先進国企業の事例から見えるソーシャルメディアの特性:ソーシャルマーケティング新時代(3/5 ページ)
成長著しいアジアの新興国では、ソーシャルメディアが新たな情報インフラとして拡大している。日本企業がソーシャルメディアを活用して市場での優位性をどう確保していくべきか。欧米企業の取り組みを例に探る。
(1)あらゆる企業活動のリアクションとレスポンス
ソーシャルメディアの1つの特性として、企業の取り組みやアクションに対し、消費者や関係者からのリアクションやレスポンスがある点は誰もが理解していることだろう。しかし、ここで再認識しておくべきことは、企業のソーシャルメディア上の取り組みやアクションに対してのみリアクションやレスポンスがあるのではなく、企業活動の全てに対してソーシャルメディアを用いたリアクションやレスポンスがあるという点である。
すなわち、テレビCMを見てそれが「カッコいい」とか「分かりにくい」とか、そういった感想を気軽にソーシャルメディアを用いて視聴者が発信する。あるいは、就職面接での従業員の態度について、ソーシャルメディアを用いて学生が意見を発信する。
このように、あらゆる企業活動のリアクションやレスポンスがソーシャルメディアを用いて行われるという特性を見れば、ソーシャルメディアをマスメディアと横並びにして捉えるのは間違いであることが分かるだろう。「マスメディアは一方向で、ソーシャルメディアは双方向」という説明をたびたび耳にするが、これもソーシャルメディアの特性について誤解を生じさせかねない。ソーシャルメディアを用いるというのは、企業として新たなマーケティング手段を手に入れると同時に、あらゆる角度からのリアクションやレスポンスを促すということなのである(図2参照)。
これには、言うまでもなく大きな危険性がある。先述のFordの事例のほかに、ソーシャルメディア活用で一定の成果を挙げている企業は、単体でのプロモーション「方法」や「手段」として捉えずに、組織全体の仕組みの中に組み込んでその危険性を受容し、対応しようとしている。
一方で失敗したと言われる事例を見ると、ソーシャルメディアでの取り組み内容が組織内で十分に共有されず、あらゆる企業活動に対するリアクションやレスポンスとして、ソーシャルメディアを通じた非難の声が浴びせられ、Webサイトが炎上する事態に至るものすらある(図3参照)。つまり、企業の一挙手一投足がソーシャルメディアを用いて話題になる可能性があるのだ。企業は縦割り的にメディアやチャネル、活動を捉えるのではなく、総合的に市場と向き合わなければならないのである。それができなければソーシャルメディアの餌食になるだけだ。
しかし、ネガティブな側面ばかりではない。企業活動では、企業側が認識していない点が評価されることも少なくない。企業として当たり前に実行していた運営管理やサービスが消費者に感動を与え、それがソーシャルメディアを通じてフィードバックされることもある。そういう意味で、ソーシャルメディアは企業を多面的に映し出す鏡のような役割を果たすようになるだろう。
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