ノンアルクラフトビールが急成長! 米新興ブランドのCMOはなぜ「大手の市場参入を歓迎」するのか?:Marketing Dive
Athletic BrewingでCMOを務めるアンドリュー・カッツ氏は、大手企業がノンアルコールビールの分野に参入する中でブランド戦略の一環として取り組んでいる数百万ドル規模の新たなキャンペーンについて語った。
年が明けると、フィットネスチェーンやマッチングアプリ、健康食品などのマーケターによる「新年、新しい自分」というテーマに基づくキャンペーンが多数展開される。飲料業界でも、1月の間アルコールを控えるチャレンジ「Dry January(ドライジャニュアリー)」が10年以上にわたり注目を集めている。この動きにはアルコール飲料、ノンアルコール飲料を問わず多くのブランドが参加してきた。
「新年の禁酒の誓い」をもっと楽しくするために
2025年、ノンアルコールビールメーカーのAthletic Brewingは「Athletic January(アスレチックジャニュアリー)」というキャンペーンを展開し、「ドライ(禁酒)ではなく、楽しむ1月」を提案している。同ブランドが引用する調査結果によれば、米国人の消費者の約3分の2(64%)は飲酒量を控える傾向にあり、3分の1以上(36%)が1月にアルコール摂取を減らす、または完全に控える計画を立てていたという。
Athletic BrewingのCMOを務めるアンドリュー・カッツ氏は「消費者の中でも若い世代、特にZ世代やミレニアル世代は、こうした活動に積極的に参加する傾向が見られます。私たちが目指しているのは、さもなければ憂鬱な年の始まりになるであろうこの時期に、少しでも楽しさと喜びをもたらすことです」と話す。
「Athletic January」は2024年の「Ask for Athletic(アスレティックを頼もう)」に続くキャンペーンで、15秒と30秒のCMを中心に、バーテンダーやウェイター、小売業者がAthleticをノンアルコールビールの当然の選択として紹介する内容となっている。数百万ドル規模のメディアプランには、テレビ広告、主要市場での屋外広告、ストリーミングオーディオやポッドキャスト広告、デジタルメディア、インフルエンサーによるレコメンデーションなどが含まれ、ブランドの認知度向上のためフルファネルアプローチを採用している。
ノンアルコールビールにまだ残る偏見と戦うため、Athleticは「Liquid to Lips(液体を口へ。一度飲んでみればわかるという意味)」戦略に注力している、年間約100万回の試飲を行い、同社のさまざまな製品が従来のノンアルコールビールよりも伝統的なビールにずっと近いことを実証しているのだ。今回の新キャンペーンでも、北米と英国の複数のコミュニティーイベントや小売店での試飲を含む数百のアクティベーション(消費者体験イベント)を展開。また、「Ask For Athletic Week(アスレティックを頼もう週間)」という特別企画では、選定された店舗でリベート(返金)を実施し、リスクのない試飲体験を提供する。
「消費者が『良いノンアルコールビールってありますか?』と尋ねるのではなく、『アスレティックありますか?』と聞くようになるのが理想です。私たちの流通網と供給体制が拡大したことで、店頭や飲食店でアスレティックと出合う可能性が非常に高まっています」とカッツ氏は語った。
Netflixでリラックス
Athletic Brewingは、その急成長を新たなコラボレーションでさらに加速させている。同社が提供した詳細によると、2017年の設立からほんの数年で米国のビール醸造所トップ20に成長し、現在ではノンアルコールビール部門で約5分の1の市場シェアを占めている。急成長の背景には、ノンアル/微アル飲料への消費者意識の変化や、トレンドを取り入れたマーケティング戦略がある。
Athletic Brewingは11月、Netflixとの2度目の限定コラボとして、バラク・オバマ元大統領がナレーションを務めるドキュメンタリーシリーズ「地球の海: その神秘に満ちた世界」にインスピレーションを得た「Marine Odyssey IPA」を発売した。これはヘイジーIPAで、同ブランドの「Two For The Trails」環境助成金プログラムと連動している。売り上げの2%(年間最大200万ドル)がアウトドア環境改善のために寄付される仕組みだ。
Netflixとのパートナーシップは2023年に始まり、第1弾では同プラットフォームの人気ファンタジーシリーズ「ウィッチャー」にインスパイアされたラガービール「Geralt’s Gold」を発売している。
「今回のコラボレーションは、前回よりも商業的な側面を抑え、ブランドとしての社会貢献をより強調したものになっています」とカッツ氏は説明した。
インフルエンサーとの連携と多様なアプローチ
Athleticは、インフルエンサーやクリエイターとの連携にも力を入れている。そのパートナーシップはインバウンド(依頼される形)とアウトバウンド(自社から働きかける形)の両方で行われている。Athleticはカントリー歌手のウォーカー・ヘイズとコラボし、ホリデーシーズンに合わせてインフルエンサーのホルダーネスファミリーとコラボし、ホリデーシーズンに合わせた「Holly Hangover」というコメディスキットを制作した。
このようなアプローチは、従来ノンアルコールビールと結びつきが強い「アスリート」や「ウェルネス」だけに依存しない、多様な層へのリーチを狙った戦略だとカッツ氏は説明する。
「音楽、ライフスタイル、料理といった分野まで広げることで、ブランド設立初期とは異なる幅広いオーディエンスにアプローチしようとしています」とカッツ氏は述べた。
Athletic Brewing創業以降、ノンアルビールカテゴリーではCoronaやHeinekenなどの大手ブランドも参入した。さらに、2025年1月にはAB InBevが「Michelob ULTRA Zero」を発売した。Athleticは「大手」との競争を市場における自社の価値提案の証明とみなしている。
「彼らがカテゴリーの認知度を上げてくれるほど、私たちにもプラスになります。より多くの人がノンアルビールの棚に足を運び、Athleticを目にするようになります。そしてノンアルコール飲料が当たり前の選択肢として認知されるのです。私たちはソバー(しらふ/禁酒)コミュニティーに特化しているわけではありません。それぞれのやり方で楽しんでもらえるのが理想です」とカッツ氏は語った。
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