「AI概要でサイト流入激減」は誇張? 米Googleが反論、その根拠は?:Social Media Today
Googleの検索機能に導入されたAI概要(AI Overviews)が外部サイトへのトラフィックを減らしているとの指摘に対し、同社は「懸念は誇張」と反論した。公式ブログでは「オーガニッククリックは安定し、質の高いクリックは増加している」と主張。しかし、ニュースメディアや調査会社のデータは減少を示しており、業界内で議論が続いている。
米GoogleのAI概要(AI Overviews)が外部サイト誘導を急速に減少させているというさまざまな報告がある。これに対し米Googleは「懸念は誇張されている」と反論した。
「AI概要でサイト流入激減」に対し、Googleが反論 理由は?
理由は、AI概要によってユーザーの満足度が高まり、Google検索結果から送られる総リファラルリンク数に有意な減少は見られないからだという。
もちろん、こうした発言はGoogleだからこそだともいえる。しかし同社の公式ブログによれば、そのような主張を裏付ける証拠は(少なくとも全体的なリファラル数に関しては)存在しないという。
Pew Research Centerの調査とGoogleの反論
Googleは次のように述べている。
全体として、Google検索からWebサイトへのオーガニッククリック数は、前年比で比較的安定している。さらに、平均的なクリック品質は向上しており、1年前と比べて“質の高いクリック”が増えている。“質の高いクリック”とは、ユーザーがすぐに離脱しない――つまり、そのサイトに興味を持っていると示すクリックを指す。このデータは、集計トラフィックの劇的な減少を示す第三者の報告と対照的であり、そうした報告はしばしば欠陥のある手法、限られた事例、あるいはAI機能導入以前に発生したトラフィック変動に基づいている。
Googleが特に問題視しているのが、こうした第三者報告の一つである米Pew Research Centerの調査だ。この調査は900人の検索履歴データを分析したもので、検索結果ページ(SERP: Search Engine Results Page)でAIによる要約を目にしたユーザーは、全セッションのうちわずか8%しか従来型の検索結果リンクをクリックしなかった。一方、AI要約を見なかったユーザーは、そのほぼ2倍にあたる15%の割合で検索結果をクリックしていた。

Google users are less likely to click on a link when they encounter search pages with AI summaries(「Google Says AI Previews Have Not Impacted Overall Referral Traffic From Search」Social Media Today)
これは検索行動の顕著な変化を示しており、この研究はGoogleのAI導入が持つ広範な影響の例として広く引用されてきた。しかしGoogleは、この調査は調査対象が少な過ぎるため、入力データが不十分だと批判している。
確かに、日々何十億もの人がGoogleを利用していることを考えれば、900人は小規模なサンプルであるといえる。しかし、傾向を示す参考値としては、少なくとも相対的なリファラル減少を示しているようにも思える。
AI概要の影響に関するGoogleの主張
だがGoogleは「そうではない」と主張する。
AI概要によって、人々はより多く検索し、より長く複雑な新しい質問を投げかけるようになっている。また、AI概要では以前より多くのリンクがページ上に表示されている。検索回数とリンク数の増加は、Webサイトが露出しクリックされる機会の増加を意味する。
つまりGoogleの見解では、AIプレビューはむしろリファラルトラフィックにプラスの影響を与えている。ただし、影響がゼロだとは言わず、こうも認めている。
「次の満月はいつ?」のように即答してほしい質問の場合、人々は最初の回答だけで満足し、それ以上クリックしないことがある。これはナレッジグラフやスポーツの試合結果といった他の回答機能でも同じだった。しかし、多くの質問では、人々は引き続きクリックしてテーマを掘り下げたり、さらに探索したり、購入を検討したりする。
Googleの主張の要点は、ある種のサイトではトラフィックが減少しているが、フォーラム、動画、ポッドキャスト、ブログ記事といった形態を持つサイトは、Googleからのアクセスが増えているという点だ。
人々は詳細なレビュー、独自の投稿、ユニークな視点、思慮深い一人称分析など、さらに学びを得られるWebコンテンツにアクセスする傾向が強い。こうした進化するニーズに応えるサイトは、この変化の恩恵を受けており、全体的にトラフィックが増加している。
とはいえ、こうした説明はAIプレビューや変化する検索行動に対応するため、サイトに盛り込むべき要素のヒントにはなるかもしれない。しかし、Googleはこれらの主張を裏付ける具体的データを公表していないことにも留意すべきである。
Googleは「全て順調であり、あなたのサイトはおそらくトラフィックを失っていない。もし失っていても他が得をしている」と言っているわけだ。つまり「Web全体としては良くなっている。不安を煽る必要はない」ということらしい。
第三者からのトラフィック減少に関する報告
だが、そうとも限らない。なぜなら、多くのサイトが実際にトラフィックを失っており、それが多くの企業に大きな影響を及ぼしているからだ。
Googleの主張に対し、複数のメディアの反論を以下にまとめた。
- WSJ報道:主要ニュースメディアでオーガニック検索トラフィックが減少
- Similarweb調査:HuffPostは過去3年間でトラフィックが半減、Business Insiderは55%減少
- Business Insider:2025年6月に人員の21%削減、理由の一つに「極端なトラフィック減少」を挙げる
- Digiday:AI概要導入後、ニュース検索のうちクリックにつながらない割合が56%→69%に増加
- Authoritas調査:検索結果1位のサイトがAI概要下に表示されると、約79%のトラフィックを失う可能性
ただし、Similarwebは2024年6月以降、AIからのWebサイト誘導が357%増加したとも報告している。これは、検索トラフィックが特定の大手パブリッシャーに集中するのではなく、再分配されているというGoogleの説明を裏付ける可能性がある。
それが報告されている損失を相殺できるかは不明だが、少なくともGoogleの主張を示す兆候にはなり得る。
とはいえ、懸念は残る。Googleの説明を前提にしても、多くのサイトが確かに不利益を被っており、トラフィック獲得方法の見直しを迫られている。
今後の影響と課題
現在、AI概要はデスクトップ検索の20%でしか表示されていない。今後対称が拡大すれば、Web全体への影響がどうなるのかという疑問も残る。
Googleは「Webのエコシステムを強く大切にしており、その影響について非常に注意を払っている」と述べているが、現時点では「心配する必要はない」主張している。
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