社からお願いをしてようやく動いてくれるレベル。リリース配信以外の自発的な活動提案はほとんどない。B社の広報担当者は、このまま契約を続ける意味があるのだろうかと不満に思っている。
IT機器メーカーC社の場合
IT機器メーカーのC社は、役員の一声で、展示会の会期中にリニューアルした自社製品の記者発表会実施を決めた。C社の宣伝担当者がそのことをPR会社に伝えると、PR会社に「リニューアル製品のスペックではメディアの引きが弱い」「集客はかなり厳しい」「タイミングを再検討した方がいい」と言われてしまう。C社の担当者は「これはトップの意向ですでに決まったこと。難しいからこそ、それをいかに取り上げてもらうか考えるのがPR会社の仕事だろう!」と激怒。結局、記者発表会は予定通り開催したものの、業界専門誌の記者がちらほら来場する程度で閑散とした会になってしまう。渋い顔の役員はPR会社を変更した方がよいと担当者に指示をした。
上記の事例と似たような話やエピソードは、PR業界では割とよく聞く話である。なぜこのようなことが起こるのだろうか? その背景として、企業の担当者が、PR会社にお願いさえすれば(PR会社にお金を払えば)、何でもできる(メディアにたくさん取り上げてもらえる、イベントに記者がたくさん来る)と過信していることが大きいと感じる。
PR会社に何を頼むのか? 限られた予算の中で何を優先させたいのか?
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