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ヘリから飛び降り、ガラスを破る……アカデミー賞広告主5社が、ド迫力アクションCMを競作した狙いMarketing Dive

2025年のアカデミー賞では前代未聞の共同広告キャンペーンが実現。Carnival Cruise Line、 Kiehl’s、L’Oreal Paris、Mntn、そしてSamsungの5社が75人以上のスタントパフォーマーを起用し、合計6本のド派手なアクションCMを放映した。

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 第97回アカデミー賞授賞式が開催された2025年3月2日(米国時間)、5つの広告主が団結し、ハリウッドのスタントパフォーマーに敬意を表する広告キャンペーンを展開した。同映画賞の歴史において、これほど多くのブランドが協力した取り組みは初めてのことだ。

 このキャンペーンはスタントワークに焦点を当てており、75人以上のプロのスタントパフォーマーが出演。ガラスを突き破る、ヘリコプターから飛び降りる、緻密に演出された戦闘シーンを演じるなど、迫力あるアクションを披露した。スタントのベテランであり監督でもあるクリス・デニソンが、このキャンペーンの演出を手掛けた。

【映像あり】ヘリから飛び降り、ガラスを破る……ド迫力アクションCM


アカデミー賞97年の歴史上最大のマルチブランド広告では、さまざまなスタントパフォーマーが披露された(画像はDisneyのプレスリリースより)

 このキャンペーンは、スタントワークを正式な賞のカテゴリとして認めるべきだという声の高まりを反映したものとなっている。また、近年ライブイベントにおいて高いコンセプト性を持つ広告が重要な役割を果たしていることを示している。こうしたイベントは、リアルタイム視聴型番組の最後の砦の一つとも言われている。

 キャンペーンの開発に関与したのはDisneyの広告部門であり、授賞式の放送を担当したABCはDisney傘下のネットワークだ。このコラボレーションには、十分に評価されることの少ないスタントパフォーマーの功績を称えるという目的に加え、最近壊滅的な山火事に見舞われたロサンゼルスの復興を支援するという意義も込められている。

 カジュアルクラスのクルーズを提供するCarnival Cruise Line、美容ブランドのL’Oreal ParisとKiehl’s、アドテク企業のMNTNは、それぞれ1本ずつ、緻密に演出されたスタントシーンを描くCMを放映。一方、Samsungは新型「Galaxy」スマートフォンのプロモーションとして2本のCMを放送した。これらの広告は、ロサンゼルスを拠点とする2つの制作会社に所属する150人以上のスタッフによって制作され、スタントパフォーマーはカメラの前だけでなく、制作スタッフとしても重要な役割を果たした。音響デザインには音楽スタジオのMr. Bronx Audio Postが協力した。

 L’Oreal Parisがアカデミー賞へ出稿するのは2018年以来のことだ。また、同ブランド傘下で173年の歴史を持つKiehl’sにとっては、全国放送のテレビCMを初めて放映する節目の出来事となった。さらに、このタイミングはMNTNの新規株式公開(IPO)申請とも重なっていた。

 これらの広告は特定の映画と直接的な関連はないものの、いくつかの演出は明らかに映画作品を彷彿とさせる。SamsungのCMでは、『ジョン・ウィック』風のスーツ姿のヒーローが、敵と戦いながらスマートフォンの通知を確認するシーンが描かれている。CarnivalのCMでは『ミッション・インポッシブル』を思わせる大胆なアクションが展開され、スタントパフォーマーがヘリコプターから飛び降り、カーニバルクルーズの船上プールに正確に着水する場面が登場する。出演者にはスティーブ・ブラウン、サマンサ・ウィン、ハンナ・ベッツ、ゲイリー・ハイムズらが名を連ねている。

 Disney Advertingはここ数年でアカデミー賞の広告戦略を刷新しており、番組内統合を強化するなどの取り組みを行ってきた。ABCが放送した今回のアカデミー賞授賞式も高い注目を集め、広告枠は完売した。しかし、Nielsenのデータによると、視聴者数は前年より7%減少し、1810万人となった。また、Huluでのストリーミング配信では技術的な問題が発生し、視聴に支障をきたす場面もあった。

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