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第4回 ステマかどうかなんて関係ない【連載】インターネット時代の企業PR(1/2 ページ)

少しでもステマだと疑われるようなコミュニケーション方法は採用するべきではない。企業コミュニケーションにおいて重要なのは、結局、生活者との良好な関係作りに寄与するコミュニケーションかどうか、あるいは、生活者に好かれるようなコミュニケーションかどうか、ということなのである。

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単なる記事掲載の獲得では意味がない

 「第3回 クチコミマーケティングを巡る残念な2つのこと」の最後、TPOに応じた最適な表現を無視し、企業発の一方的なメッセージを掲載させようというパブリシティが横行していると書かせていただきました。

 企業が用意したメッセージ、例えば、商品名や商品の概要、宣伝文句などが“一方的に発信されることが当然”だというコンセンサスがある広告と違い、ニュースメディアの記事やテレビ番組、ブログの記事などは、広告主ではなく記者や番組制作者、ブロガーによって作られており、通常、宣伝文句などは取り扱われないというコンセンサスがあります。宣伝文句が取り扱われないことが当然だとされる場で宣伝文句が発信されると、受け手の側にはどうしても違和感が生じてしまいます。場合によってはその宣伝の主体である企業や団体に対する敵意が生まれてしまうかもしれません。ですから、宣伝文句をそのまま発信させるようなパブリシティは普通行われない……はずなのですが、最近では雑なパブリシティもまま見られるようになってきているようです。

 なぜこういうことが起こるのでしょうか。

 一言で言うと、目的を誤っているからにほかなりません。

 パブリシティとは、企業やその商品/サービスについて、ニュースメディアなどに取り上げてもらうための活動であり、この活動自体の目的が記事掲載や番組での露出の獲得にあることは間違いありません。

 が、ここで忘れてはならないのは、パブリシティが企業と公共との良好な関係作りを意味するPR=パブリックリレーションズに属する活動であるということです。つまりパブリシティ活動の目的を正確に言い表すならば、「公共との良好な関係作りに寄与する記事掲載や番組での露出の獲得」ということになるでしょう。企業発の一方的なメッセージを掲載させようというパブリシティには、この目的の前半部分が欠けています。

表示されても、クリックされてもPRとしては失敗ということもある

 公共との良好な関係作りとは、ありていに言えば「好かれること」ではないでしょうか。PRは好かれるための活動と言い換えることもできそうです。

 にもかかわらず、PRと称して、嫌われそうな、とても好かれそうにない企業コミュニケーションが行われる例はあとを絶ちません。

 例えば、生活者の邪魔をしてまで自社のメッセージを発信しようというコミュニケーション、誤ってクリックさせるような広告リンク、何のアクションもしていないのに勝手に記事の上に覆いかぶさるような広告ビジュアルなどがこれにあたります。スマートフォン向けのWebページで記事を読んでいる時にいきなり文字の上に広告バナーが現れてイライラしたり、タップしようとした瞬間に突然現れた広告リンクを意図せず踏んでしまい、舌打ちをしながら元のページに戻ったりした経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

 広告を出している企業にとっては「1表示獲得した!」「1クリック獲得した!」ということになるのかもしれませんが、その1表示、1クリックによって生活者がどのような思いをしたのかを推し量れば、とてもPRの効果があったとは言えないでしょう。

 ある著名な翻訳ソフトウェアのPR活動の話です。もともとその翻訳ソフトは品質に定評があったのですが、ある頃から他の無料ソフトウェアのインストールの際にその翻訳ソフトのブラウザツールバーも同時インストールされるという施策を行うようになりました。

 この施策でその翻訳ソフトはどのようなPRができたのでしょうか。

 詳しいデータはないのですが、その翻訳ソフトが有名になり、ブラウザツールバーのインストールが増えたことは確かだと思われます。が、それ以上にその翻訳ソフトの悪名を垂れ流すことになってしまいました。

 生活者にとってみれば、自分のパソコンの設定を勝手に改ざんされ、不要なブラウザツールバーを押しつけられたということになります。案の定、掲示板やソーシャルメディアでは不埒な翻訳ソフトとして語られるようになりました。翻訳やブラウザツールバーの品質どうこうではありません。パソコンの設定を勝手に改ざんし、不要なブラウザツールバーを押しつけるというやり方がまずかったのです。

 今ではその翻訳ソフトの名前を検索すると、「うざい」「消し方」「スパム」「ウイルス」などの文字が関連キーワードとして検索結果画面に表示されるようにまでなっています。

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