カルビーが「Body Granola」拡販のためタクシー広告に目を付けた理由:タクシー広告はB2Bだけのものじゃない
B2B商材によく利用されるイメージの強いタクシー広告だが、実はB2Cでも成功事例は存在する。カルビー「Body Granola」のマーケティング担当者に話を聞いた。
一人一人の腸内環境に合ったグラノーラを食べて毎日の健康習慣をサポートすることをコンセプトとしたサブスクリプション型のサービス「Body Granola(ボディグラノーラ)」をご存じだろうか。カルビーは国内の消費市場が縮小していることを背景に、2023年に策定した成長戦略「change2025」において、4つの重点領域に取り組むことを定めている。
その一つとして狙うのが、元来の強みである食にセルフメディケーションや健康寿命といった消費者ニーズを掛け合わせた「食と健康」の領域だ。2023年4月に提供開始したBody Granolaはその一つと位置づけられている。
Body Granolaのプロモーションについて、主にタクシー広告を使った取り組みを中心に、カルビー グループ戦略統括本部 アグリ・食と健康事業推進本部 食と健康事業推進部 事業推進課の藤井麻季氏と田口夏菜氏に話を聞いた。
カルビーがタクシー広告を採用した3つの理由
Body Granolaのサービスはまず「腸内フローラ」の検査キットを9800円(税別、以下同)で購入し、検査を行うことからスタートする。腸内フローラとは、人間の腸内に存在するビフィズス菌や乳酸菌など多種多様な細菌の集合体のことで、腸壁にびっしりと張り付いた様子が花畑のように見えることから、そう呼ばれている。
腸内フローラは人により異なる。そこで、検査結果に基づいて、その人の腸内フローラの主要な菌が好んで食べる素材を配合したグラノーラを自分で選び、月額3500円(税・送料別)の定期便として届くようにした。
ターゲットは腸内環境に悩みがある層や健康づくりに強く興味を持っている30〜50代女性。ビジネスパーソンもサブターゲットの一つとして考えていた。
次世代を担う新規事業は期待が大きい一方で、既存事業とは異なる難しさがあるものだ。グラノーラの代名詞的存在でありカルビーの看板商品である「フルグラ」のことは知っていてもBody Granolaのことはよく知らない消費者もいる。
Body GranolaはECのみで販売していることもあり、マーケティングはWeb広告やインフルエンサー施策などが中心だった。一方で認知拡大のためテレビにも出稿しているが、ターゲットが明確なサービスなだけに、マス向け以外の効率的かつ効果的なアプローチも考えたいところだ。そこで行き着いたのがタクシー広告である。
タクシー広告を選んだのは、大きく3つの理由がある。1つ目は、テレビCMを見ている層よりもよりターゲットを絞ったアプローチができることだ。タクシー利用者は、ビジネスパーソンが利用することが多いと考えられる。
2つ目は、タクシーという閉じた空間で、詳しい商品訴求ができることだ。タクシー広告は固定された座席で動画が目に留まりやすい環境にある。Body Granolaは、最初に腸内フローラの検査を必要とすることや商品の意義、オンライン購入であることなど、多少の説明を必要とする。タクシー広告であれば、認知の獲得から一歩進んで製品を理解してもらい興味喚起までできると考えた。
3つ目は、ダイレクトにコンバージョンまでつなげられるメディアであること。タクシーに設置されているタブレットは、乗客が料金の支払いで操作する場合があることから、乗客の手が届く位置に設置されている。そのため、広告に二次元コードを掲載すれば、興味を持った乗客をそこから直接購入ページなどに誘導することも可能になる。
「Body GranolaはWebサイトから購入していただく必要があるので、認知だけでなく獲得まで効果的につなげられるような媒体を探していました。タクシー広告は獲得までの動線がつくりやすいのではないかという期待がありました」(田口氏)
乗車時間をフルに使って認知獲得から興味理解の促進まで実現
タクシー広告サービスは複数存在するが、今回カルビーが利用したのは、ニューステクノロジーが提供する「GROWTH」だ。まず乗車時にサイネージに静止画を表示する広告メニューの「RIDE VIEW」でグラノーラの広告であることを伝え、次に料金メーターが稼働すると動画が再生される「BUSINESS VIEW」でBody Granolaの概要を伝えるCM動画を流し、認知を獲得。さらに、ニューステクノロジーが情報番組として運用している「HEADLIGHT」とのタイアップ番組で、Body Granolaの利用メリットを詳しく伝え、内容理解を促進した。GROWTHのサービス構成であれば、他の広告やコンテンツが入らないため、ノイズを排してワンツーワンでターゲットの意識を向けやすくできるのも特徴だ。
「今回は、ニューステクノロジーさんに伴走していただきながら『HEADLIGHT』の部分を新しく制作しました。タクシーに乗車して、1分間ほどはBody Granolaの情報に触れている状態になるイメージです。通常であれば、メディアミックスで情報を届けていくところを、GROWTHであれば一度に伝えることができるわけです」(田口氏)
タクシー広告を含むOOHは一般的に効果測定が難しいが、GROWTHでは画面に掲載した二次元コードに仕込んだパラメータで直接流入を測ることもできる。実際、二次元コードからの遷移だけでなく、そこから検査キットの申し込みまで完了した例もあったということだ。
成果につながったポイントとは
今回の施策における広告の掲載時期は2024年4月29日から1週間、ちょうどゴールデンウイークの時期と重なった。この期間の受注数は約1.7倍、売り上げ全体の22%増に寄与し、購買層も広がった。
「休日はビジネス利用が減るのでインプレッションも少し下がるのですが、バナーをタップするといったアクション数は伸びやすい傾向にあるようです。街に繰り出したりする移動の途中で、お金を使うモチベーションも高いタイミングなので、おそらく平日とは視聴態度が違うのだろうと思います。連休中で、何か新しいことを始めたいというモチベーションがあった人もいたのかもしれません」(田口氏)
40代男性からの受注数が増え、会社経営層からの受注数が約3.5倍に増加するという意外な成果も得た。
「会社経営をしている男性で、タクシーを利用される方はもちろん多いだろうと思っていましたが、こんなにも購入していただいたことに驚きました。やはり金銭的なハードルが低い方は、自分の健康などへの投資もしやすいのだろうと思います。その仮説に照らし合わせると、会社経営層の購買が上がったのも納得です」(藤井氏)
今回は初めてタクシー広告を採用したこともあり、今後の戦略に生かす仮説をつくるという意図もあったが、もともとのターゲットであった30〜50代女性に加え、男性やビジネスパーソンの健康投資にも需要があることが検証できたのは大きな収穫だった。今後は、そうしたターゲットにも何らかの施策が打てないかを検討していくという。
「今回の施策を通して、商品を説明する場を作れるという切り口で媒体を探すことの大切さに気付きました。タクシー広告は、見てもいいかなという視聴態度と、商品説明のできる尺が両立できる、他にはない媒体。タクシー広告で良好な成果が得られることがわかったので、さらに施策をブラッシュアップしていきたいと考えています」(藤井氏)
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