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どんな企業にも「縦型」「多言語」の動画コンテンツが必要な理由オフショアカンパニー野呂健太氏に聞く

マーケティングを進化させる鍵になるAI。具体的にはどのような形でツールに実装されているのか。開発支援のエキスパートに話を聞いた。

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 大手PR会社ベクトルがシステム開発の領域にも力を入れている。2024年3月に設立した子会社のオフショアカンパニーは国内外に1000人以上のエンジニアを擁し、開発支援やデジタルコンサルティング、マーケティング基盤構築などを行っている。また、生成AI領域での強みを生かして独自のSaaSを開発し、企業向けに提供している。同社代表取締役でベクトルのグループCTOを兼務する野呂健太氏に話を聞いた。

AIで動画コンテンツ内製化をレベルアップ なぜ重要?


オフショアカンパニー代表取締役の野呂健太氏

 野呂氏はNTTドコモで「dポイント」の立ち上げに関わり、損害保険ジャパンで「LINEによる保険金請求サービス」や「SOMPO AI修理見積サービス」など数々のデジタルサービスを生みだした経歴を持つ。その後、オプトデジタル代表取締役を経て現職に就任し、ベクトルのグループCTOも兼務している。

 「ベクトルを単なるPR会社ではなくてテック企業にしていきたい」と話す野呂氏はオフショアカンパニーの現在の主力サービスである「AI動画翻訳くん」と「AI縦型動画」について説明した。

 前者は日本語の動画の音声を英語や中国語など50カ国以上の言語に自動翻訳するサービスだ。動画内の話者の声の特徴を保持したまま、独自技術で高精度な翻訳を実現し、多言語コンテンツを簡単に生成できる。

「AI動画翻訳くん」による翻訳サンプル(中国語)

  後者は横型に表示される通常の動画をスマートフォン用の縦型動画に変換するサービスだ。動画の中で誰が話しているか、誰が今そのシーンの中でメインの人かといったポイントを抽出して最適な切り取り位置を自動生成し、画角も調整してくれる。1分程度の動画であれば15分程度で生成できるという。


「AI縦型動画」

 ベクトルは近年、「ベンチャーTV」「JOBTV」「クリニックTV」などの動画型プラットフォーム事業を拡大している。PRのノウハウを生かし、動画を使って情報を広める活動を支援してきたわけだが、企業が動画を使ったコミュニケーションを推進する上では、内製化が欠かせない。そこで、非専門家でも簡単に使えるセルフサービス型のプロダクト開発に至った。

 多言語化や縦型動画というと、コンテンツに潤沢な予算を掛けられる大企業やコンテンツそのものを売りにするエンターテインメント企業でもなければあまり縁がなさそうにも思えるが、実際にはそうではない。

 コロナ禍が明けてインバウンド需要を狙う企業、人口減で国内市場が縮小する中で海外に新たな販路を拡大する企業にとって。多言語化は避けて通れない。加えて、東証プライム市場で情報開示が英文開示が義務化されるなどの事情もある。大阪のある病院では、手術の説明動画を英語、中国語、ベトナム語で用意し、外国人患者への案内を円滑化させている。

 「医療用語のデータベースなど、カスタマイズもできます。日本語はとても高度な言語で、ニュアンスだとかトーンで、同じ言い回しでも違う意味に取られることがあり、非常に翻訳が難しいですが、独自のエンジンで翻訳精度も95%超と、世界の中でも最高基準だと自負しています」(野呂氏)

 縦型動画も優先度の高い課題だ。TikTokやInstagramリールはSNSの主流として利用が定着している。

 「動画コンテンツはどんな企業にとっても人ごとではありません。もうテレビCMだけでは届かない層が一定数出てきている中で、そうした人たちに縦型動画を見せていくことは今後必須にはなっていくと思います。変換処理は1分当たり200円で提供しています。横型の動画を1つ撮っておけば、いろいろなパターンの縦型動画を作ってSNSで拡散させるために使えるので、ユーチューバーにも興味を持っていただいてます」と野呂氏は話す。

 今後は縦型動画を使ったA/Bテスト機能の実装を検討している。また、テストを通じて知見を蓄積し、「バズる動画」を再現性を持って生みだせる仕組みを作って行きたい考えだ。

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