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生成AIを業務で使わないマーケターはもはや3割以下 御社はどうする?HubSpot Japanがマーケター調査を実施

HubSpot Japanが日本で実施した調査によると、日本のマーケターの8割以上が従来のマーケティングのやり方を変えていく必要があると考えている。その理由と変革を阻む課題とは何か。

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 生成AIが目覚ましく進化する中で、従来通りのマーケティングプロセスで成果を出し続けることができるのか――。

 HubSpot Japanが日本のマーケティング組織で働くビジネスパーソン(B2B:423人、B2C:306人)を対象に実施した「日本のマーケティングに関する意識・実態調査」の結果によると、「企業が従来のマーケティングのやり方を続けているだけでは成果が出づらくなっている」という主張に対して「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の合計は82.6%となった。同様に「企業は従来のマーケティングのやり方を変えていかなければならない」という主張を肯定した人は86.3%だった。

慣れないツール使用にもマーケターは意外と前向きだけど……


マーケティング活動で成果を出すのが難しくなっている(画像提供:HubSpot Japan、以下同)

 具体的なマーケティング活動の領域別に、1年前と比較して成果が出づらくなったとする回答が最も多かったのは「DM(メールではなく、物理存在する葉書や手紙)」が74.7%。以下、「街頭広告(タクシー広告や電車車両内広告含む)」が72.2%、「テレビCM」が70.1%と、オフライン施策が上位を占めた。一方でYouTubeなどの動画専門プラットフォームを活用したマーケティングやSNS運用(広告以外)については、「成果が出やすくなった」または「どちらかというと成果が出やすくなった」と考える人が多数派となった。


領域別に見たマーケティング活動の難易度

 業務支援ツールとしての生成AIの評価について「1年前(2023年11月)と比較したとき、生成AIはマーケティング業務の役に立つようになってきた」という主張に対する考えを聞いたところ、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人の合計は全体の72.3%となり、業務支援ツールとしての生成AIの評価はこの1年で高まっていることが分かった。


業務支援ツールとしてのに生成AIの評価

 生成AIを業務に利用する頻度は「週1回以上」が全体の32.7%。一方で、業務において生成AIを全く利用していない人は全体の28.9%と、3割を切った。利用頻度の傾向はB2BとB2Cで大きな差がないことも分かった。

 2023年8月にHubSpotが実施した別のオンライン調査では「生成AIを業務に利用したことがない」と答えたマーケターは78.3%だった。設問の表現と回答者の内訳が異なるため単純比較はできないものの、マーケティング業務における生成AIの利用は急速に進んでいると考えられる。


業務における生成AIの利用頻度

 業務において生成AIを利用していると回答した518人に具体的に使用しているツールを複数回答で聞いたところ、トップ3は「ChatGPT」(73.9%)、「Copilot」(28.4%)、「Gemini」(15.4%)だった。ChatGPTについては利用者の34.4%が有料版を使っていると回答した。利用ツールについてもB2B企業のマーケターとB2C企業のマーケターの間に大きな差はなかった。


業務に利用している生成AIツール

 「マーケティング業務の中でストレスを感じていること」を複数回答の選択式で聞いたところ、1位は「情報収集の時間が足りないこと」(28.5%)、2位は「単純作業に時間が取られること」(27.7%)、3位は「欲しいレポートをすぐ作成できないこと(数字に加工が必要など)」(25.1%)という結果になった。同時にこれらの3領域について「生成AIを使えば解決できるかもしれない」と答えた人はそれぞれ66.8%、71.3%、67.8%となり、生成AIへの期待が高いこともうかがえる。

 勤め先で行っている業務の中で効率化したいものを複数回答形式で尋ねたところ、1位は「データ分析」(44.4%)、2位は「プレゼンテーション資料作成」(36.8%)、3位は「レポート作成」(36.4%)だった。各選択肢に対して「効率化できる生成AIツールがあり、会社としても利用を禁止されていないとしたら積極的に利用したいかどうか」を聞いたところ、積極的に利用してみたいと答えた人は多い順に「データ分析(53.5%)」「レポート作成(52.3%)」「プレゼンテーション資料作成(51.2%)」となり、効率化のニーズとほぼ対応する形となった。逆に、それ以外の領域においては「興味はあるが難しそう」もしくは「利用したいとは思わない」と答えた人が過半数となった。


生成AIを活用したマーケティング業務の効率化意向

 「業務の役に立つと分かっていれば、慣れないツールの使用にもチャレンジしてみようと思う」という主張に対して「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人は83.4%で、多くのマーケターは新しいテクノロジーへ積極的に向き合おうとしていることが分かった。「日本は先進的なテクノロジー導入の波に遅れがちだと思う」と考えている人は79%で、「生成AIについては、今から国と企業が努力を続ければうまく活用して成果を出していけると思う」と考えている人は全体の79.5%。いずれの結果からも生成AIの業務への活用に肯定的な傾向がうかがえる。


新しいテクノロジーへの向き合い方

 一方で、全ての領域において生成AI利用に前向きであるとは限らないという結果も出ていることから、業務効率化できる生成AIのツールがあり会社からも利用を禁止されていないとしても「興味はあるが、難しそう」「利用したいとは思わない」と答えた人にその理由を複数回答で尋ねた。その結果、1位は「具体的な事例や実績を見ないと効果を信じられないから」(24.5%)、2位は「生成AIに対する知識がないから」(23.8%)、3位は「新しいツールを使いこなせる自信がないから」(22.1%)となった。生成AIへの期待は大きいものの、自分ごととなったときに「新しいものに対する懸念」や「自信のなさ」が大きなハードルになっていると考えられる。


生成AIの積極活用をためらう背景

 今回の調査結果に関する記者向けの説明会でHubSpot Japanの土井早春氏は、同社のマーケティングチームにおける生成AIの活用事例として、ブログ記事作成、ランディングページデザイン、広告コピー作成の壁打ちなどを挙げた。HubSpotはOpenAIのGPTモデルをベースとしたAIアシスタント「Breeze Copilot」を提供している他、各製品に生成AIを組み込んでいる。例えば、CMS(コンテンツ管理システム)製品の「Content Hub」では、数回のクリックでWebサイトの素案が提示されるなど、生成AIが業務に密着した形で活用されている。土井氏は、「既存のツールに生成AIが組み込まれることで、マーケターが生成AIの効果をより実感しやすくなっている」と述べ、生成AIを効果的に活用するためには、既存の業務フローにシームレスに組み込めるような環境が重要であると強調した。

 また、土井氏はこれからのマーケターのテクノロジーへの向き合い方として「新しいツールは豊富な成功事例を基にした意思決定ができないのも現実。耳慣れないものだからというだけで検討を停止してしまうのではなく、具体的に見込まれる成果に対してどこまでのリスクなら許容できかと、一歩踏み込んだ検証をすることで競争優位性を高めていけるのではないかと思っています」と述べた。

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