楽天経済圏を支えるアクセス解析の全貌(前編)(3/3 ページ)
企業において、経営視点を取り入れたデータ中心のWeb戦略が不可欠になりつつある。40ものオンライン事業を手掛ける楽天は、アクセス解析を浸透させる組織を作り、ビジネスの成功に結び付けている。楽天の取り組みの全貌を伝える。
チームの存在意義を名前に込める
予算とツールはそろった。次の目的は、SiteCatalystの導入・活用を支援する人員とノウハウを集めることだ。2008年末、編成部主導でチーム作りに着手した。
一番こだわったのは「世界に通用するチーム」の名付けだ。ミッションを正確に表すチーム名は、社内での存在意義の確立やメンバーの誇りになると考えた。編成部の役割は、アクセス解析の全社的な標準化と、ツールの導入・活用を推進することだ。解析やレポート作成の代行ではない。ここで「推進」という1つ目のキーワードが挙がった。
また編成部の価値は、オンライン事業の効果を明らかにし、「仮説・実行・検証・仕組み化」という楽天文化を実践することだ。そのためには、ツールの潜在能力を引き出すノウハウ、効果測定や仮説検証の考え方や意識の啓蒙(けいもう)、他事業部も真似できる実践的なテンプレート、事例集、自社向けに特化した教育プログラム――が必要だった。これらの役割を集約する「最適化」が2つ目のキーワードになった
そして楽天のWebサイトを訪れるユーザーの目的は、情報収集や商品の購買である。チームのミッションは、彼らの振る舞いを分析・理解し、ビジネスを成功に導くことである。「アクセス」を解析するだけではない。そこで世界で一般的な名称になってきた「Web解析」(Web Analytics)という単語を最後に選び、「Web解析・最適化推進チーム」という名称が最良だと判断した。
最終的には社内用語との整合性を取り、「アクセス解析・最適化推進チーム(「Web Analytics & Optimization CoE)」となった。英語表記のCoEは「Center of Excellence」の略で、既存の組織を超えた横断的な専門家集団になるという意味を込めている。
今回は楽天のアクセス解析における最適化の重要性と、アクセス解析の文化を企業に作るためにこだわった部分を紹介した。次回は、半年間で一気に全サイトにSiteCatalystを導入した取り組みを取り上げる。
関連キーワード
Web解析 | アクセス解析 | 楽天 | KPI(Key Performance Indicator) | Omniture SiteCatalyst | 最適化 | 経営 | マーケティング | cookie | 三木谷浩史
著者プロフィール 清水誠(しみず・まこと)
楽天株式会社でアクセス解析とWeb最適化の全社的な活用促進を推進している。1971年生まれ、仙台出身。1995年よりネットサービスの立ち上げやユーザビリティ、情報アーキテクチャに関するコンサルティングに従事。2004年からは事業会社にてWebやITを活用したプロセス改善を実践している。アクセス解析イニシアチブ会員。執筆・講演も手掛ける。個人ブログは「実践CMS★」。
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