LTVが「1.5倍」に ミツカン「腸活コミュニティ」が実証した、値上げ時代に選ばれ続ける方法(2/2 ページ)
ミツカンの新ブランド「Fibee」(ファイビー)はファンコミュニティが「Fibee腸内会」を運営している。コミュニティ参加者のLTVは、1.5倍。コミュニティへの投稿から、ブランド担当者が想定外のインサイトを得ることもあった。
「LTV1.5倍」 想定外のインサイトの発見も
Fibee腸内会を立ち上げてから1年半が経ち、いくつかの成果も見えてきた。2025年9月から2026年4月の購入額で比較してみると、コミュニティに参加している人のLTVは、参加していない人に比べ、1.5倍高いことが分かった。
また、コミュニティ内では、ファンが自発的に商品を薦めたり、ユーザー同士の交流をきっかけとした購買があったりと、ファンがファンを生むポジティブな循環の兆しが見えているようだ。
そうは言っても、当然、腸民の中にも温度差はある。投稿頻度が高いからと言って、必ずしも購買頻度や購入額が大きいわけではない。逆に、コミュニティ内の活動量が少なくても、定期購入にプラスしてコンビニでも商品を購入するようなロイヤル顧客もいる。
同社は、Fibee腸内会を紹介するチラシを腸民と一から考えたり、商品開発の過程で数人の腸民に試食してもらい味を改良したりして、“ファンを大切にする姿勢”を見せることで、一般顧客をロイヤル化し、ファン・ロイヤル顧客をスーパーロイヤル化させたいと考えている。
そのために、白岩氏は全てのユーザー投稿に目を通し、直接コメントを返す。そしてファンミーティングで対面した際に「あの投稿、すごく盛り上がっていましたね!」と声をかける。そこには「既存顧客一人一人に対する理解を深め、それをブランド戦略やマーケティング活動に還元していくことが、売り上げ・利益の最大化につながる」という信念がある。
一人一人の顧客理解を深めることで、見えてきたこともあった。Fibeeの主力商品であるワッフルは、発売当初、“罪悪感のないおやつ”として受け入れられるだろうと考えられていた。しかし、実際に毎日ワッフルを食べているファンにFibeeがどんな存在かを聞いたところ「おやつというよりも“満足感のある軽食”だ」という答えが返ってきた。「こうしたファンの声を商品開発やライブ配信の訴求などにすぐ活用できるのも、コミュニティの良さのひとつだ」と白岩氏は笑顔を見せた。
なぜ今ファン戦略が経営のアジェンダなのか
Fibee腸内会は、Asobicaが提供するデータプラットフォーム「coorum」(コーラム)を活用して構築されている。なぜ今、企業経営においてファン戦略が重要視されているのだろうか。その理由について、Asobicaの今田孝哉氏(代表取締役社長 兼 CEO)は「浅く広く新規顧客を獲得し続ける従来のマーケティングモデルに限界が来ているからだ」としたうえで、その背景を次の3つにまとめた。
1つ目は、原材料やエネルギー価格の急激な上昇や人件費の継続的な高騰に起因する「コストの高騰」(利益の圧迫)だ。ただでさえコストが上がって利益率が下がっているのに、広告宣伝費を大きく投下するのは難しい。
2つ目は「人口減少」(市場・顧客母数の縮小)だ。いくら新規顧客を開拓したくても、そこに人がいなければ、どうしようもない。そして3つ目は「マス施策の限界」(獲得手法の限界)である。メディア接触の多様化が進み、“マス(大衆)”が消失した今「ここに出せばみんなに見てもらえる」という単一の巨大メディアはもはや存在しない。
このような社会構造の変化の中で企業が生き残るには、一人一人の顧客と向き合ってファンを拡大し、顧客単価や利用頻度を向上させるしかない。だからこそ、ファンとつながり、顧客の声を「商品開発・売上向上・経営KPIの改善」に生かすコミュニティマーケティングが再注目されているのだ。
以前のコミュニティマーケティングは一部門による打ち手に過ぎなかった。しかし、今やすでに多くの企業では“ファン戦略”として経営アジェンダに組み込まれている。
かつて「顧客の声を経営に生かす」と、どこか夢物語のように語られていたことが、AIをはじめとするテクノロジーの進化によって実現できるようになった。今、顧客は単なる「商品を買ってくれる人」ではなく「ブランドを共に育てていくパートナー」となった。この発想の転換をもとに、顧客との関係性を描き直すことで、厳しい局面であっても“選ばれ続けるブランド”になれるのだろう。
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