楽天経済圏を支えるアクセス解析の全貌(後編)(4/4 ページ)
アクセス解析を浸透させるには、専門部署がそれぞれの事業で直面するアクセス解析の問題を解決し、無駄をなくしていくことが重要だ。40近くのオンライン事業で構成される「楽天経済圏」におけるアクセス解析の文化をどう浸透させていったかを振り返る。
可能になったカスタム計測
SiteCatalystの導入・活用から約半年が経ったころ、従来は不可能だった指標の計測や分析が可能になり、楽天グループ内でそれを横展開できるようになった。分析手法は標準化し、いつでも活用できるように引出しにしまってある。その計測に必要な実装は完了している。参考にできる社内事例も増えてきた。具体的には各事業において、以下の項目の計測が可能となった。
項目 | 成果 |
---|---|
グループ内回遊とコンバージョン | 楽天グループ全体のWebサイトにおける横断的なアクセス、購買などのコンバージョン追跡 |
入力フォーム最適化 | 離脱した項目やエラー発生項目の特定 |
ABテスト | 単純な表示切り替えではなく、条件指定によるターゲティングや統計処理がリアルタイムで実行可能に |
Flash計測 | インタラクティブな機能の利用状況が分かるようになった |
Salesforce CRMとの連携 | オフラインでの審査結果をSiteCatalystに取り込むことによる広告効果 |
Twitter効果測定 | フォロワーやRTの数を記録し、トラフィックやコンバージョンと対比 |
動画計測 | 動画の再生時間やコンバージョンへの貢献度の算出 |
スクロール解析 | Webページがどこまで表示されたかを考慮したエリアの効果測定 |
最後に
約40の事業部が展開する楽天のオンラインサービス。その運営形態は幅広く、運営期間は1年未満から10年以上まで、運用に必要な人員の規模は数人から数百人規模とさまざまだ。
アクセス解析ツールの導入は、事業やビジネスの成果を仮説に基づいて検証し、次の施策の精度を高めることにつながる。楽天市場や楽天トラベルのような成熟したサービスでは、新手法の開拓や効果測定の運用効率改善、統計処理による解析精度の向上などが求められている。最先端の考え方や技術を応用する上で、アクセス解析は極めて重要な取り組みになってくる。
アクセス解析は、ビジネスの改善に必要なことを愚直に続ける取り組みであり、試行錯誤に終わりはない。アクセス解析で得たノウハウや仮説の積み重ねが、結果としてビジネスの底上げにつながるからだ。
楽天はアクセス解析を徹底的に活用することで、スピード感が求められるインターネットの世界で常に最先端を走り、世界一を目指し続けていく。
著者プロフィール 清水誠(しみず・まこと)
楽天株式会社でアクセス解析とWeb最適化の全社的な活用促進を推進している。1971年生まれ、仙台出身。1995年よりネットサービスの立ち上げやユーザビリティ、情報アーキテクチャに関するコンサルティングに従事。2004年からは事業会社にてWebやITを活用したプロセス改善を実践している。アクセス解析イニシアチブ会員。執筆・講演も手掛ける。個人ブログは「実践CMS★」
関連キーワード
Web解析 | アクセス解析 | 楽天 | 最適化 | 要件定義 | 標準化 | KPI(Key Performance Indicator) | Omniture SiteCatalyst | PDCA
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 楽天経済圏を支えるアクセス解析の全貌(前編)
企業において、経営視点を取り入れたデータ中心のWeb戦略が不可欠になりつつある。40ものオンライン事業を手掛ける楽天は、アクセス解析を浸透させる組織を作り、ビジネスの成功に結び付けている。楽天の取り組みの全貌を伝える。 - Web2.0時代の終焉
戦略コンサルタントが悠長に分析し、不明確な指針をつきつけられて企業が頭を抱えながら理解するといった時間はもうない。