【第2回】サンダーバードプロジェクトが成功したわけ:ビッグデータ時代を勝ち抜くマーケティングコミュニケーション(3/3 ページ)
前回はマーケティング活動におけるデータ活用を論じました。今回は、それを具現化した大手企業の事例を紹介します。
Twitterの目的は、サンダーバードのキャラクター“ペネロープ”による情報発信と、その話題の拡散によってTHUNDERBIRDS Lab.の認知拡大を図ることです。この施策では拡散率(RT率)を重視しました。
この施策では、ペネロープをtwitterアカウントの情報発信者に設定し、「THUNDERBIRDS Lab.」に直接かかわる話題、サンダーバードそのものに関する話題、その日にあった出来事や時事ネタなどの日常的な話題という3種類の内容をつぶやきました。
話題別にインプレッション数およびRT率の違いを見ると、サンダーバードに関する話題が最も拡散しやすいことが分かりました。次に日常的な話題が続き、直接的なプロジェクト告知はあまりリツイートされないことが確認できました。このデータを受けて、本来伝えたい告知ネタと、ユーザーが好むサンダーバードネタ、時事ネタとの投稿量バランスを調整していきました。
このような取り組みの結果、オフィシャルサイトのUU数は約50万に達しました。オフィシャルサイトへの流入数という点ではやはり広告が効果を発揮しましたが、上記で説明した通り、ソーシャルメディア運用における細やかなチューニングも流入増加に一定の貢献をしたといえます。協和発酵キリンが実施したブランド認知調査の結果では、THUNDERBIRD Lab.認知者における抗体医薬の認知率は、全体平均の2倍以上高い82.8%となりました。「抗体医薬」というキーワードからの社名想起率も業界内で1位を獲得し、今回のプロジェクトが「抗体医薬に強みがある会社」という認知に貢献したといえます。
データ活用のポイントは「指標の構造化」と「スピード」
最後に改めて、マーケティングコミュニケーションにおけるデータ活用のポイントをおさらいします。
最も大切なことは、スピードです。今回のプロジェクトでは、分析に基づいてローンチ後2週間〜1カ月で軌道修正の方針を立てました。データの種類や量が多くなると、「何をどうやって使えばよいのか」という悩みがついてまわります。ですが、PDCAとは、そもそも小さな改善を積み重ねていくことに意味があるもの。だからこそ、スピードを優先してできることからやってみる「スモールスタート」の姿勢が重要です。
また、スピードを担保する仕組みづくりも重要なポイントです。企業の規模が大きくなればなるほど、社内で色々なデータが分断されて存在していることも多いのではないかと思います。社内にある各種データを統合する仕組みやルールを整備することはとても大切です。そのようなことを意識しながらデータ活用に取り組んでいくことで、自然とナレッジも蓄積され、より精度の高いPDCAを実現できるようになっていくでしょう。
著者プロフィール
折舘 洋志
ビルコム株式会社 Research & Analytics Div. マネージャー
大学卒業後、コンサルティング会社にて、数多くの企業のブランド戦略立案に携わる。2010年ビルコム株式会社に入社。Research&Analytics Div.にて、国内外大手クライアントのマーケティング戦略におけるKPI設定から、デジタル領域の定量・定性データの分析までを担っている。
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