2025年は、2009年の世界金融危機以来初めて、従来型およびデジタルメディア全体で消費者の利用時間が減少する年になると予想されている。
米PQ Mediaによる最新の調査によれば、2024年における世界全体のメディア利用は前年比2.4%増加し、週平均57.2時間となった。この成長は主に、夏季オリンピックなどの大規模なテレビ中継イベントによるものとされる。しかしながら、この勢いは2025年には続かず、0.3%の減少が見込まれている。これは2009年以来初の減少である。
「2025年の減少は、デジタルメディアの成長によって従来型メディアの減少を補えなくなってきたことを示している。この40年間で新しいメディアプラットフォームやチャネルが多数登場し、メディア利用時間は大幅に増加してきた」と、PQ Mediaのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼調査部門責任者であるレオ・キヴィヤルブ(Leo Kivijarv)氏は述べている。
PQ Mediaが発行する「第12回 世界消費者メディア利用予測(2025〜2029年)」は、世界の主要市場における25種類のデジタルメディア・プラットフォームおよびチャネル、11の従来型メディア、11のハイブリッド型セグメント、7つの世代を対象に、過去の予測データや多数の情報源をもとに分析したものである。
なぜメディア利用が減るのか
予測によれば、メディア利用が減少する背景には複数の要因がある。
まず、特に米国のようなデジタルデバイスへのアクセスが容易な先進国において、メディア消費はすでにピークに達している可能性が高い。また、奇数年は偶数年に比べてイベントが少なく、視聴数が下がる傾向がある。これは主に、スポーツ大会や選挙といった大規模イベントが偶数年に集中するためである。
「マーケティング担当者にとって重要なのは、従来型メディアの利用が減少しているとはいえ、それでもインフルエンサーマーケティングやコンテンツマーケティングなど、現在人気のある一部のデジタルメディアよりも大規模なオーディエンスを持つという事実である」とキヴィヤルブ氏は語る。
2024年、消費者がメディアに費やした時間は1日平均8.17時間で、2019年の7.36時間から増加した。一方で、全てのメディア利用が増加したわけではない。広告によって支えられているメディア(広告付きメディア)に費やされた時間の割合は、2019年の55.5%から2024年には52.7%へと減少している。
メディア利用時間の推移
2024年:1日あたり8.17時間
2019年:1日あたり7.36時間
世界全体では、2024年にデジタルメディアの利用が顕著に増加し、そのシェアは2023年の37.3%から39.7%に上昇した。上位20市場のうち11市場では、デジタルメディアが全メディア消費の過半数を占めている。
メディアチャネル別の利用傾向
チャネル別では、テレビが最も利用時間が長く、週あたり28.07時間に達した。この統計には、ライブ放送、デジタル配信、ストリーミング、OTT(オーバー・ザ・トップ)ビデオも含まれている。映画がストリーミングプラットフォームで直接公開されるケースが増えたことや、大作映画の公開が相次いだ影響で、「映画およびホームビデオ」カテゴリーが10.4%増と、最も急速な成長を遂げた。
一方で、2024年に最も成長率が高かったメディアチャネルは「モバイル動画」で、前年比16.7%の増加となった。
なお、新しい技術が必ずしも消費者の利用を増やすとは限らない。調査によれば、紙の書籍は全ての年齢層で依然として人気があり、人工知能(AI)やメタバースも、これまでの技術革新ほどの影響を与えていない。新技術が話題を集めても、消費者が時間を費やす対象とは限らないのが現状である。
「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)ではここ数年、スマートフォンが登場した2000年代から2010年代初頭のように、メディア消費を大きく押し上げるような革新的技術は発表されていない。だからこそ、メディア消費パターンはすでにピークに達しているのだ」とキヴィヤルブ氏は指摘する。
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