“いつの間にか富裕層”を狙え JCBがプレミアムカードだけで用意する「特別体験」:クレカ値上げが相次ぐ中での独自戦略(3/3 ページ)
富裕層の在り方に変化がみられる。40〜50代の会社員が、株式や確定拠出年金の運用益で気付けば資産1億円を超えている──NRIはこうした層を「いつの間にか富裕層」と呼ぶ。クレジットカード各社は富裕層向けサービスの強化に動いている中、独自の戦略を打ち出しているのがJCBだ。
定員は約30人のみ 非公開「Special Offer」の設計思想
4つの新サービスとは別に、「Special Offer」という非公開の枠もある。年間利用額上位の会員だけに届く、招待制の特別体験だ。
内容はほとんど公開されていない。堤氏が明かしたのは、有名な花火大会や祭りの特別観覧席といった事例だ。
抽選制ではあるが、「希少性のあるイベントはどうしてもキャパの問題がある」と堤氏は説明する。当選しなくても「いつか届くかもしれない」という期待感が、カード利用のモチベーションになるというわけだ。
【お詫びと訂正:2025年12月26日午後3時、「Special Offer」の内容に関する記載を一部修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】
なぜ非公開にこだわるのか。「非公表だからこその優越感がある」と堤氏は言う。加えて運営上の理由もある。「少人数しか呼べないイベントを大々的に告知するわけにはいかない」。希少な体験を、それを求める人だけに届けるためには、あえて公開しない方がいいのだ。
興味深いのは、この非公開性自体がマーケティング装置として機能している点である。JCBはSpecial Offerの「存在」だけは公表している。ただし内容は見せない。「『なんか分からないけれど、いっぱい使ったらいいことがありそう』と思ってもらう」と堤氏は狙いを明かす。あえてモヤモヤさせることで、利用意欲をかき立てる仕掛けだ。
「意味ある消費」の時代へ
富裕層向けサービスで今後注力する領域を尋ねると、「ただのぜいたく体験ではなく、意味ある消費」という言葉が返ってきた。
単なる高額消費への回帰ではない。「自分にとって価値があるもの」「ここでしか得られないもの」への支出を厭わない──そういう選別的な消費行動が広がっている。予約困難店へのアクセス、テーマパークのアトラクション貸切、非公開の祭りの特別観覧席。いずれも「お金を出せば誰でも買える」ものではない。
堤氏は音楽やスポーツの領域にもニーズを感じていると話す。「JCBは日本で一番の老舗カード会社。いろんなところと組んで、スペシャルなものを出していきたい」。パートナーシップを武器にした「お金で買えない体験」の拡充は、今後も続くだろう。
ザ・クラスの年会費5万5000円は、アメックス・プラチナの16万5000円、三井住友Visa Infiniteの9万9000円、JAL Luxury Cardの59万9500円と比べれば控えめだ。だが「目指したくなるブランド」として、ゴールドやプラチナで実績を積んだ人が次のステージとして手にする——その設計に、JCBの戦略がある。
価格競争には乗らず、パートナーシップと非公開の希少体験で差別化する。「持っててよかった」と思える瞬間を、いかに設計できるか。その答えが、2025年のリニューアルに凝縮されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
野村が捨てた「資産3億円未満」を狙え SMBC×SBIが狙う“新興富裕層”の正体
SMBC×SBIが、「Olive Infinite(オリーブ インフィニット)」というデジタル富裕層向けサービスを開始した。野村證券をはじめとする大手証券会社が切った「1億〜3億円層」に商機があるという。
夫婦ともに「年収700万円」超 SMBC×SBI新会社は、なぜ“新興富裕層”に目を付けたのか?
SMBCとSBIホールディングスは「Olive Infinite(オリーブ インフィニット)」を、デジタル富裕層向けの革新的金融サービスとして開始する。「デジタル富裕層」とは具体的にどのような人々なのか。新サービスの狙いを聞いた。
NTT・楽天・ソフトバンクが「金融三国志」開戦か──通信会社の新戦局、勝負の行方は?
NTTがSBIホールディングスとの資本業務提携を発表し、通信大手による金融事業への本格参入が新たな局面を迎えている。ソフトバンクは三井住友カードとの包括提携でキャッシュレス最大手連合を形成。一方、楽天は独自の経済圏構築を貫く。「金融三国志」とも呼べるこの状態、勝ち抜くのはどの企業か。
DXの“押し付け”がハラスメントに!? クレディセゾンのデジタル人材育成を成功に導いた「三層構造」とは
昨今は人材獲得に苦戦する企業が多く、文系人材をリスキリングなどで育成し、デジタル人材に育てようとする動きが活発化しているが、クレディセゾンのCDOは「『トランスフォーメーションハラスメント』には要注意だ」と警鐘を鳴らす。「トランスフォーメーションハラスメント」とはどんなものなのか。DX時代の人材育成の本質とは何か。
