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「ChatGPTはブラックボックス」 見えない顧客行動、マーケターに残された打ち手とは?米Brazeトップに聞く(2/3 ページ)

最初の顧客接点が検索やSNSではなく、生成AIに置き換わったときに、企業のマーケティング戦略はどのように変わるのだろうか──。米Brazeのビル・マグヌソンCEOは、「ChatGPTはブラックボックスだ」と、消費者行動の可視性の低さを指摘する。

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“既存顧客”の重要性が増すワケ

 2025年10月6日、OpenAIは新たに「ChatGPT向けアプリ」という新機能を発表した。これはユーザーがChatGPTに話しかけた内容に応じて、ChatGPT内で別のアプリを呼び出せるというものだ。

 例えばユーザーがChatGPTに「Canvaアプリでプレゼン資料をつくってほしい」と依頼したとする。このとき、CanvaがChatGPT向けアプリを提供していれば、チャット画面の中でCanvaアプリが起動。そのままCanvaの機能でつくられたプレゼン資料を受け取ることができる──という機能だ。

 現在、ChatGPT向けアプリを提供している初期パートナーは、Booking.com、Canva、Coursera、Figma、Expedia、Spotify、Zillowの7社(現状、英語対応のみ)。年末までにさらに11社が加わる予定だとされている。

 加えて、2025年10月21日には、ChatGPTを搭載したブラウザ「ChatGPT Atlas」のローンチも発表された(現状、MacOS版のみ。近日中にWindows、iOS、Android版も公開予定)。

 GoogleがChrome(ブラウザ)からGemini(生成AI)へ拡張したのに対し、OpenAIはChatGPT(生成AI)からChatGPT Atlas(ブラウザ)へ拡張したというわけだ。

 こうなると、ますます厄介である。この先、人々がどこまでChatGPTに依存するかは読めないが、もしブラウザまでもChatGPTに置き換わると、企業が消費者行動を把握する難易度は、一層跳ね上がってしまう。「なぜか分からないけどChatGPT経由で商品が売れた」という事実だけが残る世界では、従来のデジタルマーケティングのセオリーが通用しなくなる可能性が高い。その影響はGDPR(General Data Protection Regulation、EU一般データ保護規則)によるCookie規制の比ではないはずだ。

 では、どうすればよいのか。マグヌソン氏は、「生成AIの普及により、ファーストパーティデータの価値が飛躍的に高まっている」と強調したうえで、「ファーストパーティデータを活用した“パーソナライズ”されたコミュニケーションを通じて、既存顧客のエンゲージメント強化に努めるべきだ」と説く。

 消費者がブランドと初めて接点を持つようなカスタマージャーニーの初期段階では、検索がChatGPTに置き換わる可能性が高い。けれども、それ以降の育成フェーズ(メールマガジンに登録したり、SNSアカウントをフォローしたり、アプリをダウンロードしたりして、“消費者がブランドとの関係構築を許容している状態”)になると、消費者の行動はこれまでと変わらないと推測される。

 確かに、旅行先にお気に入りのホテルがあれば、わざわざChatGPTに相談して比較せずとも、ホテルの公式サイトにアクセスして直接予約を取ったほうが早い。お気に入りの航空会社が決まっていれば、わざわざChatGPTに相談して比較せずとも、すでにスマホに入っている航空会社のアプリを開いて、次の予約を取るはずである。

 つまり、ブラックボックスでコントロールできないChatGPTをどうにかハックしてLLMO(大規模言語モデル最適化)で新規顧客の獲得を狙うよりも、まずは既存顧客がリピートしたくなるような仕掛けを強化したほうが、圧倒的に堅実だと言える。

 「ホテルや航空会社では、顧客に直接予約してもらうようなロイヤリティプログラムが進化しているが、昨今では、レストランも同様に、デリバリーアプリを経由するよりも、直接注文したほうが手数料が安くなるケースが多く見られる。これからのマーケティングは、自社へ直接アクセスしてもらうための取り組みに投資を増やす必要がある」とマグヌソン氏は語る。

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