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新規顧客獲得と既存顧客のLTV向上、それぞれのCRO(コンバージョン率最適化)について小川卓の「学び直しWebサイト改善」

連載第4回の今回は、新規顧客の獲得と既存顧客のLTV(顧客生涯価値)、それぞれのCRO(コンバージョン率最適化)の考え方について解説します。

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 流入は多いのにCV(コンバージョン)につながっていない、あるいはCVはあるのにCPA(顧客獲得単価)が合わないなど、マーケターには悩みが尽きません。新規顧客獲得のためのCRO(コンバージョン率最適化)では、まず何を考えるべきなのでしょう。

新規顧客獲得におけるCROの考え方

 新規顧客獲得におけるCROを考える上で大切なのは、現在CVしているユーザーの情報を正しく把握することです。そのために以下4つの情報をCVしていないユーザーと比較して、どこに違いがあるのかを確認していきます。

  1. CVしているユーザーのデバイス
  2. CVしているユーザーの流入元
  3. CVしているユーザーは新規 or リピーター
  4. CVしているユーザーのランディングページやよく見ているページ

 例えば、特定のデバイス種別(例:モバイル)の方がCVR(コンバージョン率)が高いのであれば、モバイルからの集客を優先することが大切です。また、ソーシャルメディアからの流入の方がCVRが高い場合は、自社ソーシャルメディアでの告知強化や広告配信を考えても良いかもしれません。

 CVしているユーザーを分析して特徴を見い出しましょう。

分析例とポイント

 あるWebサイトの新規とリピートでのCVRをGA4で比較してみました。


(図版は著者作成、以下同)

 上記のデータから、リピーターのキーイベント率(CVR)が高いことがわかります。しかし、新規はリピーターに比べてセッション数が約10倍多いです。

 この場合、リピーターを増やすために再訪を促す集客施策が大切になります。リターゲティング広告やソーシャルメディア、メールでのコミュニケーションが有効かもしれません。

 もう1つ例を見てみましょう。こちらはCVした訪問のランディングページになります。

 セッションが多いページを見ていると、キーイベント率が大きく違うのが分かります。この場合、CROとして行うべきは、CVに貢献しているランディングページへの流入を増やしたり、Webサイト内の導線を見直してキーイベント率が高いページに誘導したりすることになります。

既存顧客のLTV向上のためのCRO

 一般的に多くのWebサイトでは、初回購入より2回目の購入の方がハードルが低くCVRが高くなり、コストを抑えられる傾向があります。リピート購入する確率は、初回購入するユーザーの9倍も高くなるという調査結果もあります(外部リンク/英語)。既に個人情報を入力しているので2回目からの手間が省略されることだったり、一度購入した商品やサービスが良いものであれば、その経験から信頼をすでに獲得できているためでしょう。

 にもかかわらず実際には初回購入の後で次の購入がなかったり、一定期間何もアクションがないユーザーが増えていると悩む人は少なくありません。

 初回購入、2回目購入、購入単価、購入点数、定期購入など、LTVに関わる要素はさまざまですが、多くのWebサイトでは、LTVを考慮した分析が行われていません。ぜひ分析と改善を行っていきましょう。

LTV分析の2つの方法

 LTVを分析する方法は主に2つあります。

 1つは、どのようなきっかけで訪問して購入したユーザーのLTVが高いのかを確認することです。そこから、改善するべき集客方法や対象ページを見つけていきます。

 複数回訪れて吟味してから購入したのか、広告の初回クーポンなどでお得だったから購入したのか、初回購入のきっかけによって、その後のユーザーの行動は大きく変わります。そのため、ユーザー獲得のきっかけや初回購入を軸にデータを見ることが大切になります。

 もう1つは、複数回あるいは一定金額以上購入しているユーザーの行動を分析することです。複数回購入するユーザーは、Webサイトでどのようなコンテンツや機能を利用しているのか。また、購入している商品に傾向はあるのか。LTVが高いユーザーの行動への理解を深めます。

 それぞれの分析例とポイントを見てみましょう。

LTV分析例とポイント

 GA4を利用すると、初回流入元別のLTVを確認することができます。

 上記はユーザーの初回流入メディアごとの数値を探索レポートで出したものです。「LTV:平均」は、該当流入元から1ユーザー訪問した時の期待売り上げとなります。「LTV:合計」は、集計期間での該当流入元からの実際の売り上げです。

 これらを確認すると、流入元によっててLTVに差があることが分かります。このWebサイトの場合は「none」を除くと「app」からの送客が大切なのが判明しました。そうであれば、アプリからWebサイトへの誘導強化を考えてみてもよいでしょう。

 複数回あるいは一定金額以上購入しているユーザーの動きを見るには、GA4のセグメント機能を利用します。以下のレポートでは、1回だけ購入したユーザー、2回以上購入したユーザーのセグメントを作成し、閲覧ページを表示しています。

 2回以上購入しているユーザーが見ているページを降順に並べてみると、1回購入のユーザーとは順位が一致しないことが分かりました。1回購入のユーザーはあまり見ていないけど、2回以上購入しているユーザーが見ているページがあれば、それらのページを見てもらうことが大切なのかもしれません。

 もちろんページの種類によっては、そこに誘導する意味がない場合もあるかもしれません(例:購入導線上にあるページ)。コンテンツや機能などのページであれば閲覧や利用を促しても良いかもしれません。


 新規・既存いずれにしても、まずは対象となるゴールを達成しているユーザーとそうでないユーザーの差を正しく確認することが大切です。

 次回は、Webサイト分析のプロセスに焦点を当てて解説していきます。

執筆者紹介

小川卓

小川卓さん

おがわ・たく UNCOVER TRUTH CAO(Chief Analytics Officer)。Webアナリストとしてマイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務。解析ツールの導入・運用・教育、ゴール&KPI設計、施策の実施と評価、PDCAをまわすための取り組みなどを担当。全国各地で講演を毎年40回以上行っている。

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