広報の学術団体である日本広報学会は、設立30周年記念事業の一環として上場企業経営者を対象に「『広報の定義』に関する意識調査」を実施した。
日本広報学会が2023年に発表した「広報」の最新の定義は、以下の通りだ。
組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。
広報への「期待」と「現実」とのギャップ
調査の結果、経営者の95.2%が広報を「経営機能」と定義することに賛同し、半数以上(55.3%)の企業が、自社の広報が経営機能を「発揮している」と回答した。しかし、広報の個別役割に関する設問では、期待と現実の間には約30ポイント(項目平均33.8ポイント)のギャップが存在していることも明らかになった。
広報責任者に求められる知見としては、「広報の専門的知見」よりも「会社や業界の知見」や「世の中の動きに対する知見」が優先される傾向が見られた。ただし、以下のように、業種の違いも見られた。
- B2C企業(食料品、小売業など)では広報の専門知識を重視する傾向が強い。
- B2B企業では広報の専門知識の優先度よりも業界理解/社会動向把握などを重視する傾向が強い。
広報専任部署があり、広報責任者が役員層である企業では、広報の経営機能としての発揮度が高く(77.2%)、期待と現実のギャップが小さい(15.2ポイント)ことが判明した。一方、広報専任部署が存在していない企業では広報機能の発揮度は19.3%にとどまり、期待と現実とのギャップは59.6ポイントと広がった。非役員層が広報責任者を務める場合や、経営会議体への参加機会が限られる場合などでは広報が期待される役割(「経営機能としての広報」の役割)を十分に果たせない可能性がある。
日本広報学会理事長の柴山慎一氏は「日本広報学会が策定した『広報の定義』が、95%を超える上場企業経営者に賛同して頂けたことは、広報の本質が的確に認識して頂けている証になったものと受け止めています。一方で、実務の現実が経営者の期待に応えきれていないという事実が確認できたことは、今後の実務と研究における大きな問題提起になったものと認識しています。今後さらなる議論を深めていく所存です」とコメントしている。
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