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「AI専任部門は不要」 コカ・コーラが生成AIを真っ先に使ってみて学んだことMarketing Dive

飲料業界の巨人は話題の技術をどのように活用してきたのか。The Coca-Cola Companyの生成AI部門責任者であるプラティク・タカール氏が語った。

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Marketing Dive

 2025年のマーケターにとって生成AIは依然として最重要課題の一つである。彼らは、この技術が今後どのように進化し、組織内のさまざまな業務にどのような影響を与えるのかを見極めようとしている。

 ブランドマーケティングの分野ではThe Coca-Cola Company(以下、Coca-Cola)が先陣を切って生成AI活用に取り組んできた。OpenAIが2022年末にChatGPTを発表して以来、生成AIは急激に注目を集め、多額の投資が行われてきた。しかし、Coca-Colaの取り組みは実はそれ以前から始まっており、同社はChatGPTの登場前から基盤を築いていた。この先行的なアプローチにより、同社は生成AIの実験を積極的に進めることができた。

 これらの試みの成果は、マーケティング業界の視点から見ると賛否が分かれるものとなっている。「Create Real Magic」プラットフォームの成功もあれば、昨年のクリスマスキャンペーンのように議論を呼んだものもある。その全ての取り組みを統括してきたのが、Coca-Colaのグローバル・バイスプレジデント兼生成AI部門責任者であるプラティク・タカール氏である。

実はコカ・コーラにAI専用の部署は存在しない

 以下のインタビューはMarketing Diveが主催したバーチャルイベントでの対話から抜粋し、分かりやすく編集したものである。イベント全編のリプレイはこちらから視聴登録が可能だ(外部リンク/英語)。


――Coca-Colaは生成AI分野においていち早く取り組みを始め、ここ数年のリーダー的存在となってきいます。何がきっかけだったのでしょうか。

タカ―ル ChatGPTが登場する以前、つまり生成AIが話題になる前から、私たちはすでにこの技術に取り組んでいました。最初の試みの一つが「Masterpiece」というキャンペーンです。その過程で、ロンドンに拠点を置くStability AI(テキストから動画を生成するAIモデル「Stable Diffusion」の開発元)と連携し、生成AIの重要性や実用性を理解することができました。特に、厳密なスケジュールの下で特定のプロジェクトに取り組む際、生成AIがもたらす精度の高さは非常に有益でした。

 こうした経験を踏まえ、私たちは2022年末に「生成AIクリエイティブインキュベーター」を立ち上げました。その直後にChatGPTがリリースされ、一気に生成AIへの注目が高まったのです。コンサルティングパートナーであるBain & CompanyがOpenAIとの協業を提案し、私たちは真っ先に「ぜひ参加したい」と手を挙げました。

 この提携を発表したのは2年前のことです。当時はAIや生成AI、そしてOpenAIに対して懐疑的な声も多くありました。OpenAIは当時それほど有名な企業ではありませんでしたが、私たちはこの技術の可能性を信じていたし、大きな革新をもたらすと確信していました。そこで、法務、広報、コミュニケーション、技術担当者を含む6人のチームを編成し、"サンドボックス"を作りました。

 私たちは、OpenAIの画像生成ツール「DALL-E」とGPTを組み合わせ、「Create Real Magic」というプロジェクトを立ち上げました。その結果、非常にうまくいきました。

――そのチームはどのように成長し、Coca-Cola内のどの部門に属しているのでしょうか。

タカ―ル AI専用の部署は存在しません。グローバルで見ても、チームの正式なメンバーは私と、社内ガバナンスを担当する同僚の2人だけです。私は主に、消費者向けのアイデアや体験開発にフォーカスしています。

 その他のメンバーは世界各地に分散しており、異なる部門や職種に属しています。ただし、彼らは生成AIの早期導入者であり、この分野に情熱を持つメンバーでもあります。彼らは私がリードする特定のプロジェクトに関わっており、非常に密接に連携しています。日々の業務時間の40〜50%をこの活動に割き、プロジェクトへ長期的に関与することになっています。

 このアプローチは、メンバー個人のキャリアやスキルの向上につながるだけでなく、会社全体のエコシステムや能力強化にも寄与しています。専用の部署を設けるよりも、組織全体で生成AIを活用できる体制を築くことが重要です。理想的な未来を考えると、私のようなポジション自体が不要になるのがベストでしょう。インターネットやモバイルが普及した現在、専任のディレクターやVPが不要になったのと同じように、生成AIもいずれは当たり前のものになるはずです。

(続く)

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