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世界のモバイルアプリ市場はこう変わる 2025年における5つの予測モバイルアプリトレンド予測2025【後編】

生成AIをはじめとする技術革新やプライバシー保護の潮流はモバイルアプリ市場に大きな変化をもたらそうとしています。2025年における5つの予測を紹介します。

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 2025年、世界のモバイルアプリ市場は大きな転換点を迎えようとしています。AIが私たちの想像を超える進化を遂げる一方で、新たなアプリストアの台頭や大手企業による戦略的買収が業界の構図を変えていくでしょう。さらに、データプライバシーを巡る新たな潮流が、マーケターに創造的な挑戦を突きつけています。

 激動の時代を勝ち抜く第一歩は、今起きようとしている変化を正しく捉えること。モバイルアプリ市場における5つの重要な予測を紹介します

予測1:AIと機械学習モデルが成熟する

 2025年、モバイルマーケティングにおけるAIと機械学習技術はより成熟し、洗練されたものとなります。2024年がこれらのモデルの可能性を示す年だったとすれば、2025年はその本格的なスケーリングの年となるでしょう。

 Adjust CEOのアンドレイ・カザコフが考えるに、開発者とマーケターはこれらのモデルをより高いレベルで信頼し、活用するようになり、さらに高い精度と投資収益率を達成できるようになります。各種ツールはすでに登場していますが、2025年はこれらが広く普及し、その結果が見えてくるようになるでしょう。

予測2:代替アプリストアが台頭する

 今後1年間で、従来の主要アプリストアに代わる新たなプラットフォームが急速に台頭し、市場の多様化が進むことが見込まれています。

 カザコフによれば、2024年はWebベースのストアの導入や欧州のデジタル市場法(DMA)への対応が進んだ1年でした。これらの取り組みにより、企業は従来のアプリストアを介さずにユーザーと直接つながる販路を獲得しました。

 従来のアプリストアを迂回することで、企業は収益構造を最適化し、ユーザーとの関係をより直接的に構築できるようになります。これは多くの企業にとって画期的な変化となるでしょう。

予測3:モバイルアプリ市場は既存のブランドを生かしつつ統合が進む

 2025年のモバイルアプリ市場は統合へと移行し、米国や欧州では合併や買収が重要な成長戦略となるとカザコフは予測します。

 米国に拠点を置く企業の成長が停滞する中、多くの企業が再成長フェーズに入るきっかけとすべく、買収を行っています。この傾向は欧州で特に顕著です。

 欧州では今、米国大手企業が現地に強固なユーザー層を持つ地域特化型のアプリを積極的に買収しています。しかし、買収されたアプリの側は自社の名前やブランドで事業を継続しています。そうすることで、大企業は新たな市場やデータにアクセスできるようになる一方、アプリ側は大企業のリソースの恩恵を受けながら、これまで築いてきた顧客基盤を維持することができます。

 1つのスーパーアプリが台頭して複数の地域を支配するということは起こらないでしょう。既存のブランドは独立したまま、グローバル資本の親会社がそれを所有する形が一般化すると考えられます。親会社はローカライズが難しい新市場で同じビジネス価値を持つアプリを買収することで成長に注力します。広範な市場における顧客行動を把握できるようになることは、生成AIのようなテクノロジーの活用を考える上でも有益です。

予測4:マーケターが成功を収めるには生成AIだけでは不十分

 クリエイティブにおける生成AIのメリットはモバイル体験の向上をはじめ、大きなものがあります。しかし、計測の課題への効果的な対応はできていません。

 プライバシー規制が強化される一方で、広告費用の正当化と投資利益率の最大化へのプレッシャーが高まっています。Adjust CTOのイェーゴル・ルコムスキーは2025年、パフォーマンス重視のマーケターは、キャンペーンの成果をリアルタイムに確認するために機械学習(ML)モデルをますます活用することになると述べています。

 代替のデータポイントを使用してユーザーエンゲージメントとコンバージョンに関するインサイトを共有するMLモデルを採用することで、企業はプライバシー規制に準拠した方法でユーザー行動を理解し、効果的な予測ができるようになります。

 2025年はこれらのモデルを実験し、テストし、改善していく年となります。これをうまく活用できるマーケターは、新しい計測基準を設定しつつ、アクションにつながる指標を得ることができます。

予測5:プライバシー規制が進む中、インクリメンタリティ計測の重要性が増す

 データプライバシーに関する規制はEUに限らず世界規模で強化されると考えられます。マーケターは世界のどこでモバイルアプリのユーザー獲得やリターゲティングを行っているかにかかわらず、近い将来、何らかの規制に直面することが確実だとルコムスキーは予測します。

 EUのDMAのような規制により、マーケターは地域ごとに異なる法的対応が求められ、ユーザーデータの収集、保存、共有方法において大きな影響を受けています。この複雑な規制環境に対応するため、今後1年間、複数の計測フレームワークを採用する傾向が強まるでしょう。これにより、地域ごとの規制に柔軟に対応しつつ、効果的なマーケティング戦略を立案することが可能になります。

 今こそ、予測型ソリューションとインクリメンタリティソリューションの可能性を探るときです。

 デバイス固有のデータ利用が制限される中でアトリビューション計測の課題を解決する上ではAIを活用したアプローチが不可欠です。また、AIを活用したツールで新しいチャネルとキャンペーンをテスト・分析し、オーガニック流入との差分(インクリメンタリティ)を正しく捉えることは、効率的かつ効果的にパフォーマンスを改善するために欠かせません。データ環境に左右されないインクリメンタリティは、プライバシー規制が進む現代でマーケティング戦略の新たな指針となるでしょう。

寄稿者紹介

佐々直紀

佐々氏

さっさ・なおき Adjust日本ゼネラルマネージャー。1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり、オンラインモールの「キュリオシティ」や「Yahoo!ショッピング」、ショッピングサーチ「ビカム」、リターゲティング・DMPの「Vizury」にてAE、AM、マーケティング業務を経験。2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入。2016年11月よりAdjustに参画。


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