なぜコンビニは人気のない「エッグタルト」を売り続けるのか:仕事をしたら“お客の顔”が見えてきた(2)(1/5 ページ)
ローソンでスイーツの販売データを見せてもらった。それによると「エッグタルト」はあまり売れていないのに、店頭に並び続けている。人気のない商品は消えていくはずなのに、なぜ「エッグタルト」を売り続けるのか。
仕事をしたら“お客の顔”が見えてきた
「ビッグデータ」――。この言葉を一度は聞いたことがある人も多いだろう。膨大なデータを記録・解析して、ビジネスなどに活用するというものだ。最近では経済誌などでも「ビッグデータ」というキーワードが取り上げられつつあるが、分析できる人材が少ないこともあって、まだ成功事例は少ない。
語れる人が少なく、語れる内容もあまりない。取材する側にとっては手足が出せない状況だったが、ある人からこんな情報をいただいた。「発売初日の数字を見ただけで、その商品がヒットするかどうかが分かるんだって」と。そんなバカな……と思ったが、よく聞いてみると、データを分析して新商品を開発したり、売上増に貢献したりしているそうだ。
その企業名は「ローソン」。同社が扱う「Ponta(ポンタ)カード」のデータを活用して、さまざまな取り組みを行っているそうだ。早速、本社がある大崎(品川区)に足を運び、分析企画部の倉持章部長に話を聞いてきた。全3回でお送りする。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。
→なぜ発売初日で分かるの? ヒット商品を見分けることができるワケ(1)
→第2回、本記事
お客の購買行動が分かった
土肥:「発売初日の数字を見ただけで、ヒット商品になるかどうかが分かる」――。前回、倉持さんからこのようなお話をおうかがいしました。倉持さんは怪しい占い師ではありませんので、根拠もなく「未来はこうなる!」と話されているのではありません。もちろん博徒(バクチで生計を立てている人)が言う「丁か半か!」のように「売れる! 売れない!」と運任せに叫んでいるわけでもありません。
ローソンが扱うPontaカードのデータを分析すれば、お客が「いつ・どこで・どんな人が・何を・何度買ったのか」が分かるようになったそうです。特に、1人のお客が繰り返しその商品を買う割合を示す「リピート率」に注目していて、その数値が高ければヒット商品になりやすい。前回は発売日から1週間以内で「売れるか、売れないのか」の判断ができるという話をおうかがいしましたが、ヘンな動きをする商品とかあったりしますか? 例えば、あまり売れてないのに、リピート率はそこそこあるといったモノが。
倉持:ありますね。下の図を見ていただけますか? これは関東で販売されているチルド和洋菓子のトライアル率(期間中に1回だけ買った人の数値)とリピート率の結果です。10月30日から11月5日までのもので、点線は平均値。右上にある点はよく売れている商品になりますが、何だと思いますか?
土肥:え? なんだろう? ローソンといえばロールケーキのイメージが強いので「プレミアムロールケーキ」じゃないですか?
倉持:残念ですね、不正解。
土肥:ちょっと分からないですね。広報のSさん、分かりますか?
Sさん:も、もちろん分かりますよ。私はお店で店長を経験していましたからね(キリッ)。
土肥:じゃあ、なんですか?
Sさん:シュ、シュークリームですか?
倉持:正解!
Sさん:ほっ。
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