BtoB企業がソーシャルメディアを使う意味と活用方法:BtoB企業でもソーシャルメディア活用は必要?
消費者向け商品を展開する企業でソーシャルメディアをうまくマーケティングに活用した事例が多く見られるようになってきました。一方、BtoB企業のソーシャルメディア活用事例はまだまだ少ないのではないでしょうか。本稿ではBtoB企業がソーシャルメディアを活用する意義を事例と共に考えます。
企業がソーシャルメディアを使って成功した事例は、ここ数年で飛躍的に増えています。皆さんもいくつかの会社の名前を頭に思い浮かべることができるのではないでしょうか。しかし、日本ではBtoB向け商品を展開する企業にとって、ソーシャルメディア活用に二の足を踏むケースが増えています。今回は、そんな対企業のビジネスを展開する企業にとっての、ソーシャルメディア活用の意義について考えていきたいと思います。
ソーシャルメディアを使う理由
まず考えなければいけないのは、ソーシャルメディアによって実現する「目標」です。商品単価あたりの価格が高い商材/サービスでは、SNSの投稿“のみ”を引き金にして商品の購入まで結びつくケースはほとんどないでしょう。そのため売り上げへの貢献が数字として見えにくく、敬遠する場合が多いのではないでしょうか。また、ターゲット層の母数が少ないため、フォロワーやファン数が思ったように伸びず、運用に前向きになれないのではないかと思います。
しかし、ソーシャルメディアを活用して得られる効果は多様です。企業としては売り上げを追求することは当然ですが、企業活動のすべてが直接売り上げに結びついているわけではないのも事実。例えば、広報やCRMは、直近の数字にはならなくても後々の売り上げに貢献するのではないでしょうか。そういったアプローチをFacebook上で実行することは、決して無駄にはなりません。LTV(生涯顧客価値)という観点から考えれば、ロイヤルカスタマーを作り上げることは多くの企業にとって優先順位の高い課題ではないでしょうか。例えばデルは「Delll Enterprise」というFacebookページでさまざまなコンテンツを準備するなど、あらゆる手段でユーザー体験を高める努力をしています。そのどれもが「この商品を買ってください」というプッシュ型ではなく、プル型の表現/コミュニケーションとなっています。
アプローチの方法
では、どうやって自分たちの魅力をソーシャルメディア上で表現すればよいのでしょうか。ここからはいくつかのポイントで、そういった施策について考えていきます。
技術を見せる
商品/サービスの裏側にある技術の部分は、普段は顧客に見せる機会が少ない部分です。Facebookでは、そういったバックボーンになるところを披露していくことで、自然と自社の技術力を理解してもらうことにつなげることができるようになります。製品が作られる様子を紹介したり、実際に技術者が顔を出して「自分の言葉」で説明したりすることで現場の声を伝えることができますね。
ノウハウを教える
顧客と商品が接するタイミングが少ないことは、ビジネス向けのサービスを展開している方の悩みだと思います。SNS上で、例えば商品の使い方について簡単な動画をアップしたり、簡単な図にして説明することで、お客さまとの接点を生み出すことができます。
また、現場の人間しか知らない特別な情報を届けたり、実際にSNS上で顧客サポートのように質問へと対応したりすることで、お客さまのロイヤルティ向上へとつなげることもできます。
社内の雰囲気や社員の人柄を伝える
商品/サービスが優れていることは前提となりますが、大きな買い物ほど売り手の人となりが購入を後押しすることは、多くの方がご経験していると思います。直接、顧客と接する機会が少ないことを考えると、BtoB企業にとってソーシャルメディアは絶好の「社交の場」となり得ます。商品の説明だけでなく、社内の紹介や展示会のレポートなど、普段の姿を見せることで、顧客との距離を縮めていくことができるのではないでしょうか。また、米国の事例ではサポートセンターの役割をSNSに持たせる企業が増えています。苦情を伝えられたポイントで真摯に対応すれば、その顧客をロイヤルカスタマー化することも可能です。お客さまとの接点を大事にするのと同時に、その数を増やしていくことも必要になります。
最後に
企業のソーシャルメディア活用は業態や商品の価格帯、ターゲット層など、多くの条件によって目指すべき方向性が変わります。また、目的と投資対効果を考えて、ソーシャルメディアを「使わない」という考え方もあり得ます。しかし、選択肢に入れないというのは、大きなチャンスを逃している可能性があることも事実です。チャンスを目の前にした時に「何をすれば良いか分からない」という状態にならないためにも、しっかりとソーシャルメディアを考えていく必要がありますね。
※この記事はSocialMedia360.jpの「BtoB企業がソーシャルメディアを使う意味と活用方法」の原稿を一部修正して転載しています。
Copyright © 2015 TAM inc. All Rights Reserved
関連記事
- 【連載】日本の未来を切り拓くBtoBマーケティング:第3回 売れない原因を突き止める方程式
「売れない原因」を探すことからマーケティングの旅は始まります。営業スキルなのか? 価格なのか? 流通チャネルなのか? 今回は売れない原因を突き止める方程式を解説します。 - 【連載】リードナーチャリングは顧客のキモチに立って:第2回 調査データから読み解くBtoB商材の導入検討に関する新事実
「過去に営業に来られた」だけでは製品選定の候補に挙げない、と回答する企業が多い一方、「情報収集、課題形成において参考になった業者/企業」を(製品選定の)候補として挙げる企業は3分の1以上もいる――。アンケートが明らかにする顧客のキモチ。 - 【連載】オンラインとオフラインで考えるリードマネジメント:第2回 「売り上げに直結させる」ためのマーケティングデータ管理
集めたリードは果たして営業が使える形で管理されているだろうか? リードが使われる意味を考えれば、収集段階で行うことは自ずと明らかになる。効率的な管理を前提としたリードの取得方法と管理ノウハウを考える。 - 【連載】日本の未来を切り拓くBtoBマーケティング:第2回 設計図のないビル工事 〜パッチワークでは結果は出ない〜
10階用の基礎の上に30階建てのビルを建設するのは「無理」である。10階建てのビルのために30階用の基礎を作るのは「無駄」である。ビルの工事ならありえないことだが、日本のマーケティングではよく起きている現実である。 - BtoBマーケティング活動状況に関するアンケート調査:国内のBtoBマーケティング領域、リード評価や育成に課題、シャノン
シャノンは8月29日、マーケティング/販促担当者を対象としたアンケート調査の結果を発表した。国内のBtoBマーケティング領域においては、リードの評価や育成に課題があると指摘する。 - 【連載】基礎から理解するインバウンドマーケティング:第2回 インバウンドマーケティングの全体像を捉える
「基礎から理解するインバウンドマーケティング」第2回では、インバウンドマーケティングの構造を考える。全体を「見つけられる」「期待を得る」「信頼を得る」という3つのステップに分けると理解しやすい。 - 【連載】マーケティング7つの法則:#4 数字が大事
「数字」という切り口でマーケティングを考える。なぜマーケティングには数字が重要なのか。マーケティングとは、最終成果(売り上げ)を導くためのさまざまなプロセスのことであり、常に細かな進捗確認(=効果計測)が求められるからだ。