【第2回】サンダーバードプロジェクトが成功したわけ:ビッグデータ時代を勝ち抜くマーケティングコミュニケーション(2/3 ページ)
前回はマーケティング活動におけるデータ活用を論じました。今回は、それを具現化した大手企業の事例を紹介します。
PDCAをどう回したか
“THUNDERBIRDS Lab.”は2011年5月にローンチしてから半年が過ぎました。その間にどのような観点で施策の軌道修正を行ってきたかについてご紹介します。
オフィシャルサイト
今回のプロジェクトの中心に据えられているオフィシャルサイトの目的は、ユーザーが抗体医薬への理解を深めることです。そのため、この施策の効果を測る上ではユーザーがどれだけコンテンツに触れていたか(滞在時間)という点を重視しました。
流入元サイト別の滞在時間を比較すると、広告流入よりもソーシャルメディア経由での流入のほうが圧倒的に滞在時間が長いことが分かりました。これは、ソーシャルメディアでユーザーと密にコミュニケーションを図り、関係性を築けていたことによって、オフィシャルサイトに誘引後、スムーズにコンテンツに興味を持ってもらう土壌が出来ていたためと考えられます。
この結果を受けて、抗体医薬の理解という本来の目的に対しては、ソーシャルメディアの効果が高いと判断し、プロモーション予算の配分を一部ソーシャルメディアにシフトさせました。その中で、Facebook内広告も新たに活用しました。またソーシャルメディアでのコミュニケーション量も当初の予定より増やし、ユーザーとのエンゲージメント構築のさらなる強化を目指しました。
Facebookページ
Facebookページの目的は、サンダーバードを通してコンテンツの親しみやすさを訴求、ユーザーとのエンゲージメントを構築し、オフィシャルサイトへの誘導を図ることです。そのためFacebookページでは、コミュニケーションの活性化を重視した指標管理を実施しました。
Facebookユーザーの方はご存知かもしれませんが、Facebookには「ニュースフィード」という新着情報のお知らせ画面があり、ニュースフィードの中にも「最新情報」と「ハイライト」の2種類が存在します。
最新情報は友人やFacebookページの更新情報が全て時系列で並びます。一方、ハイライトでは、ユーザーにとって、より重要と思われる更新情報が選別されて表示されます。ニュースフィードの初期設定では、ハイライトが表示されるようになっています。つまり、Facebookページでコミュニケーションの活発化を図るためには、ユーザーのニュースフィードにおいて、いかにハイライトでの露出を高めるのかという視点が重要になってくるのです。
そして、ハイライトに表示されるコンテンツの最適化を図るのが「エッジランク」と呼ばれるFacebook独自のアルゴリズムです。エッジランクは以下の数式で説明されます。
これによると、エッジランクの影響要因には以下の3つの要素があります。
affinity score(親密度):記事の投稿者と、ユーザーとの親密度
閲覧やメッセージの送受信、Like、コメントなど、ユーザーの行動履歴が評価をされます。
weight(ウェイト):記事への行動、コミュニケーション、アクションの重要度
例えば、Likeボタンを押すだけよりも、コメントを投稿したほうが親密度に貢献するなど、ユーザーのコミットメントの高さが評価の観点となります。
time(時間):記事の時間経過による重要度
新しい投稿の方が、重要度が増します。
これらの要素を勘案すると、(1)いかにユーザーから反応してもらえる内容を投稿するか、(2)いかにユーザーの滞在時間に合わせて投稿するか、という視点が求められるということです。
私たちが着目したのは、まずコンテンツの投稿時間です。投稿時間によるエンゲージメント率(ここでのエンゲージメント率とは、投稿したコンテンツごとのインプレッションに対する反応率を示します)の違いをみると、以下のグラフの通り、午前中(10時-12時)と夜(18時-21時)に高いことが分かりました。
ターゲットである40〜50代男性ビジネスパーソンの生活パターンを鑑みれば、日中の仕事時間よりも、ランチタイム前や仕事終わりにFacebookページに来訪し、ちょっとしたコミュニケーションを取るというのは腑に落ちます。このデータから、ターゲットがよくサイトをチェックしている上記の時間に合わせて、コミュニケーション頻度を高めるよう配慮しました。
次に、投稿内容によるエンゲージメント率の変化を比較しました。その結果、テキストのみの投稿より画像を入れた投稿の方が、ユーザーのエンゲージメント率が高いことが分かりました。しかも、画像を1枚いれるよりも複数枚投稿した方が、反応率が高まりました。このデータから、画像の投稿数を増やすよう調整を図りました。
Facebookページを制作するにあたっては、Facebookの仕様確認も重要なポイントです。今年9月に行われたFacebookの開発者向けカンファレンス「f8」では、オープングラフ機能のアップデートによる、ソーシャルアプリとFacebookの連携強化が発表されました。今後は、ボタンを押さずとも、アプリ上でのアクティビティ(記事を読んだ、ゲームをした、音楽を聴いた、など)の内容が自動的に投稿できるようになります。これまではソーシャルグラフへの情報発信は「いいね!」や「シェア」ボタンを押すことが中心でしたが、ボタンを介さずとも、より具体的な内容を投稿できるようになることで、ユーザーとFacebookアプリ、ユーザーとユーザーの距離がより近くなるといえます。
企業にとっては、単にFacebookページを「いいね!」してもらうだけではなく、ユーザーにいかに多くのアクションを起こしてもらえるかが重要になるでしょう。このようにFacebookは仕様のアップデートがたびたびありますので、そのキャッチアップも求められるのです。
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